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2015年1月19日 (月)

ウクライナ:欧州最大の原発密集地域、崩壊の危機/ルモンド紙(12月5日)

停戦協定にも関わらず、ウクライナ東部での戦闘はこの1月に入っても続いている。15基の原発を抱えるウクライナにとって、ロシアとの戦闘は原発崩壊の危機を倍増させるものだ。

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事故の公式発表は遅れて実施された。ウクライナのアルセニー・ヤツェニュク首相は12月3日、11月28日(金)に起きた欧州最大規模の原子力発電所ザポリジア原発(ウクライナ南東部、原子炉6基を設置)における電気系統のショート事故について「危険は全く無い」と述べた。

1986年4月に起きた世界最大の原発事故、チェルノブイリ原発事故で4基の原子炉が永久停止となった後も、ウクライナ国内では4つの原子力施設/15基の原発が稼働中であり、国内の約半分の電力をまかなっている。

ロシアと戦火を交えるウクライナでは、現在原子力施設が二つの深刻な危機に見舞われている。ちょっとした電気供給路の切断であっても、原子炉の冷却装置は停止され福島で起きたのと同じ深刻な原発事故につながりかねない。戦闘はこうした危険を大きく増加させた。それだけではない。老朽化したこれらの原発はロシア製であり、スペアパーツはロシアから輸入されていた。ロシアとの関係が悪化した現在、消耗したスペアパーツの更新は困難になっている。

ウクライナで原発事故が起きれば、チェルノブイリ事故の時同様、ヨーロッパ全体が汚染にさらされかねない。戦争状態にあるウクライナの原発は今危機を迎えている。

(抜粋、一部編集)

●元の記事:「ウクライナにおける原発安全性に対する不安」/ルモンド紙(12月5日)
(« Inquiétudes sur la sûreté nucléaire en Ukraine », Le Monde, 2014.12.05)

注)上記の訳は紙面に発表された当初版に基づいています。ウエブサイト上の記事はアップデートされたものであり若干異なりますので御了承ください。

http://www.lemonde.fr/planete/article/2014/12/03/l-ukraine-une-puissance-nucleaire-a-haut-risque_4533592_3244.html

2015年1月 8日 (木)

サイエンス誌が主張する「癌は偶然の産物」という嘘: 発がん性物質に汚染された環境で働く労働者が癌にかかる確率は、会社幹部の10倍/ルモンド紙(1月7日)

新年あけましておめでとうございます。
マイペースですが、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

1月7日にパリで起きた新聞社シャルリー・エブド社本部への襲撃事件につきましては、日々のニュースに目を通す市民の一人として一日も早い解決を望んでおります。時に読者を驚かせ笑わせ、権力者を怒らせる風刺漫画を発信の柱とする同社は、政治家、宗教指導者にかかわらず権威者への皮肉という武器で自由な意見表明に貢献してきました(反イスラム教ではなく、宗教的な中立を掲げています)。昨夜フランス全土で「表現の自由を守れ」「民主主義を守れ」との声を上げて街頭に繰り出した10万人以上の市民とともに、一部の犯罪者をイスラム教徒と同一視するという誤りを犯すことなく、言論を力で封じる暴力への抗議の声に賛意を示したいと思います。

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著名な科学雑誌「サイエンス」誌が現在進めている「癌になるのは偶然」という研究に、原発、石綿、化学物質、殺虫剤、石油などの癌を引き起こす有害物質を放出する産業の関係者は微笑んでいることだろう。この「科学的発見」によって、自らの事業のせいで人々が癌になる危険性についての論争に幕を下ろすことができるのだから。社会科学高等研究院のアニー・テボード・モニ教授(社会学、保健医療)は権威ある科学雑誌に掲載された論文がはらむ詭弁を指摘する。フランスでは大多数の人が発癌性物質にさらされることによって癌になっている。そして、労働者は上級幹部の10倍の高確率で癌にかかるという現実がある。

事の初めは、1月2日にサイエンス誌に掲載されたクリスチャン・トマセッティとベール・ボジェルスタインによる論文である。自ら変化する幹細胞に関する研究で、癌になるのは偶然の確率に寄るもの、と主張している。しかし劣悪な環境で働き癌になった労働者は、癌になる確率がずっと低いホワイトカラーのエクゼキュティブに比べて偶然にも癌になりやすい細胞を持っていたのだろうか?現実には、人々の生活や労働を取り巻く社会環境や汚染についても考慮する必要がある。


●クリスチャン・トマセッティとベール・ボジェルスタインによる論文(英語です)
Christian Tomasetti & Bert Vogelstein
「Variation in cancer risk among tissues can be explained by the number of stem cell divisions」
http://www.sciencemag.org/content/347/6217/78


統計データの解釈に際しては、社会科学高等研究院のジョゼフ・クラッツマンが言うように、1950年から1990年の間に冷蔵庫を使う人が増えたからと行って、同じ時期に起きた発癌率の増加とは何の関係も無い。平行して数値が増えていたからと言って、二つの数値の間には何の因果関係も無い。冷蔵庫を使ったから癌になった、とは言えないのである。あなたはこの例を見て「馬鹿げている」「ひっかかる訳が無い」と笑うかもしれない。しかし、科学雑誌に載っている論文で同じ議論が行われると、いとも簡単に騙されてしまう。

サイエンス誌に掲載された記事も同様である。細胞が癌化するには、石綿や放射線、ディーゼル車の排ガス、殺虫剤などの発癌物質にさらされることが条件となるが、同誌はこの点に触れず発癌物質の役割を無視している。また、トマセッティ氏らの調査は民間企業からの助成金で実施されている。資金提供の筆頭に立つバージニア・DKルードビッヒ財団は石油を運ぶ大型タンカーの使用やアマゾン流域での原生林の伐採で利益を上げており、儲かりそうな癌の研究に関心を持つ一方、貧しい人を含めた全ての人のための公衆衛生には関連が無い研究に予算を費やしている。メディアが大きく取り上げる論文、著名誌に掲載される論文であっても、読者は十分な吟味が必要だ。

(抜粋、一部編集)

元の記事:「いいえ、癌は偶然の産物ではありません!」/ルモンド紙(1月7日)

« Non, le cancer n’est pas le fruit du hasard ! », Le Monde, 2015.01.07
http://www.lemonde.fr/idees/article/2015/01/07/non-le-cancer-n-est-pas-le-fruit-du-hasard_4550613_3232.html

2014年12月18日 (木)

日本における「原子力」という核心/ルモンド紙(12月15日)

日本では、福島原発事故から3年9ヶ月が経過した今も、電力政策の核心-発電費用をどうまかなうか、という問題-についての意見の対立が続いている。12月14日に行われた衆院議員総選挙は、日本の電力政策における課題に答えるものではなかった。電力政策が安倍首相の提唱する「アベノミクス」と呼ばれる経済政策の一部を占めているにもかかわらず、である。

安倍首相は今年4月11日、前政権が2012年に設定した「2030年代までに原発の利用をやめる」という目標を反故にする新たな電力政策を掲げた。原発をやめるという目標を国民の大多数が支持していたにもかかわらず、である。

安倍政権は原子力を「ベースロード電源」(安く電力を供給できる基本電力源)と見なしている。首相が推進する原発の再稼働は経団連、電力会社、および経済産業省に支持されている。そして鹿児島にある川内原発は2015年2月にも再稼働に踏み切る可能性がある。

自然エネルギーは現在日本の電力の10.7%を占めているが、2030年までに20%にまで増加すると見られている。2012年7月に制定された法律によって電力会社は太陽光及び風力発電により生産された電気を固定価格で買い取ることを義務づけられたが、日の目を見ない事業も多く発生している。

しかし2016年に電力市場の自由化が実施されれば、現在の日本国内における独占体制は大きく揺さぶられることになるだろう。そして原発の稼働を40年に制限する決定によって使用年限を過ぎた原発は早晩廃炉になることになる。既に2016年以降、7つの原発が廃炉となることが予定されている。それぞれの廃炉作業には900億円もの費用が見込まれている。

●元の記事:「日本:電力分野における原子力という核心」/ルモンド紙(12月15日)
« Japon : le nucléaire, au cœur des interrogations énergétiques », Le Monde, 2014.12.18
http://www.lemonde.fr/economie/article/2014/12/15/le-nucleaire-au-c-ur-des-interrogations-energetiques_4540691_3234.html

2014年12月13日 (土)

日本の衆院総選挙:経済政策の争点化で「改憲」・「再稼働」への議論を消し去ろうとする安倍政権/ルモンド紙(12月13日)

安倍政権は衆院総選挙の争点を経済政策に限定することで「憲法改正」、「原発の再稼働」、「集団自衛権」、「国家秘密保護法」といった国民の意見が分かれる重要課題から国民の目をそらそうとしている。安倍首相は今回の選挙を「アベノミクス」と呼ばれる自らの経済復興政策への信任投票のように装うことに成功した。「この道しかない」が同首相とその取り巻きのキャッチフレーズである。

不意の選挙に突かれ、野党は新たな政策案の提示に苦戦している。12月12日付の世論調査では、自民党が475議席のうち300議席を獲得し大勝する、との予想が示されている。実現すれば、10月に2名の閣僚が不祥事で相次いで辞任した問題や、11月以降の不景気への逆戻り(フィナンシャル・タイムズは「『不景気を取り戻す』」の見出しを掲げた)による支持率低下を回復できる可能性もある。

「再選されれば、安倍首相はアベノミクスのことは言わなくなると思われます。安倍首相は自分が関心を持つ集団自衛権や改憲に力を注ぐでしょう。」

上智大学の中野晃一教授(政治学)はこう分析する。

「『アベノミクス』で言われているような政策を実行に移すのには大変な労力を要します。また、関係者の利益が対立し、困難を伴うでしょう。」

テンプル大学のマイケル・クーセック教授も指摘する。

世論調査によれば、日本人の約半数が国家秘密保護法や集団自衛権に反対している。国家秘密保護法の成立により、世界報道の自由ランキングにおける日本の順位は昨年の世界180カ国中53位から59位に下降した。

産業界からの圧力により、安倍首相は原発の再稼働を望んでいる。日本はGDPの245%にものぼる借金を抱えているが、「中国への対抗」を理由に来年度の軍事費を大幅に増加させている。これらの政策転換は日本に大きな影響を及ぼすが、安倍政権は選挙での議論を避けている。

このように、今回の選挙の結果は日本社会に大きな変化をもたらすことが予想される。しかしマイケル・クーセック教授によれば、投票率が低い場合、有権者の5分の1の得票で政権を維持できる可能性すらある。ただし少数の有権者からの支持で再選された場合、「経済政策でのちょっとした問題や国民からの不人気で支持率が大きく下がることが予想されます。」

日本の政治は岐路に立っている。

(抜粋、一部編集)

●元の記事「日本の衆院総選挙:隠された争点」/ルモンド紙(12月13日)
(« Au Japon, les enjeux cachés des législatives », Le Monde, 2014.12.13) 
※紙面掲載版を参照しています。
http://www.lemonde.fr/asie-pacifique/article/2014/12/12/au-japon-les-enjeux-caches-des-legislatives_4539503_3216.html

2014年11月27日 (木)

原発周辺住民の甲状腺がん訴訟で裁判所が電力会社に賠償命令:釜山/11月6日(Wall Street Journal+ジュルナル・デナジー)

【御詫びと訂正】 賠償金額の記載に誤りがありましたので訂正します。申し訳ありませんでした。
(誤) 68万円 → (正)168万円
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韓国第二の都市、釜山の裁判所は10月17日、古里原発から7キロの距離に20年以上年居住していたゲウム・サン・パクさん(48歳、女性)が「原発からの放射線により甲状腺がんに罹患した」との訴えを裁判所に起こしたのに対し、同原発を運営・管理する韓国水力・原子力発電株式会社に約1万1千ユーロ(約168万円)の賠償金の支払いを命じた。

裁判官は「原子炉から発生した放射線と癌の因果関係は明白ではない」としつつも、「原告は原子炉から半径10キロ以内の地点に20年以上居住しており、長期にわたり放射線にさらされてきた」と指摘した。韓国水力・原子力発電株式会社は即時抗告を行った。

チョイ・ホーシク裁判官による今回の判決では、韓国で2012年に実施された疫学調査の結果が根拠となった。調査によれば、原発から5キロ以内の距離に住んでいる女性で甲状腺がんを発症した人の数は、原発から30キロ以内の距離で発症した女性の数に比べ2.5倍以上にのぼっていた。

(抜粋、一部編集)

●元の記事:「甲状腺がん患者の訴え:韓国の裁判所、原子力事業者に敗訴判決」/11月6日(Wall Street Journal+ジュルナル・デナジー)
http://journaldelenergie.com/nucleaire/une-malade-de-la-thyroide-fait-condamner-loperateur-nucleaire-sud-coreen/

2014年11月16日 (日)

「機動隊はフランス人を殺すな」: ダム建設反対デモとある青年の死/ルモンド紙&フランス国際放送(11月13日・14日)

2011年の福島原発事故以降、日本国内では市民による平和的デモが頻繁に組織されるようになりました。フランスではデモによる意見の表明が民主主義の根幹をなす市民の権利として法律で保障されています。しかし10月に起きた機動隊によるデモ参加者殺害事件は国内に大きな波紋を広げています。

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催涙りゅう弾 237発
瞬間炸裂催涙りゅう弾 38発
攻撃用手りゅう弾 23発
護身用の銃弾 41発

10月26日夜、環境保護を訴えシーベンにおけるダム建設に反対するデモに参加していた21歳の青年、レミ・フレッスが機動隊の発射した攻撃用手りゅう弾によって死亡した前後の3時間に機動隊が使用した弾薬の数だ。フランス政府が公表した。

レミ・フレッスが死亡しているのが確認されてからの48時間、フランス政府と機動隊本部は「状況を確認中」と繰り返し沈黙を守り続けた。レミ・フレッスの検死で死因が機動隊の手りゅう弾によるものと確定してからも、ベルナール・カゼヌーヴ内務大臣は機動隊の責任を否定し続けて来た。

しかしルモンド紙が11月12日、青年の死亡直後の機動隊員らによる大声での会話を録画したデモ参加者のビデオの内容を報道した直後、カゼヌーヴ内務大臣は機動隊による手榴弾の使用禁止を発表した。ビデオには次の会話が録音されていた。

「死んじまったよ、こいつ。。。 おい、とんでもないことになったぞ。」

内務大臣はフレッス氏が死亡に至った状況について事件直後は知らされていなかったとして、自らの辞任を求める声には沈黙している。

フランス各地の高校生及び大学生による学生の自治組織は、機動隊による市民への暴力禁止を求める大規模な平和的デモを行った。

「機動隊はフランス人を殺すな」
「市民に武器を使うな」

このようなプラカードにまじって、次のようなメッセージもあった。

「レミ、僕らは君を忘れない」

中立を意識しこれまで口を閉ざしていたレミ・フレミスの両親は、いつまでも責任者を明らかにしようとしない政府に対し、裁判に踏み切った。

「手りゅう弾の使用を禁止するだけでは十分ではありません。」
「政府トップの誰が命令を出したのか。政府は真実を明らかにしてほしいと思います。」

切実な思いは、まだ届いていない。

(複数の記事から抜粋し一部編集しています)

●元の記事:「ベルナール・カゼヌーブ内相、機動隊による攻撃用手榴弾の使用を禁止」/ルモンド紙(11月13日)
http://www.lemonde.fr/planete/article/2014/11/13/mort-de-remi-fraisse-bernard-cazeneuve-annonce-l-interdiction-des-grenades-offensives_4523447_3244.html

●フランス24時間(フランス国際放送)11月13日・14日号

2014年11月 8日 (土)

福島原発事故から4年、原子力推進へ後戻りする日本/ルモンド紙(11月7日)

鹿児島県の伊藤祐一郎知事は11月7日、川内原発第1・2号機の再稼働を承認、2011年に起きた福島原発事故の後に新たに設定された新規準に基づく初めての原発再稼働が決定した。宮沢洋一経済産業大臣はこの決定に対し、直ちに歓迎の意を表明した。

日本国内では事故で破壊された福島原発の6基を除く48基の原発が現在停止している。福島原発事故(政府による被害推定額 58兆円、避難者16万人)の発生により安全対策が不十分であったことが明らかになったことから、停止に追い込まれた。

川内原発の再稼働承認にあたっては、近隣の自治体から反対の声が上がっていた。しかし発言権が与えられておらず意思決定から排除される結果となった。また、十分な避難計画策定されていない他、近隣に複数の活火山があるにも関わらず安全対策が十分でないとの指摘がなされている。火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣東大名誉教授は11月2日、「日本はいつ地震や火山の噴火に見舞われても不思議が無い状況にある」と述べて、

「地震や火山が起きる可能性があるか否か、ではなく問題は『いつ起きるか』だ」

と指摘した。

原子力規制委員会は現在17の原発について再稼働の可否を審査中。川内原発については右派政権を率いる原発推進派、安倍晋三総理大臣による承認が次のステップとなっており、2015年の初旬にも承認が行われる見込み。安倍政権と財界は電力の安定供給や二酸化炭素の排出量削減に原子力の利用が有効と主張している。

しかし世論調査では日本人の大多数が川内原発の再稼働に反対している。9月に東京で開かれた川内原発の再稼働反対デモには約1万6千人もの市民が参加した。安倍内閣は10月に2名の閣僚が辞任に追い込まれ、第二次安倍内閣が始まって以来初めて支持率が50%を割り込んでいる。国民の原発反対への意思は根強く、今回の鹿児島知事による再稼働承認は、安倍政権に更なる重荷を課すものだ。

(抜粋、一部編集)

●元の記事:「福島原発事故から4年、原子力推進へ後戻りする日本」/ルモンド紙(11月7日)
http://www.lemonde.fr/planete/article/2014/11/07/feu-vert-a-la-relance-de-deux-reacteurs-au-japon-quatre-ans-apres-fukushima_4520018_3244.html

2014年10月28日 (火)

11月5日頃までお休みします

いつも御愛読頂きありがとうございます。
近頃は仕事に追われ更新が多少スローになっていて申し訳ありません。

明日より11月5日頃までインターネットが不通となりますので、この間ブログの更新をお休みさせて頂きます。
日本列島は木枯らしの吹く季節となりました。季節の変わり目の折、御自愛ください。

フランスねこ

2014年10月26日 (日)

政治と金に揺れるWHO:エボラ熱はなぜ暴走したのか/BBC(10月22日)

福島原発事故が起きた2011年、IAEAと日本政府への配慮から重度汚染地域における被ばくや汚染食品の危険性を早期に否定したWHOは、西アフリカで発生したエボラ熱への対応でも、現地政府が主張する「風評被害」への政治的配慮を優先し、アフリカから欧州・米国をまたぐ前代未聞の感染被害を招きました。今回は原発事故についての記事ではありませんが、福島原発事故への対応との類似点を検証する観点からWHOという国際機関が持つ構造的問題をBBCの記事を通じて御紹介します。

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エボラ熱による感染者は現在、1万人以上、死者は約5千人。1970年代以降に起きた過去の総被害者数を上回りとどまるところを知らない。アフリカから欧州・米国をまたぐ前代未聞の大感染はなぜ起きているのか。

NGO「国境無き医師団」は今年3月、西アフリカ地域におけるこの死に至る病の急激な広がりを把握し、WHOに緊急対策を求めた。しかしWHOは「特定地域に散発的に発生している限定的な感染」と公式に発表、実質的な対策を行わなかった。「国境無き医師団」はその後ジュネーブのWHO本部に出向いて状況の緊急性を繰り返し訴えたが結果は同じだった。

「現地政府はエボラ熱の被害を実際より小さく見せようとしていました。WHOもこれらの政府への政治的配慮から被害を小さく見せようとしたのです。」

WHOが緊急事態宣言を出したのは約5ヶ月後の8月だった。それも、6月に世界300以上の感染症対策専門組織が作る技術委員会の専門家らから強い抗議を受けた末のことだった。WHOがより素早い対応を取っていれば、今の事態は防げたと見られている。

実はWHOは「国境無き医師団」からの警告を受けた後、西アフリカの現地に専門家を派遣、現地報告と対策の提言を受けていた。提言の内容は、エボラ熱にかかったと見られる患者への治療として食塩とブドウ糖を混ぜた経口補水液を率先して与えること、貧しい家庭に配慮し消毒薬だけではなくバケツを合わせて配布すること、エボラ熱の発熱を急激に悪化させる作用を持つ特定の解熱剤を使用しないよう周知することなど、すぐに実行に移せる簡易な内容でありながら詳細に渡っていた。しかし提言が実行されることは無かった。WHOの幹部は政治的に任命されている。WHOアフリカ地域事務所は「風評」を恐れ感染被害の現状を小さく見せようとする西アフリカ諸国政府への配慮と技術力の欠如から動くことができなかった。そしてWHO本部はそんなアフリカ事務所を動かすことができなかった。

もう一つ大きな問題がある。エボラ熱対策を所管するWHOの広域流行性感染症対策局は最近250億円規模の予算カットに遭い、職員の流出を招いていた。関係者の証言によれば、とてもエボラ熱への対策を十分に行える体制では無い。近年、各国政府によるWHOへの拠出金は低下の一途にあり、ビルゲイツ財団などの大企業主からの寄付に頼らざるを得ない状況が生じている(注:ビル・ゲイツ氏は中国での原発建設にも投資を行っている)。そして利益を産むワクチンや新薬の開発プロジェクトに比べ、貧しい国々の人々のみが苦しむ疾病への対策費もまた削減の対象になっている。WHOは再び世界を「全ての人における健康への権利の達成」とは別の方向に導いた。「国境無き医師団」の専門家らによれば、エボラ出血熱の沈静化は早くとも2015年末、場合によっては2016年の初頭まで見込めないと見られている。

(抜粋、一部編集及び説明を追記)

●元の記事:「エボラ出血熱はなぜ暴走したのか」/BBC(10月22日)
BBC Documentary « Ebola : What went Wrong », BBC, 2014.10.22
http://www.bbc.co.uk/programmes/p028t0q9


【訂正と追記のお知らせ】 10月27日、翻訳の一部に誤りがありましたので以下の訂正を行いました。大変申し訳ありませんでした。また、より分かりやすい記載となるよう、元の記事より一部の情報を追加しました。御確認ください。

「毎年6月に開かれるWHO総会で世界各国の専門家から強い抗議」→「6月に世界300以上の感染症対策専門組織が作る技術委員会の専門家らから強い抗議」

「提言の内容は、貧しい家庭に配慮した薬剤と必要器具の迅速な配布やエボラ熱に類似するマラリア等の症状を区別するための薬剤投与の際の留意事項など、詳細に渡っていた。」→「提言の内容は、エボラ熱にかかったと見られる患者への治療として食塩とブドウ糖を混ぜた経口補水液を率先して与えること、貧しい家庭に配慮し消毒薬だけではなくバケツを合わせて配布すること、エボラ熱の発熱を急激に悪化させる作用を持つ特定の解熱剤を使用しないよう周知することなど、すぐに実行に移せる簡易な内容でありながら詳細に渡っていた。」

「200億円規模の予算カット」→「250億円規模の予算カット」
「感染症対策局」→「広域流行性感染症対策局」

2014年10月21日 (火)

原発推進派 プログリオ仏電力公社社長、新エネルギー転換政策の導入で「退場」:「新社長は老朽化原発への対応を」/ルモンド紙社説(10月17日)

新エネルギー転換政策法案に関する議会での審議が開始した翌日、オランド大統領はフランス電力公社(EDF、仏政府が85%の株を保有するフランス最大の電力会社)の社長をアンリ・プログリオ氏からジャンベルナール・レヴィ―氏に交代させた。これはオランド大統領が選挙で原子力の割合を現在の75%から50%にまで下げることを公約して当選したこと、議会が新たな電力政策を審議していることを考えると筋の通った対応である。前社長のプログリオ氏はオランド大統領が同じく選挙で廃炉を公約したフェッセンアイム原発(1978年稼働、オランド大統領の公約で2017年に閉鎖予定)の廃炉に後ろ向きな態度を取ったばかりか、フランス国内の老朽化した原発への対応に着手せず、原子力との見切りをつけようとしなかった。

フクシマ後のフランスには数多くの老朽化した原発が残されている。今後これらを使い続けるためには、福島原発事故の発生を受けてより厳格化された安全基準を満たすための膨大な予算が必要となる。「原発は安い」という時代は終わった。新社長の手腕が問われている。

(抜粋、一部編集)

●元の記事:「フランス電力公社:プログリオ後に控える新社長への試練」/ルモンド紙社説(10月17日)
« EDF : après proglio, les défis du nouveau PDG », Le Monde, 2014.10.17
http://www.lemonde.fr

«仏領ギアナで自然エネルギー発電60%を達成/フランス国際放送(10月8日)