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2011年4月20日 (水)

「原子力安全委員会、作業員への被曝治療用の幹細胞保存を拒否―日欧157医療機関、幹細胞保存への協力を明言」Lancet(4月18日)

英語の記事ですが、重要な記事なので急遽掲載します。

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ノーベル賞受賞者などの寄稿で知られる世界的な医療雑誌の権威「ランセット」は418日、虎の門病院の谷口修一医師と公益財団法人がん研究会の谷本哲也医師らの論文を掲載した。

谷口医師らはまず、福島原発内で何百人もの作業員が高度の放射線にさらされながら汚染水を汲みだす作業に追われていることに言及。これらの作業員が強度の被曝により骨髄を損傷し、血液の再生が不可能になった場合に備え(参考 1)、移植用の幹細胞をあらかじめ保管することを325日以来提言しているにも関わらず、原子力安全委員会(参考 2)がこれを拒否し続けていると指摘した。

1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の際には、高度の放射線にさらされた9名の作業員が骨髄細胞の注入を受けた。1999年には東海村における放射性燃料工場での事故により2名の作業員が幹細胞移植を受けている。こうした他人の幹細胞を被曝者に移植する手法は、ドナーを探すのに時間がかかったり、免疫抑制作用が出るなどの副作用が知られている。本人の幹細胞を保存・使用すればこうした問題が防げるほか、白血病を発症した際にも治療に使用できるなどの利点がある。

こうした事情を受け、谷口医師らは325日以来、福島原発の作業員らが強力な放射線にさらされた場合に備えて作業員の末梢血幹細胞の採取と保存を行うことを提言してきた。また、329日には日本造血細胞移植学会が、「日本国内107の医療機関がこうした幹細胞採取と保存に協力を表明している」とを発表。欧州・血液骨髄移植グループもこうした提言に賛同し、「ヨーロッパ内の50以上の病院でこうした作業員への支援を行う用意がある」と発表した。

しかし日本の原子力安全委員会はこうした幹細胞の採取と保存は不要と繰り返し主張。理由として、原発業員の身体的・心理的負担になる、国際的に権威ある組織からこうした手法への合意が得られていない、日本の一般市民から十分な理解が得られていない、などを挙げている。

幹細胞移植は、骨髄以外の器官(胃腸器官や皮膚、肺など)の組織を保護するには有効ではないなどの短所もあるが、高い有効性と安全性が認知された治療方法である。

谷口医師らは結論として、原子力産業が十分な情報公開を行っていないことを指摘、原子力産業との繋がりを持つ政府関係者が原子力産業の名声を守るために問題の深刻さを認めようとしていないようだ、と述べている。最も優先すべき政府の使命は、原発作業員の命を救い、事故現場周辺の市町村を守ることだ、とも指摘した上で、平時の経済的な費用対効果に基づいた考え方で政策判断を行うのではなく、原発作業員やその家族の立場に立って判断をすることを求めている。

同論文は、315日に日本政府が原発作業員における被曝量の上限を年100ミリ・シーベルトから250ミリ・シーベルトに引き上げたことについても、作業員が放射線にさらされた場所で法の制約を受けずに作業できる時間を延ばすことだけを目的として実施されたものだった、と推測している。

<参考 1>

パリ市サンルイ病院の血液・免疫学研究科に所属するエドガルド・カロセラ医師によれば、強度の放射線にさらされると皮膚が火傷のような状態になるとともに、骨髄の幹細胞が破壊され、体の免疫機能や血液を再生する機能が失われることが知られている(「ル・モンド紙」319日の記事掲載より引用)。

<参考 2>   原子力安全委員会 委員 http://www.nsc.go.jp/annai/iin.htm 

ランセットによるオリジナル記事(英語)

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)60519-9/fulltext?rss=yes

ロイターによる報道記事(日本語)

http://jp.reuters.com/article/wtDomesticNews/idJPJAPAN-20661820110417 

ル・モンド紙による報道記事(日本語・要約)

http://www.francemedianews.com/article-71811456.html 

(Tanimoto, Uchida, Kodama, Teshima, Taniguchi, “Safety of workers at the Fukushima Daiichi nuclear power plant”, The Lancet, 2011.04.18)

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コメント

原子力安全委員会は、何で幹細胞の採取と保存は不要というのかね。

>原発業員の身体的・心理的負担になる。
 作業員の立場なら保険に入るような心境だと思うが。

>国際的に権威ある組織からこうした手法への合意が得られていない。
世界的な医療雑誌の権威「ランセット」に論文掲載されて認められてるんじゃないのけ?

>日本の一般市民から十分な理解が得られていない。
作業員を大切にしろというコンセンサスはあると思うが。

産経の飛ばし記事で20万ぐらい費用がかかるとかあったが、500人で1億ぐらいなら国と東電で十分負担できるしな。
全然知識はないが、たぶん幹細胞の採取が大変なんだろな。
作業員入院させて手術して、回復を待つ時間がない。このあたりの理由だろな。

いずれにせよ、黙認してる原子力委員会が組織として不要だな。

ぽぽぽぽーんさん、こんにちは。

なぜ原子力委員会が拒否しているのか?という理由につきましては、まず「原発の安全性をアピールするため」、との指摘が複数なされています。

作業を行うにあたって、幹細胞の保存までしなければならない事態である、つまり作業員が死と背中合わせで業務を行わざるを得ない状況である、ということを公にしたくない、ということのようです。

2つ目には作業員の健康保護にかかる費用負担(将来的には補償の問題にもつながるでしょう)を避けるため、という指摘があります。おっしゃる通り、これのみで見れば莫大な額にはならないと思われますが、将来の補償問題に影響することを見越しているのかもしれません。

また、同じく補償問題との関連で一般の医療機関にこれらの作業員の健康状態(被曝量など)を知られたくないと考え、これを避けている可能性も考えられます。

原発作業員のための幹細胞採取問題についてサイトを開設しています。

谷本さん

コメントありがとうございました。
幹細胞採取についてのサイト、早速拝見致しました。
「日本学術会議」による幹細胞採取は「不要・不適切」という意見ですが。。医師には強い職業倫理が求められるはずが、被曝の影響を良く知っている医師が率先して原発作業員に非人道的な業務条件を押し付けているように見えます。

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