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2011年4月

2011年4月29日 (金)

「汚染された食品で何が起きるのか?子どもの内部被曝を考える」ネステレンコ他

放射能に汚染された食品を食べると、何が起きるのか。子どもと大人では、汚染された食品の影響はどんな風に違ってくるのか。

チェルノブイリ原発事故の後、重度の汚染に苦しむ周辺地域で長く調査を行ったネステレンコ博士他のデータを参照してみた。

チェルノブイリ原発事故から14年が経った2000年になっても、周辺のウクライナ国ロフノ県とズィトミール県では、90%以上の野いちごとキノコで許容量を超えるセシウム137が見つかっていた。

以下は、1993年にベラルーシ国ブレスト県、ゴメル県、モジレフ県で行われたセシウム137による汚染調査による結果の一部である(安全基準は当時政府が設定していたもの)。

キノコ    安全基準370ベクレル/キロを超えたキノコの割合: 80.5

(参考: 福島県飯館村のシイタケ 7200ベクレル/キロ  421日調べ)

(     埼玉県秩父市のシイタケ 34.8ベクレル/キロ  419日調べ)

http://atmc.jp/food/?q=407cf&d=7&s=i131&a=

クランベリー  安全基準185ベクレル/キロ を超えたクランベリーの割合: 62.7

狩猟動物の肉  安全基準600ベクレル/キロ を超えた肉の割合: 58.4

牛乳      安全基準111ベクレル/キロ を超えた牛乳の割合: 14.9

水       安全基準185ベクレル/キロ を超えた水の割合: 8.8

大人に比べて体重が軽く、新陳代謝が激しい子どもは、大人と同じ量の汚染食品をを摂取した場合でも、大人の35倍以上の放射線にさらされる。

放射能に汚染されたベラルーシのゴメル県では、事故から10年・20年後の1995年から2007年にかけての時期になっても、7090%の子どもの体内に1キロ当たり1520ベクレルを超えるセシウム137が蓄積されているのが見つかっていた。

これは、年0.1ミリシーベルトの内部被曝をひきおこす放射線量である。

多くの村では、子どもの体内1キロ当たり200400ベクレルのセシウム137が検出され、最大では1キロ当たり7,300ベクレルにも相当するセシウム137を蓄積していた子どもも見つかっている。1キロ当たり2000ベクレルのセシウム137を蓄積すると、年最大100ミリシーベルトの被曝を受けることになる。

同じく、多くの村では最大で33%までの子どもが、年1ミリシーベルトの公式最大許容量を超える放射線を浴びていた(当時の政府が設定した基準。福島では現在、子どもに対し20ミリシーベルトが公式許容量として設定されている。年20ミリシーベルトとは、米国・ドイツの原発作業員における放射線被曝量の上限に相当する)。

1991年から2005年にかけて、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの汚染地域では、人々の体に蓄積されたセシウム137とストロンチウム90の量は減るどころかむしろ増加の一途をたどった。現状での放射性落下物の90%以上が半減期30年のセシウム137であることを考慮すると、今後30年の間、汚染地域では放射能汚染による危険な状況が続くと考えられる。

出典:ネステレンコ、ネステレンコ、ヤブロコフ「チェルノブイリによる食品と人々への放射能汚染」/『チェルノブイリ―大惨事が環境と人々にもたらしたもの』第12

http://www.infoark.org/InfoArk/Energy/Nuclear/Chernobyl,%20Consequences%20of%20the%20Catastrophe%20for%20People%20and%20the%20Environment%20-%20Yablokov_2009.pdf#page=310 

カール・グロスマンのテレビ番組「環境クローズ・アップ」による同書特集(日本語の字幕付き)

http://www.universalsubtitles.org/en/videos/zzyKyq4iiV3r/ 

2011年4月28日 (木)

「『肉は塩水につけてから火にかける。肉汁は2回捨てること。』チェルノブイリから25年、続く放射能汚染」クーリエ・アンテルナショナル(4月21-27日)

週刊国際紙クーリエ・アンテルナショナルは421日、ポーランドの新聞「ポリティカ」紙によるベラルーシの食品汚染に関する記事をフランス語で掲載した。

チェルノブイリ原発事故から25年が過ぎてもなお、事故現場から約200キロの距離にあるベラルーシでは、放射能に汚染された食品を通じた重度の健康被害が発生している。原発産業と癒着関係にあるベラルーシ政府は事故現場周辺の安全性を強調し、汚染の存在を強く否定し続けてきた。

そして汚染された食品を食べないよう呼び掛ける地元の医師を警察を通じて妨害したり、放射能汚染による病気の発生を調査した専門家を投獄して、事実を隠し続けてきた。他方で子どもたちは脳や遺伝子に重度の障害を持って生まれ、汚染された野菜や肉から更に体を蝕まれる悪循環に陥っている。

(以下、一部要約。)

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ベラルーシの南東部に位置するブダ・コチェレフ市の郊外にある、家の台所。NGO「チェルノブイリの子どもたちのために」の会議が開かれている。引退した小児科医のバレンチュナ・スモルニコファ医師は他のボランティアたちと一緒に、海外での休暇に送りだす子どもたちを選んでいるところだ。最も多くの放射線を浴びている子どもが優先だ。

以前は子どもたちの体内放射線量を下げるために、子どもたちをドイツやイタリアの家庭にホームステイに送っていた。しかし、子どもたちの放射線量は下がらなかった。(ベラルーシの実家で放射能に汚染された食品や焚き木を使う生活を送っているためだ。)

今はむしろ子どもたちの両親に、放射能からの汚染をより少なくとどめるための食事方法や放射線を避けながら暮らす方法を教えるようにしている。海外に子どもたちを送る現在の目的は、受け入れてくれる家庭と長く付き合う関係を築くためだ。特にドイツの家庭は、これらの子どもたちを支え続けてくれている。

数年前、ドイツの新聞がチェルノブイリ事故の2年後に重度の脳障害を持って生まれたオラ・ぺシュコファの記事を掲載したことがあった。オラは薬を必要としていた(が両親には治療のお金が無かった)。記事を読んだドイツ人のクララ・バウレンは強く心を打たれ、家族や友人たちに、この先はもうプレゼントをくれなくていいからお金をちょうだい、と言った。そして集めた資金でオラの薬を買って送ったのだった。バウレン夫人が無くなった後は、その娘が後を引き継いでいる。

「(汚染された)肉を食べたい時は、あらかじめ塩水に肉を浸します。そして、煮込んでいる間に2回肉汁を捨てなければいけません。」

「森になっているぶどうやベリーの実を食べてはいけません。」

「(チェルノブイリ事故当時に打ち捨てられた)廃屋から取って来た焚き木を燃やして暖を取ってはいけません。」

「家で飼っている牛の牛乳を飲んではいけません。」

バレンティナ医師は20年間の間、放射能被曝に苦しむ子どもたちを診察・治療してきた。

「キノコ類を食べたり、森の鳥獣を捕まえて生活している家庭の子どもは、最も放射能による被曝を受けています。」 

彼女は学校を訪問して放射能被曝を防ぐための啓発活動を行っているが、彼女を受け入れないよう政府から学校に指示が出されたり、KGBに尾行されるなどの嫌がらせを受け続けている。

最も汚染された村々からは人々が退避することになり、地域にあった工場なども取り壊された。しかし、ブダコチェレフなどのそれ程までには影響を受けなかった地域や、ウクライナ国境から少し遠い地域などでは退避は強制ではなかった。

地元に残ることを選んだ人々は無料の治療や食事の恩恵を得たが、1994年に政権についたルカチェンコ大統領は、この施策に予算がかかりすぎると考えた。そして、以前汚染されていた土地はもう既にきれいになったと言って、人々に戻って来るよう呼び掛けた。国も自治体もこぞって「何も危険はない」とベラルーシ国民を説得するために手を尽くしたのである。

(チェルノブイリ事故発生時に人々が退避した後の)廃屋を取り壊した後の木材は放射能に汚染されているが、燃料としてロシアに転売されている。住民が言う。

「お金が無いので、これしか買えません。」

同じ理由から、―家は森でできたもの(野菜、果物、肉)を頻繁に食事の材料にしている。

イオウリ・バンダジェフスキー教授は特定地域における放射能汚染の濃度と特定の病気の因果関係を調査で証明した。しかし、調査結果を発表すると刑務所に送還された。

「神様が放射能汚染についての情報をくれたなら、伝えなくちゃ。私は続ける。やらなきゃいけないことは自分で分かるから。」

バレンティナ医師はこう語っている。

Ekaterina Tkatchenko & Agnieszka Wojcinska, « Les Biélorusses conamenés aux raiations » Courrier international n°1068, 2011.04.21-27

2011年4月26日 (火)

「チェルノブイリ事故と旧ソ連政府:現地取材禁止から政権陥落と国の崩壊へ」ル・モンド紙・写真(4月25日)

チェルノブイリ原発事故が起きた1986426日にモスクワに配属され1993年までの間フランス・ラジオとフランス・テレビ1のモスクワ特派員を務めたユリス・ゴセットが、チェルノブイリ事故が起きた当時の状況を語った(複数の写真と音声入り)。

http://www.lemonde.fr/planete/infographe/2011/04/25/tchernobyl-les-journalistes-ne-pouvaient-pas-se-rendre-sur-place_1512384_3244.html 

「偶然ですが、426日にフランス・ラジオとフランス・テレビ1モスクワ特派員として配属され業務を開始しました。でも、最初は何が起きていたのかが分からなかった。政府関係者が現地に向かうのを見て、何か重大なことが起きたのだと思ったのですが、何の公式発表も無かった。原発事故に関する情報は無かったのです。

そして事故発生から24時間後に、ソビエト政府の名前で『チェルノブイリ』原発事故による被災者への弔意を伝える声明だけが出されました。それで初めて『チェルノブイリ』だと特定されたのです。でも、実際に何が起きていたのか、また惨事の規模についても、何も分かりませんでした。24時間が経過して初めて、何か重大なことが起きたという事実だけが伝えられたのです。

何が起きていたのかを理解するのは至難の業でした。当時、外国人記者はモスクワを出て取材することを禁止されていたのです。

現地から列車で到着する人たちに、事故の深刻さについて取材を行いました。そして7月上旬になって初めて、チェルノブイリ周辺地域を訪問することができたのです。非常に強い印象を受けました。プレカットの町に入ったのですが、住民が完全に退避した後で、ゴーストタウンになっていました。子どもが遊んでいた人形、ノート。。全てこのようにうち捨てられて、全く予期されていなかった事態だったことが伺えました。事故の後の数週間、ずっとそのままにされていました。そしてそれ以来、今に至るまでずっとそのままなのです。

ゴルバチョフ大統領は最終的には事故の状況を発表して透明性が確保されていることを印象づけようとしました。プロパガンダや抵抗もありましたが、遅ればせながら検閲を無くそうとする流れができて行ったのです。そして最後には、ソ連とゴルバチョフ政権自体の陥落を招くに至りました。最終的に、この事故は劇的かつソ連の歴史を根本から覆すものとなったのです。事故によって、ソ連の歴史が新たに塗り替えられたのです。

写真:

l  事故発生直後のチェルノブイリ原子力発電所(複数)。

l  緊急退避により捨て置かれた子どもの人形と学校の教室内。

l  ゴルバチョフ大統領(当時)

l  関係者による状況説明会

http://www.lemonde.fr/planete/infographe/2011/04/25/tchernobyl-les-journalistes-ne-pouvaient-pas-se-rendre-sur-place_1512384_3244.html 

Ulysse Gosset, Le Monde, 2011.04.25

2011年4月25日 (月)

「消される被曝者(2)『チェルノブイリ事故の死者4000人』の謎とIAEA・WHOの調査手法」ヤブロコフ他

(本編は「数字から消される被曝者たち(1)広島から学ぶ」の続きです。長いので2つに分けました。前書きにつきましては、まず(1)をご覧ください。)

http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/1-a0d9.html 

2.チェルノブイリから学ぶ

(以下、『チェルノブイリ―大惨事が環境と人々にもたらしたもの』(注1)の「序章」1-3ページ、「健康への影響」3241ページ、「事故23年後の健康と環境への影響」318-326ページを主に参照。)

チェルノブイリ原発事故の後にも、広島とほぼ同じことが起きた。旧ソ連政府は国内の医師に対し疾病と放射線による被害を関連づけることを禁じ、全てのデータを3年間開示禁止にした。放射能による被害で治療を受けた患者のカルテすら開示されなかった。また後に述べるように、IAEAWHOからの圧力もあった。

本書の著者の一人であるネステレンコ博士は、旧ソ連の可動式原子力発電所「パミール」を開発したエンジニアで、事故当時はベラルーシ原子力センターの代表を務めていた。しかし同博士はチェルノブイリ原発事故の後、放射能の危険から人々を守るために自らの人生を捧げる決心をする。

チェルノブイリ事故の後に大量の放射線に汚染され健康被害に苦しむ子どもたちの現状を調査していた同博士は、調査を理由に旧ロシア政府に逮捕・投獄されたこともある。博士は残念ながら本が出版された直前の2008年に死去している。

このように、独立した専門家たちが現状を調査し結果を出版すること自体が、非常に多くの困難を伴う道のりだった。本書に記されているのは、こうした圧力に負けなかった技術者たちが残した記録でもある。

本書が書かれたきっかけについて著者は、チェルノブイリ原発事故の被害に関するIAEAWHOによる調査が惨事の結果を十分に反映していないとの問題意識から、独立した調査を実施するに至ったと述べている。

IAEAWHOによる調査の結果と今回発表された調査の結果は大きく食い違っている。IAEAWHOがチェルノブイリ事故での死者と放射能による癌患者の総数を「死亡者について直接の死因を特定することは難しい」との注釈付きで9000人、死亡者については4000人と見積もったのに対し、ヤブロコフ博士らの調査では事故が原因となって発生した死亡者数を985千人と指摘している。

著者は更に、IAEAWHOによる調査にかかわる専門家の中には、実際の放射能汚染による健康被害よりも、汚染地域における貧困や住民が持つ被害者意識の方が深刻な影響を与えた、と考え、チェルノブイリ事故の影響は一般に思われている程には深刻ではない、と結論づける者がいることを指摘している。著者はまた、こうした専門家の中には原子力産業との関係を持つ者が含まれている、とも指摘している(注2)。

IAEAWHOによる調査と本調査で、なぜこんなに数字が違うのか?

著者はIAEAWHOによる調査について以下の問題点を指摘している。

1)英語以外の文献をほとんど参照していない。多くの現場の関係者による収集データはスラブ語(ロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語)で作成されていたが、IAEAWHOは主に英語による350文献しか参照しなかった。本書ではチェルノブイリ周辺で収集されたスラブ語によるデータを含む約5000文献を参照している。

2IAEAWHOによる調査は、チェルノブイリ原発事故による放射性物質の57%が排出された東部ロシア、ベラルーシ、ウクライナ以外の地域を調査対象としていない。特に、イラン、中国、トルコ、アラブ首長国連邦、北アフリカ、北米などが放射能による汚染にも関わらず調査対象から除かれている。

3)チェルノブイリ原発事故による放射性降下物によって2%しか放射線濃度が上昇しなかった、とうい過少評価を行っている。

4)事故による被曝量と疾病・死亡の因果関係を厳密に求め過ぎている。チェルノブイリ周辺地域(ベラルーシ、ウクライナ、ロシア)では、何千もの科学者、医師、その他の専門家たちが、何百万人もの住民が放射性降下物による汚染で苦しめられるのを直接目にしてきた。「調査の枠組みに該当しない」という理由でこれらのデータを無視するべきではない。

その他、事故発生後の数日間、放射性物質の排出量その他についてのデータが全く計測されなかったために、正確な状況の把握が困難である、という点が指摘されています。

(注1)ヤブロコフ、ネステレンコ、ネステレンコ著、ニューヨーク科学アカデミー出版。Alexey V. Yablokov, Vassily B. Nesterenko, Alexey V. Nesterenko, 2009, Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment.

http://www.infoark.org/InfoArk/Energy/Nuclear/Chernobyl,%20Consequences%20of%20the%20Catastrophe%20for%20People%20and%20the%20Environment%20-%20Yablokov_2009.pdf#page=310 

今回は「調査」の在り方についてのみ触れますが、同書にはチェルノブイリ原発事故によって起きた健康被害と環境への影響が詳細なデータとともに示されており、一読の価値があります。英語ですが、ゆっくり辞書を片手に関心のある章を読まれることをお勧めします。

英語はちょっと。。と言う方には、この本の概要を紹介している下記の動画がおすすめです。

カール・グロスマンのテレビ番組「環境クローズ・アップ」による特集『チェルノブイリ原発事故、百万人の犠牲者』(日本語の字幕付きです)

http://www.universalsubtitles.org/en/videos/zzyKyq4iiV3r/ 

インターネットにアクセスできない方用に、文字でも読めます。

http://www.asyura2.com/11/genpatu9/msg/753.html 

本についての紹介

http://blog.awakenature.org/?eid=238 

(注2)よく注意してみると、日本国内でも同じ論理が使われていることに気づく。勝間和代氏が中部電力によるCMや電気事業連合会によるラジオ番組への自らの出演について出した「お詫び」の中でも、事実に基づかない「住民の悲観的心理」への配慮が足りず申し訳無かった、という論理で説明がなされている。

http://real-japan.org/2011/04/15/421/ 

「消される被曝者(1)広島・被爆者調査での『内部被曝の否定』」沢田昭二、他

日本政府は今後、福島周辺地域の住民に対し、原発事故による放射線の影響を調べる疫学調査の実施を計画している。今回の調査の中心となっているのは「放射線影響研究機関協議会」という組織。協議会の中心となっているのは「財団法人 放射線影響研究所」である。世界保健機構(WHO)もまた、調査における日本政府への協力を宣言している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110421-00000541-san-soci 

この調査は私たちにとって、どのような意味を持つのだろうか?

広島・長崎への原爆投下後、そしてチェルノブイリ原発事故の後にも、同様の調査が実施されてきた。広島やチェルノブイリでの被害と福島原発事故における健康被害にはある程度の違いが見られるが、共通点も多くある。更には広島・長崎で調査を行った「放射線影響研究所」とチェルノブイリで調査を行った世界保健機構(WHO)が、今回の福島での調査実施を担う予定となっているとうい事実がある。

それなら、これら2機関が過去に行った調査から学ぶことがあるだろう。

こうした視点から、2009年に出版されたチェルノブイリ原発事故の被害に関する詳細な報告書『チェルノブイリ―大惨事が環境と人々にもたらしたもの』(注1)とその他の資料を参考に、「調査」について考えてみました。

※仏語記事ではありませんが、重要度に鑑み例外的に取り上げます。また、長くなってしまったので、(1)広島編と(2)チェルノブイリ編に分けて掲載します。

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尚、今回は「調査」の在り方についてのみ触れますが、同書にはチェルノブイリ原発事故によって起きた健康被害と環境への影響が詳細なデータとともに示されており、一読の価値があります。英語ですが、ゆっくり辞書を片手に関心のある章を読まれることをお勧めします。

http://www.infoark.org/InfoArk/Energy/Nuclear/Chernobyl,%20Consequences%20of%20the%20Catastrophe%20for%20People%20and%20the%20Environment%20-%20Yablokov_2009.pdf#page=310 

英語はちょっと。。と言う方には、この本の概要を紹介している下記の動画がおすすめです。 カール・グロスマンのテレビ番組「環境クローズ・アップ」による特集『チェルノブイリ原発事故、百万人の犠牲者』(日本語の字幕付きです)

http://www.universalsubtitles.org/en/videos/zzyKyq4iiV3r/ 

インターネットにアクセスできない方用に、文字でも読めます。

http://www.asyura2.com/11/genpatu9/msg/753.html 

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1.広島から学ぶ

今回の福島での調査の中心となっている「放射線影響研究所」の前身は、終戦直後の1947年に米国原子力委員会の資金で作られた「原爆傷害調査委員会」である。

冷戦下での核兵器開発を目的に広島・長崎の被爆者から放射能被害データの収集を行っていたとの見方が複数なされており、被爆者への検査を行うのみで治療は行わなかったとされる。米国主導の組織として世論の批判を受け、1975年に日米共同管理下に置かれる財団法人「放射能影響研究所」となって現在に至る。

日本政府と放射能影響研究所の前身である「原爆傷害調査委員会」は、原爆被害者における「放射性降下物」および「内部被曝」の被害を長い間認めて来なかった。内部被曝を軽視する姿勢は、福島原発事故における住民や原発作業員における内部被曝の軽視にもつながっている、と名古屋大学名誉教授で自身も被爆者である沢田昭二名誉教授は述べている。

沢田昭二 名古屋大学名誉教授による講演「放射線による内部被曝~福島原発事故に関連して~」

http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/04/blog-post_20.html

ヤブロコフ・ネステレンコ両博士による上記の本によれば、広島と長崎では原爆投下後の4年間、「原爆傷害調査委員会」以外の組織や個人による調査が禁止されていた。その間、約10万人の最も弱い人々が死んで行ったとされる。このように、最初に死んで行った人々の状況は、記録に残っていない。

また、日米政府による合同調査では、放射能による急性障害に関する調査の対象範囲を爆心地から半径2キロ以内に限定、放射線障害として認定する症状についても、脱毛と皮膚出血斑(紫斑)だけと定義して、一般的症状である下痢、嘔吐、食欲不振、倦怠感、発熱などは急性障害のあらわれとは認めなかった。

http://www.nuketext.org/kenkoueikyou.html 

結論として、「原爆傷害調査委員会」が広島で実施した調査については次のことが言えるだろう。

 住民の健康被害を救済することには主眼を置いていなかった。

 データを収集する期間や対象者の居住地域、放射能障害と認定する症状を限定することで、放射能による影響・被害を小さく見積もっていた。

 放射性降下物の影響や内部被曝の影響を認めず、放射能の影響・被害を小さく見積もっていた。

(注1)ヤブロコフ、ネステレンコ、ネステレンコ著、ニューヨーク科学アカデミー出版。

Alexey V. Yablokov, Vassily B. Nesterenko, Alexey V. Nesterenko, 2009, Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment.

http://www.infoark.org/InfoArk/Energy/Nuclear/Chernobyl,%20Consequences%20of%20the%20Catastrophe%20for%20People%20and%20the%20Environment%20-%20Yablokov_2009.pdf#page=310 

この本についての紹介ブログ

http://blog.awakenature.org/?eid=238  

2011年4月24日 (日)

「葉野菜、キノコ、イカナゴの摂取を控える。福島原発事故にかかる在日仏人向け勧告」公報IRSN(4月20日)

フランス放射線防護原子力安全研究(IRSN)420日、日本在住のフランス人を対象とした「福島第一原発事故に関する公報(4)」を発表しました。以下、要約です(全体の正確な内容を知りたい方は、必ずオリジナルを参照してください。)

1. 原発事故の状況

福島原発第13号基の状況については、依然深刻な状況が続いている。東京電力が第1号基で実施し、今後第23号基でも実施を予定している窒素ガス注入により、大気中に新たな放射性物質が排出される見込み。

東京電力が発表した危機脱出のための工程表について。汚染により事故現場に近づくことが難しい状況を鑑み、「工程表に示された計画を実施するに当たり、実際にどのくらいの期間が必要となるのかを今後用心深く見守る必要がある」。

2.汚染の状況

土壌汚染と食品汚染の現状について言及。茨城県で一平方メートル当たりのセシウム137にかかる堆積量が28,300ベクレル、同じくヨウ素13129,700ベクレル観測されるなど、複数の県で高いレベルの放射性物質の堆積が観測されている。福島原発の近郊では、これより更に高いレベルの汚染が起きている可能性がある。

野菜についてはセシウム137とヨウ素131の低下が見られるものの、福島原発周辺地域で獲れた野菜には引き続き高い汚染が見られる。その他、下記の通り食品への汚染状況を提示(野菜については1キロ当たりに含まれる放射性物質の量を表示)。

l  福島県のホウレン草

ヨウ素1312,100ベクレル(411日時点)

l  茨城県北茨城市のホウレン草

ヨウ素1311キロ当たり1,800ベクレル、セシウム:1キロ当たり621ベクレル

l  福島県大玉村のブロッコリー

セシウム:8,900ベクレル(411日時点)

l  福島県飯館村のシイタケ

ヨウ素13112,000ベクレル、セシウム:13,000ベクレル(48日時点)

l  福島県の生乳

1リットル当たりのヨウ素13127ベクレル、セシウム:16ベクレル

l  イカナゴ類については魚介類の中で最も高い汚染が観測されている。

3IRSNの勧告

福島原発事故による大気中への放射性物質の排出により、主に福島、栃木、茨城、宮城の各県の地域において深刻な汚染が引き起こされた。以下の勧告は、放射線を浴びたり土壌に堆積する放射性降下物による汚染にさらされる危険をできる限り減らすためのものである。

今日では、放射性物質にさらされる危険は、放射性降下物に汚染された食品の摂取によるものが主となる。放射能汚染の影響を特に受けやすい食品は、葉のついた野菜と草食動物の乳である。

3.1 食品の摂取に関する勧告

IRSNは下記を勧告する。

  イカナゴ類の摂取を避ける。

  福島周辺5県(福島、栃木、茨城、宮城、群馬)で収穫された野菜(ホウレン草、花輪咲、牡蠣菜、小松菜、レタス、菊、キャベツ、白菜、セロリ、ブロッコリー、中華野菜「ボク・チョイ」、パセリ)とキノコ類の摂取を避ける。

  福島周辺5県(福島、栃木、茨城、宮城、群馬)で311日以降に生産された生乳を子どもに与えない。

  生産地や放射線濃度が分からない生鮮食品(特に葉野菜)については長期間の摂取を控える。

3.2 放射性降下物の影響が最も高い地域(福島周辺地域)に住む者への勧告

・福島県の北東部4分の1に相当する地域への渡航については渡航しないよう強く勧告する。特に福島原発から40キロ以内の圏内については、火急の所用が無い限り渡航しない。火急の所用で渡航する場合には、厳密に必要最小限の滞在時間に限ることとし、下記の勧告を厳守するとともに、渡航者を大人に限ることとする(子どもは渡航しない)。

・福島、宮城、茨城、栃木の4県については、不要に放射能を浴びたり放射性降下物による被曝を受けることを避けるため、重要な所用以外(趣味・観光)での渡航を控える。

・宮城、茨城、栃木の3県については、これらの地域に住む者で、重要な所用がある場合には、下記の注意事項を全て遵守することを条件に渡航できることとする。

IRSNの勧告事項

乳児・幼い子どもの食事にはボトル入りミネラル・ウォーターを使用する。

自宅の家庭菜園から収穫した野菜や、家庭で飼っている家畜動物を食用に用いるのを最大限に控える。

野菜や果物を食べる前に、注意してよく洗う。

  無意識に手が口に触れて汚染が起きないよう、ポンプ式容器に入った液体石けんで手を定期的に洗う。

  靴を家の中に持ち込まない(特に雨の日は注意する)。

  濡れた雑巾で床を定期的に拭く。

  換気扇や通気口を洗う。

  家具、カーペット、敷物の表面に定期的に掃除機をかける。掃除機の中袋を定期的に交換する。

IRSN「福島第一原発事故に関する公報(4)」 420日号(仏文)

http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN_Residents-Japon_Bulletin4_20042011.pdf 

英語版(今後、掲載が予定されています)

http://www.irsn.fr/EN/Pages/home.aspx 

2011年4月22日 (金)

「『長期汚染』の現実否定、『普通の生活』回帰と内部被曝。汚染を生きる私達の心理と行動を予測する」ル・モンド紙(4月19日)

ル・モンド紙は419日、チェルノブイリ原発事故の後にウクライナやベラルーシの汚染地域で長く調査を行ってきた社会学者フレデリック・ルマルシャン助教授(カン大学)の寄稿文を掲載し、福島におけるチェルノブイリ体験の再来を指摘。チェルノブイリ事故の後に汚染地域に住み続けざるを得なかった住民達が取った「現実逃避」の行動と心理、そしてその結果起きた内部被曝の増長に言及しながら、福島原発事故の後、深刻な放射能汚染に直面する日本人にも同じ問題が起きることを予測している。

ルマルシャン助教授の専門分野は「原子力やバイオテクノロジー産業が環境や健康もたらす危険」。主要著書に「チェルノブイリの沈黙」(2006年)などがある。 (以下、ポイントのみ要約)

確かに、チェルノブイリの原発事故と福島原発事故の間には幾つかの相違点がある。福島では今も800万人もの人が、今後何百年にもわたって汚染され続けるであろう土地に住み続けている。しかし福島で繰り広げられているのは、新しい歴史などではない。チェルノブイリの歴史が繰り返されているだけだ。

チェルノブイリ事故からの生存者が私に教えてくれたことが二つあった。一つ目は、原子力による大規模な汚染が一度起きた後は、「普通の状態に戻る」ということは決してありえない、ということだ。

どこにも逃げられないとしたら、避難する場所が他にないとしたら、どうすればいいのか?

チェルノブイリから学んだ二つ目の教訓は、日本国内で将来汚染され続けるであろう地域に居住する住民達が学ばなければならない点だ。

今後長期にわたって汚染が続く地域に生活し続けるしかない人が、ある程度落ち着いた気持ちで将来に立ち向かうためには、現実を否定するしかない。ベラルーシの物理学者ワシリ・ネステレンコ氏は、チェルノブイリ事故の後10年の間、本来であれば時間の経過とともに自然に低下するはずの汚染地域の住民の被曝量が、増加してゆくのを目にした。

住民達は「突発的な事故」(として原発事故をとらえる)段階でのストレスを何とか乗り越えた後、もう普通の生活に戻れるだろうという希望を抱く。しかしこれに反して、汚染が長期間続くという受け入れることが非常に難しい現実に直面させられる。そして、(汚染の現実をわざと無視することによって)事故が起こる前の生活習慣を再び取り戻してしまう。

これは、福島でも同じことが起きるだろうと思われる。

チェルノブイリと福島での事故はかつて人間が経験したことのない新しい形の災害となった。人間の生物学的、社会的、精神的生活だけでなく、まだ生まれて来ていない未来の世代、将来の存在までが、「核エネルギー」によって既に征服されてしまっている。


チェルノブイリと福島では、農地、水資源、そしてもっと悪いことには、人々が密集する都市部までもが汚染されてしまった。こうした地域は今後あらゆる形での利用が禁止され、完全に失われた土地となる。このような足かせは、社会主義経済にとっても自由主義社会にとっても(経済的な観点からは)到底受け入れがたいものだ。こうした理由から、福島県の汚染地域における長期の退避は行われないことになると予想している。

(Frédérick Lemarchand, « Fukushima, l’autre Tchernobyl », Le Monde, 2011.04.19)

日本語の要約(フランス・メディアネットワーク)

http://www.francemedianews.com/article-72051157.html 

2011年4月20日 (水)

「原子力安全委員会、作業員への被曝治療用の幹細胞保存を拒否―日欧157医療機関、幹細胞保存への協力を明言」Lancet(4月18日)

英語の記事ですが、重要な記事なので急遽掲載します。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

ノーベル賞受賞者などの寄稿で知られる世界的な医療雑誌の権威「ランセット」は418日、虎の門病院の谷口修一医師と公益財団法人がん研究会の谷本哲也医師らの論文を掲載した。

谷口医師らはまず、福島原発内で何百人もの作業員が高度の放射線にさらされながら汚染水を汲みだす作業に追われていることに言及。これらの作業員が強度の被曝により骨髄を損傷し、血液の再生が不可能になった場合に備え(参考 1)、移植用の幹細胞をあらかじめ保管することを325日以来提言しているにも関わらず、原子力安全委員会(参考 2)がこれを拒否し続けていると指摘した。

1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の際には、高度の放射線にさらされた9名の作業員が骨髄細胞の注入を受けた。1999年には東海村における放射性燃料工場での事故により2名の作業員が幹細胞移植を受けている。こうした他人の幹細胞を被曝者に移植する手法は、ドナーを探すのに時間がかかったり、免疫抑制作用が出るなどの副作用が知られている。本人の幹細胞を保存・使用すればこうした問題が防げるほか、白血病を発症した際にも治療に使用できるなどの利点がある。

こうした事情を受け、谷口医師らは325日以来、福島原発の作業員らが強力な放射線にさらされた場合に備えて作業員の末梢血幹細胞の採取と保存を行うことを提言してきた。また、329日には日本造血細胞移植学会が、「日本国内107の医療機関がこうした幹細胞採取と保存に協力を表明している」とを発表。欧州・血液骨髄移植グループもこうした提言に賛同し、「ヨーロッパ内の50以上の病院でこうした作業員への支援を行う用意がある」と発表した。

しかし日本の原子力安全委員会はこうした幹細胞の採取と保存は不要と繰り返し主張。理由として、原発業員の身体的・心理的負担になる、国際的に権威ある組織からこうした手法への合意が得られていない、日本の一般市民から十分な理解が得られていない、などを挙げている。

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2011年4月19日 (火)

「日本の野菜は安全か?『福島後』のフランス家庭の食卓から考える」CRIIRAD(4月9日)

福島原発事故は長期化の様相を見せている。日本から約9600Km離れたフランスで、人々はどのような点に気をつけて生活しているのだろうか。

原発事故に関する独立した調査を行っているCRIIRAD研究所(注1)は49日、フランスに住むフランス人向けに、福島原発事故の影響について注意を促す発表を行った(「福島第一原子力発電所から排出される放射性物質によるフランス国内への汚染:どんな危険があるか?」)。

フランスは25年前のチェルノブイリ原発事故の際、政府が食品への放射能汚染を国民に知らせなかったために多くの甲状腺患者を出した歴史を持つ。CRIIRADが誕生したきっかけは、国を含めた特定の組織に属さない「独立した調査機関が必要」との認識からだ。

今回のCRIIRADによる報告は、フランス国内8ヶ所で収集された大気中の放射線濃度等のデータに基づいた内容となっている。フランス以外にも、ドイツ、スイス、ベルギー、イタリアなどのヨーロッパ諸国にもあてはまる内容と述べられている。ヨーロッパ大陸と福島原発により近い日本の状況は大きく異なっている。しかし日本に住む私たちにとっても参考になる点があるのではないか。

と言うわけで、CRIIRADによるフランス人へのアドバイスを日本の野菜への汚染データと比較しつつ、汚染された食品の摂取に関する問題を考えてみた。

1.   49日時点でのフランスへの汚染概況

CRIIRADはフランスにおける汚染の状況について、放射能による被爆、大気中にある放射性物質の吸引による内部被爆、放射性物質に汚染された飲料水や食料品を摂取することによる内部被爆、の3種の危険は、「無視できるほどの、ごくわずかなものである」と述べている

(但し、雨水にはヨード1311リットル当たり0.244.9ベクレル含まれており、飲み水には使用しないことを勧めている。これは、小さな子どもには特にあてはまる)。

2.   フランスにおける食品への汚染とその対策

(以下、CRIIRADによる報告から要点を引用)

放射性物質に汚染された食品による内部被曝の危険は確かに大変少ない。しかし、

l  汚染が長期化する可能性があること、

l  個人個人で特定の食べ物についての好き嫌いがあること、

l  特に放射能汚染の被害を受けやすい子ども、妊婦、授乳中の女性、といった人々がいること、

を考えれば、私たちは既に無視できない危険に直面する段階にまで来ている。これを考慮して、危険な行動を避けることが望ましい。

ヨーロッパで広く適用されているEURATOMのガイドライン96/291996513日発効)によれば、年0.01ミリシーベルト(10マイクロシーベルト)を超えない放射線量であれば、「無視できる量」とみなされる(注2)。福島原発事故に関しては、食品を通じたヨウ素131の経口摂取を避けることが特に重要となる。

0.01ミリシーベルトのヨウ素131が人体に与える影響は、年齢に大きく左右される。0歳から2歳までの小さな子どもは、最も大きな影響を受ける。これらの子どもたちには、ヨウ素13150ベクレルほど摂取するだけで、0.01ミリシーベルト分の放射線量を摂取した場合と同じだけの影響がある。危険をはらんだ食品が1kg当たり1から10ベクレル、もしくはもっと多くのヨウ素131を含んでいた場合、23週間で0.01ミリシーベルトの摂取限度量を超えても不思議ではない。

放射性物質の汚染を最も受けやすい生鮮食料品は、大きく2つに分類される。

l  レタス、ほうれん草、キャベツなどの大きな葉のついた野菜

l  生乳と生チーズと食肉(屋内で飼われている家畜を除く)

つまりこれから数週間は、家庭で消費する基本的な食品群から放射性物質の汚染の影響を受けやすい食品を避けることが賢明だ。4月の間普段食べる基本的な食料品に気をつけることで、少量の放射性物質にさらされるのを防ぐことができる。生乳の代わりに長期保存の牛乳を飲んだり、生チーズやレタスやホウレンソウを食べ過ぎないようにすることだってできる。良い意味での「常識」に従って行動することで、特に子ども、妊婦、授乳中の女性、といった弱い人たちを守ることができる。

3.   日本における食品への汚染

「大きな葉がついた野菜」の例として、日本におけるホウレン草の汚染状況を確認してみよう。

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2011年4月18日 (月)

「葉野菜、生乳に注意。手と野菜を洗い、家の拭き掃除を」仏人向けIRSN公報(4月13日)

フランス放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)413日、主に日本在住フランス人を対象とした「福島第一原発事故に関する公報(3)」を発表しました。

今回の公報の大部分は、前回の公報と重なる内容となっています。すなわち、福島原発事故について「引き続き非常に深刻な事態にとどまっている」と指摘しつつ、下記について勧告しています。

l  福島周辺5県(福島、栃木、宮城、群馬、茨城)にて311日以降に収穫された葉野菜と生乳の摂取を控える。原産地や放射線量が分からない葉野菜を長期にわたって摂取することを控える。

l  福島周辺(福島、栃木、宮城、群馬)への渡航を控える。

前回の公報についてのページも参考にしてください。

http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/irsn48-cc6e.html 

その他、食品への汚染や家庭で気をつけるべき点についての言及部分をまとめてみました。

まず、食品の汚染メカニズムについて。福島原発事故による「死の灰」(放射性降下物)により、食物連鎖全体が事故直後より汚染されています。最大規模の汚染は、まず野菜の葉に堆積物が溜まり次第すぐに発生します。汚染は23日経つと牛乳に広がり、数週間後には食肉へと到達します。この最大限の汚染が起きる期間をひとたび超えると、汚染はそれなりの速度で減少してゆきます。

→汚染された葉野菜、生乳、食肉に注意しましょう。

その他IRSNは、宮城・福島・茨城・栃木の各県を中心とした特に放射性物質の被害を受けている地域に住むフランス人に対し、次の点を勧告しています。

l  乳児・幼い子どもの食事にはミネラル・ウォーターを使用する。

l  自宅の家庭菜園から収穫した野菜や、家庭で飼っている家畜動物の摂取を、最大限に控える。

l  野菜や果物を食べる前に、注意してよく洗う。

また、家庭内への汚染物質の侵入を防ぐため、下記の衛生習慣を推奨しています。

l  無意識に手が口に触れて汚染が起きないよう、ポンプ式容器に入った液体石けんで手を定期的に洗う。

l  靴を家の中に持ち込まない(特に雨の日は注意する)。

l  濡れた雑巾で床を定期的に拭く。

l  換気扇や通気口を洗う。

l  家具、カーペット、敷物の表面に定期的に掃除機をかける。掃除機の中袋を定期的に交換する。

IRSN Bulletin 3

http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN_Residents-Japon_Bulletin3_13042011.pdf

2011年4月17日 (日)

「WHO、10~20年単位で福島原発事故による癌発生を調査」ル・モンド紙(4月15日)

世界保健機構(WHO)は日本政府と共同で、今後10年から20年に渡り、福島原発事故が原因で発生した癌を探知するための大規模な疫学調査を実施する。突発的に発症した甲状腺がん、白血病、その他の癌が対象となる。

WHOはしばしば、国際原子力機関(IAEA)との関係を通じ原子力業界に対し従属的な関係にあることが非難されてきている(注1)。これに対しWHOのマリア・ネイラ公衆衛生・環境局長は、「他の国連機関との関係でWHOの独立性が脅かされることはない」と述べる。

広島と長崎への原爆投下の際の生存者に対して実施された調査(注2)は、放射能から人体を保護するための国際的な規範作りの基礎となった。今回の日本での調査はこれに並ぶものと考えられる。調査は福島原発事故への緊急対策が一段落した段階で開始する予定となっており、10年・20年単位で一世代にわたって実施される予定。

ネイラ局長は福島原発の作業員について「危険にさらされている」と指摘。また福島原発周辺の退避ゾーン設定については「科学者の提言に沿ったもの」と肯定。一方で、「ゾーンを拡大すれば多くの人々を移住させなければならず、予算上の問題と(移住させられる人々への)心理的なストレスを生み、社会的な影響が引き起こされるため」、退避ゾーンの拡大は難しく、ゾーン拡大の利点と難点を秤にかけ検討する必要があると述べた。

(一部要約)

注1.    WHO1956年にIAEAと締結した協定により、WHOは原子力分野に関わる健康問題についてIAEAからの事前承諾無しに関わることを禁じられている。チェルノブイリ原発事故の後にWHOIAEAが共同で実施した健康被害調査は、放射能による健康被害および死者数を過少評価しているとして、一部で批判されている。

      http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/whoiaea319-5f9b.html

注2.    日米が共同で爆心地から2キロメートル以内の地域でのみ実施。調査の結果は放射線の被曝限度量の基準等を定める際に広く利用されている(詳しくは右サイト参照)。 http://www.nuketext.org/kenkoueikyou.html#hiroshima

Paul Benkimoun, « L’OMS va lancer une étude épidémiologique au Japon », Le Monde, 2011.04.15

2011年4月15日 (金)

「IAEAは『原子力産業による原子力産業のための組織』」ル・モンド・ブログ(4月1日)

日本で起きている福島原発事故における危機対応において、国際原子力機関(IAEA)の不在感には際立つものがある。IAEAは3月11日以来、原子炉の冷却状況に関する進捗について遅滞なく関係各国に報告することができていないばかりか、惨事の規模を国際基準に照らして推定することすらできずにいる。

なぜなのか?

ル・モンド紙のオードレイ・ガリック記者は4月1日、自らのコラム記事を掲載しているブログにて、ステファン・ロム氏(注1)に対して行ったIAEAに関するインタビュー記事を掲載した。

ロム氏によれば、「IAEAは原子力業界と近しい関係にあるため、原発の安全基準を十分に強化することができない。」 1957年に生まれたこの組織は、実質的には原子炉の建設に関する各国への支援を行ってきた。

オードレイ・ガリック:「IAEAは原子力の安全に関する規範を守らせる役割を負っていますが」

ステファン・ロム:「ここで言う安全の規範とは、実際には各国政府と原発建設会社が自ら作った最小限の『規範』、ということなのです。 (。。。) IAEAは事実上、(規範を守らせるべき対象国に対して)全く強制力を持っていません。」

オ:「なぜIAEAは強制力を持たないのでしょうか。」

ス:「原子力産業が原子力産業のために作った組織だからです。この組織はそれぞれのメンバー国出身の専門家から成り立っていますが、小さな世界ですから、お互いが皆友達です。そしてお互いに都合が良いように動くのです。他国に対して現状をチェックする代表団を出す場合でも、後で自分たちの国に仕返しをされると困るので、あまり厳しいことを言えないのです。

2007年に地震で柏崎 刈羽 原子力発電所が被害を受けた時もIAEAは調査団を派遣しましたが、マグニチュード6.8もある地震の被害を受けたにも関わらず、同原発の安全対策の強化には結びつきませんでした。」

(注1)元「原子力監視機関」代表、仏NGO「脱原発ネットワーク」の元スポークスマン。「原子力監視機関」は原子力産業を監視するフランスの独立機関。http://observ.nucleaire.free.fr/

記事(仏語全文)はこちら http://ecologie.blog.lemonde.fr/2011/04/01/nucleaire-laiea-est-impuissante-par-nature/

(Audrey Garric, Le Monde:fr Blogs "Chroniques pour économie sociale et durable")

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2011年4月14日 (木)

「CRIIRADによる4月12日付プレスリリース」追記

4月12日付のCRIIRADによる声明(下記リンク記事参照)の日本語訳が未だホームページで公開されていないため、昨日の時点で記載しなかった要点を、下記に追記します。CRIIRADから全文の日本語訳が発表された場合は、そちらをオリジナルとして参照してください。

(CRIIRADが通常、プレスリリースの日本語訳を掲載するページ)
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_japonais/japonais.html

以下、追記の要点です。

国家原子力安全・保安院は福島原発事故に関する「レベル7」という評価を、「推定データに基づく仮の分類」としている。今回の原発事故によって、何百万人もの人が深刻な汚染被害の影響を受けている。現状把握のための測定をより迅速に行い、国民の健康を守るべきだった(特に、事故発生後の数日間、福島原発周辺におけるデータをすぐに収集しなかった点を強く非難。データに空白があるために、福島周辺および東京に至る広範囲の住民における被曝量の予測とこれらの国民を守るための事前の対応が後手に回っていると指摘)。

尚、今回の「レベル7」との分類は、国家原子力安全・保安院と原子力安全委員会が行った大気中への放射性物質の排出値の評価を元になされている。しかしこの分類に至った過程で使用された仮説や計算の詳細は公表されていない(少なくとも4月12日18時の時点では)。

CRIIRADは日本政府による現状データの把握を「不十分」と指摘している。
では何のデータが足りない、そして今すぐ必要なのか?

3月12日以来、日本政府は福島原発事故の規模に関する評価を、1号基から3号基までの原子炉ごとに行い発表している。

3月12日  1号基を「レベル4」に分類
3月18日  1-3号基をそれぞれ「レベル5」に分類

国民から見れば、全ての原子炉から排出された放射性物質を全体として把握することが必要である。原子炉ごとの評価では不十分と言わざるを得ない。

また、福島での事故の規模をチェルノブイリ事故と比較する場合には、下記の全ての点を考慮する必要がある。

1.大気中に放出されている放射性物質のうち、ヨウ素131とセシウム137以外にどのような物質が含まれるのか。
2.太平洋に流された放射性物質の推定量。
3.原子炉にある核燃料の量。事故が起きたチェルノブイリ原発・第4号基には180トンの燃料があったのに対し、福島原発には1760トンの燃料が保管されている。

最後に、放射性物質に汚染された食品を摂取することによる内部被曝の問題について。食品(葉野菜や生乳など)が放射性物質に汚染されているものの、放射線量が「基準値」の上限を下回る場合、安全と考えるべきなのか。日本政府による基準値は、EUによる基準値より多少厳しめに設定されている(注:EUは現在、日本から輸入される食品について、当初のEU基準値ではなく日本の基準を適用している)。「しかし日本・EUによる基準値はどちらもまだ高すぎる値に設定されている。」

CRIIRADによるプレスリリース(仏語オリジナル)
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/7_ines_Fukushima.pdf 
(Corinne Castanier, CRIIRAD, 2011.04.12)

参考:同じプレスリリースに関するブログ記事(4月12日掲載分)http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/7criirad412-838.html

2011年4月13日 (水)

「『レベル7』日本政府の遅すぎた対応、国民は既に被曝にさらされている」CRIIRAD(4月12日)

フランスに本拠地を置く原発被害に特化した独立専門家団体CRIIRADはフランス時間41222時(日本時間4135時)、プレスリリースを発表した。今後、和訳がHPで発表されると思われるため、急ぎ要点のみ紹介する。

まず、福島原発事故発生から1ヶ月を経過した今日、福島での事故が(それまで発表していたレベル5ではなく)チェルノブイリ惨事に並ぶ国際基準(INES)最高レベルの7レベルに相当する、と発表した日本政府の対応をCRIIRADは「45週間前に発表すべきだった情報。もっと早く調査・予測し対策を行うべきだった」と厳しく批判。

日本政府は今の時点では「レベル7」を仮の推測値としていることから、放射性物質放出の状況を一刻も早く調査し、国民が対策をとれるよう公表することを求めている。

特に、日本政府が行った福島原発周辺の住民への対応が遅すぎたと指摘。事故発生直後の状況を迅速に調査せず、既に大量の放射性物質が空中に吐き出さて数日後の321日になるまでヨウ素剤が配布しなかっため、汚染地域の住民は放射性物質を吸い込み口にしてしまっておりヨウ素剤は用をなさなくなっている。大変気がかりな状況が生まれている。

福島原発から30キロを超える地点に住む住民がこれまでに吸収した放射線量が特に心配される。これらの住民を避難させる、屋内に退避させる、もしくはヨウ素剤を配布して除染を行うといった措置が緊急に必要。

福島原発から240キロ南に位置する東京でも、315日には240BqM3の放射性ヨウ素131の粒子を記録(大気に溶けたものは含まれない)。天候により、幸い強い放射能汚染は3時間しか続かなかったが、これがもう数時間続いていた場合には、政府は放射線に特に弱い層(子ども、妊産婦、授乳中の母親など)にヨウ素剤を配布しなければならない事態だった。日本政府は短時間でそのような対応を行うことはできなかったであろう。東京以北の都市に至っては東京を上回る量の放射性物質にさらされた。

葉物野菜(ホウレン草、白菜、キャベツなど)の汚染レベルは、ヨウ素131の量が1キログラム当たり何百、何千、そして何百万ベクレル(Bq)にも至っている。福島原発から南へ45キロ地点に位置する人口345千人の町、いわき市で獲れた野菜については、1キログラム当たり69Bqの放射線が記録されている。北西へ40キロの地点に位置する人口7,000人の飯舘村では1キロ当たり254Bqの放射線が記録されている。このようなレベルの放射能汚染になると、もはやこれらの野菜は「食物」とは言えず、「放射性廃棄物」でしかない。年少の幼児がこうした野菜を23グラム飲み込むだけで、年間被曝量の上限に達してしまう。

CRIIRADは今後より詳細な報告を発表する予定。

http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/7_ines_Fukushima.pdf 

Corinne Castanier, CRIIRAD, 2011.04.12

今後、CRIIRADによる和文訳が発表された際には、下記に掲載される予定:

http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_japonais/japonais.html

参考:

CRIIRADが設定している「健康にほとんど影響がない放射線レベル」:0.01ミリ・シーベルト/年

1年の放射線量上限:1ミリ・シーベルト/年(限度値であって、受けても健康に影響が無いレベルではない、としている)

●「グリーンピース」によるCRIIRADの解説

http://www.greenpeace.or.jp/campaign/nuclear/plutonium/rokkasho/criiad_html

2011年4月12日 (火)

福島原発事故の後に横浜に寄港した仏・デンマーク商船『被曝した船員は労災に認定されるのか?』ル・モンド紙(4月10日)

4300個のコンテナを積んだマエルスク・ガロンヌ商船(フランス船籍、デンマーク人所有)は44日に横浜港に入港、大阪を経て47日にはオーストラリアへと戻って行った。

船が寄港していたちょうどその頃、マエルスク・ガロンヌ商船の本部では、船主と労働組合が日本に寄港した船員の安全装備や身の危険を巡って激しくぶつかりあっていた。労働組合は同社の社員が十分な防御装備を与えられておらず、危険にさらされていると会社を非難した。放射性物質を含んだ雲や放射線被害に強い不安を抱く船員の家族たちは寄港中の商船に電話をかけていた。

「マエルスク・フランス」で海運業局長を務めるフィリップ・ベルジュ船長は、当時日本に立ち寄った船にも関係者にも危険は無かったと述べる。2回の寄港ごとにヨウ素剤が準備されたほか、船員の放射線が計測され、その結果は全く心配のないものだった、と経営陣は主張する。

しかし、労働組合はCMAを含む仏船籍の他の商船は津軽海峡などの日本の港への寄港を避けて運行していたことを指摘している。

「マエルスク・ガロンヌに乗船していた船員が被曝していた場合、健康保険は適用されるのか。保険条項から排除されている病気に罹った場合、どうするのか。将来

急に病気にかかった場合、いったい誰が医療費を負担するのか。」

オット・ド・セーヌの労働基準監督署でも同じ問いが発せられ、人々はその回答を待っている。

「被曝が仕事場での事故、もしくは業務が原因でかかった病気と考えられるのかどうか。まだ分からない。」ベルジュ船長は書いている。

(要約)

(Philippe Barroux, « Les escales japonaises des marins du « Maersk Garonne » Le Monde, 2011-04-10)

2011年4月10日 (日)

「生鮮食品への注意、福島周辺の外部被曝量・推定地図など」フランス放射線防護・原子力安全研究所(4月8日)

フランス放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)48日、主に日本在住フランス人を対象とした「福島第一原発事故に関する公報」を発表した(以下、要点のみ要約)。

この中でIRSNは、福島原発の状況が未だに「非常に深刻な状況」と指摘。事故直後の大気の放射能汚染を通じた内部被曝の段階から、放射能に汚染された食品の摂取による内部被曝の段階に移りつつあるとして、311日以降に福島周辺5県(福島、栃木、茨城、宮城、群馬)で収穫された野菜(ホウレン草、花輪咲、牡蠣菜、小松菜、レタス、菊、キャベツ、白菜、セロリ、ブロッコリー、パセリ)と生乳の摂取を控えるよう呼びかけている。また、生産地や放射線濃度が分からない生鮮食品(特に葉野菜)についても長期間の摂取を控えるよう呼びかけている。

冒頭、315日から45日にかけての大気中の放射線物質量の推移がグラフで示されている。東京における315日時点での大気中の放射能物質ヨウ素131の濃度は240Bq/M3、セシウム13760Bq/M3だった。

福島・茨城・宮城・栃木の4県については、火急の用が無い限り渡航を控えるよう勧告している。これは、下記の年間外部被曝量の推定値を示した地図に示されている通り、特に福島の北西部地域を含む福島周辺地域において高い放射線量が記録されていることから、不要な外部被曝を避けるための措置。

今回の公報では、IRSNが米国エネルギー省国家核安全保障局(NNSA)からのデータに基づいて作成した、福島原発周辺地域における年間外部被曝量の推定値が地図で示されている(下記の「公報」の最後の方に添付されている地図)。記載されているのは外部被曝量のみで、汚染された大気や食品から受ける内部被曝量は考慮されていない(すなわち、汚染された大気や食品を摂取することによって、より高い量の被曝を受ける可能性がある)。

福島原発から30キロを超える地域でも、年間30mSV以上の外部被曝が推定されている。

IRSN「福島第一原発事故に関する公報」 48日号(仏文) http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN_Residents-Japon_Bulletin2_08042011.pdf  

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2011年4月 9日 (土)

「福島原発・仏文記事サイトFrance Media News休止―反響と否定的コメントに戸惑い」フランス・メディア・ニュース(4月7日)

福島原発事故および東北関東大震災に関するフランスの新聞・雑誌記事を定期的に翻訳・掲載していた数少ない日本語サイト「France Media News」は47日、急遽、休信宣言を行った。http://www.francemedianews.com/article-71206483.html 

同サイトが323日に配信した「福島原発は20108月から保険がかけられていなかった」(ル・ポワン誌/AFP共同、321日)

http://www.francemedianews.com/article-2010-70018735.html 

がインターネット上で議論を呼び、一部で記事の信憑性や翻訳の不備を指摘する声があったこと、当サイトが配信する記事に対し否定・批判的なメールが送付されたことによる。

同サイトは大震災直後の316日にフランス在住の翻訳者有志が中心となって配信を開始。海外メディアによる原発や地震報道に関心を持つ読者層の注目を集めていた。

http://www.francemedianews.com/article-71206483.html

France Media News, 2011.04.07

「日本政府、福島周辺地域からの野菜の出荷禁止を撤廃、諸外国の不安尽きず」ル・モンド紙(4月8日)

日本政府スポークスマンの枝野官房長官は48日、3月の末以来、高い濃度の放射能物質による汚染を原因に出荷禁止となっていた福島周辺地域産出の生鮮食品について、「福島県の乳製品と群馬県のホウレン草の出荷禁止を撤廃してほしいとの要望が強いため」、出荷禁止を撤廃する予定であると述べた。具体的な時期は発表されていない。

日本政府はこれまで、福島周辺の4県で産出されたホウレン草や福島県産の牛乳を含むおよそ10品目を出荷禁止としている。

日本からの生鮮食品の輸入については、米国、ヨーロッパ連合、カナダ、ロシア、中国、台湾、シンガポールが、これまでに禁止もしくは制限措置をとっており、その他の国では、積み荷の放射線量についての確認が行われている。

中国は福島原発の周辺地域への放射性の汚水放出に懸念を示しており、日本政府に対し海の環境を汚染しないよう呼びかけを行っている。中国の外務省スポークスマンであるホン・レイ氏は48日、「日本の隣人として当然ながら心配している。日本が国際法を尊守して海洋環境の保全に有効な手を打つことを期待する。」と述べた。中国はまた日本政府に対し、「遅滞なく、全ての情報をそのままに」伝えるよう求めている。

http://www.lemonde.fr/japon/article/2011/04/08/le-japon-leve-les-interdictions-sur-les-produits-frais-venus-des-environs-de-fukushima_1504684_1492975.html

Le Monde avec AFP, 2011.04.08

2011年4月 8日 (金)

「IAEA会合で72カ国が東京電力の責任追及。『IAEAに日本政府への強制権限なく対応に遅れ』」ル・フィガロ紙(4月6日)

国際原子力機関(IAEA)は、今週ウィーンに72カ国代表が集まって開く会合で、福島原発事故における対応の悪さから「原子力業界全体への信頼を失墜させた」として、東京電力の責任を協議する。

特に、度重なる報告書の改ざんなどの悪質な対応が問題視されている。

また天野事務局長は日本政府の対応について、「国民に必要な情報を流さず、外国からの援助をうまく調整することを怠っている日本政府に対し、IAEAは改善を強制する権限を持ち合わせておらず、事態への対応が遅れた」と認め、IAEAの権限拡大を希望している。

全文訳(フランス・メディア・ニュース)

http://www.francemedianews.com/article-w-71159312.html 

フランス語の記事

http://www.lefigaro.fr/sciences/2011/04/05/01008-20110405ARTFIG00745-l-aiea-veut-responsabiliser-les-operateurs-nucleaires.php 

Yves Miserey, Le Figaro, 2011.04.06

2011年4月 7日 (木)

「チェルノブイリ原発から200キロ。事故10年後に出会う子どもたちと食品からの汚染」スイスTSI(1998年作成)

スイスTSI1998年にドキュメンタリー「チェルノブイリ原発その10年後」を作成。チェルノブイリ原発から200キロ以上離れたベラルーシに住む人々が、事故から10年が経過した後も深刻な放射能汚染による健康被害に悩まされ続ける様子を追った。ベラルーシは、低濃度の放射性物質に長期間さらされた地域、および食品からの放射能汚染の健康被害の事例としてしばしば引用される。日本でもNHKを通じて放映。

健康被害は特に子どもに顕著に顕れた。甲状腺がんと奇形児の劇的な増加の他に、子どもの23パーセントが白内障もしくは失明。ある村では84パーセント以上の子どもたちに不整脈が見られ、心筋梗塞の予備軍となっている。チェルノブイリ事故後のベラルーシでは、青少年の心臓疾患の増加顕著に見られる。

物理学者のネステレンコ教授は、ベラルーシの汚染地域に自ら「食料放射線管理センター」を設置。計測器を携えて正確な汚染の状況を調べるとともに、事故の後も汚染された野菜を食べ続け、放射能に身体を汚染され続ける人々に、自らの健康を犠牲にして知識を伝える活動を行っている。

「およそ80パーセントの子どもが、胃炎や潰瘍を患っています。特にひどいのは12歳から15歳の子どもたちです。胃の粘膜が萎縮し、まるで70過ぎの老人のようになっています。つまり放射線の影響を受けた子どもたちは、命の炎を急速に燃やし尽くし、将来病気になることが確定しているんです。」

http://famasaki.com/japan/20110401010746/ 

TSI, 1998

動画「チェルノブイリ原発その10年後」

(上記のブログには「その2」「その3」の一部が引用されている。)

チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染 その1

http://www.veoh.com/watch/v20916281en3xhCsQ 

チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染 その2

http://www.veoh.com/watch/v20916282PsShZj7R 

チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染 その3

http://www.veoh.com/watch/v20916285FP2rEwSk 

チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染 その4

http://www.veoh.com/watch/v20916290fz7rN2An 

参考:「チェルノブイリの捨てられた子どもたち」ベラルーシの子どもたち、その後(写真&奇形児の発生についての仏語データ)

http://www.dissident-media.org/infonucleaire/enfants_malades.html 

2011年4月 6日 (水)

「東京電力、福島原発周辺の10村に2000万円の『慰安金』」ル・モンド紙(4月5日)

福島原発の事故を収拾する努力が続けられる中、同発電所の運営責任者である東京電力は45日、住民が未だ自宅から逃げられずにいる福島原発の周辺10村に対し、それぞれ2,000万円の「慰安」手当てを支払うと発表した。

東京電力への高まる怒りから、浪江町(福島原発より20キロ以内)は「東京電力を批判する自由を失わないために」と慰安金の受け取りを拒否している。

また、人口2万人以上にのぼるため、2000万円の慰安金は一人当たり1000円にも満たず、今回の惨事の犠牲になっている住民の生活の足しにはならないと言う。

http://www.lemonde.fr/asie-pacifique/article/2011/04/05/des-indemnites-de-consolation-pour-les-villes-voisines-de-fukushima_1503408_3216.html

(Le Monde avec AFP, 2011.04.05)

参考:浪江町の情報

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%AA%E6%B1%9F%E7%94%BA 

「福島原発事故『処理人』の放射能に汚染された日常」ル・モンド紙(4月2日)

42日付けのル・モンド紙は4-5ページの紙面を割いて「日本における福島原発の惨事」を特集。600名の原発作業員が、必要な防御機材を与えられないままに危険な業務に従事している現状を伝えた。

福島原子力発電所の中で働く約600名の事故「処理人」の業務環境を言葉にすることは容易ではない。彼らは、気づかぬ間に進行し、死をも招きかねない放射能の危険に常にさらされながら、刻一刻と状態が悪化する原発より発生する無数の問題を解決する任を負っている。

強度の放射線と耐えられないほどの暑さにさらされながら、既に17名の作業員が深刻な被曝を受けた。331日には、法律に反して、自らが受けている放射線量を知るために必要な放射線の測定器を身につけず作業をしていた作業員がいたことが明るみになっている。

東京電力は以前、作業中の原子炉内における放射線濃度を作業員に伝えるのが遅れたことを認めており、これによって、324日には3名の作業員が深刻な放射能汚染の犠牲になったと考えられる。

これらの事実は、東京電力の技術者(ほぼ全てが下請け会社の作業員)、消防士、自衛官の日常、というよりは、これらの人々が生き延びなければならない悲惨な状況を、端的に示している。329日、横田一磨・原子力保安検査官は作業員の一日の様子を明らかにした。

作業員は週交代制で、朝食と夕食の2食のみ、朝6時に起床し夕刻まで働く。322日まで、作業員は一日1.5リットルの水しか与えられていなかった。風呂を望むことはできず、アルコールで手を拭き取って済ませている。

作業員は毎時2から3ミリ・シーベルトの放射線が注ぐ会議室や廊下で、被曝量を下げるための鉛入りの毛布にくるまって眠る。フランスで一般の人がさらされても問題ないと認められている放射線濃度は、一年に1ミリ・シーベルトである。

携帯電話は使えず、作業員の多くは福島原発から遠く離れた被災者用の避難所に家族を残してきているにも関わらず、家族と連絡を取ることは禁止されている。

高い濃度の放射線にさらされた作業員は、血液細胞を再生する身体機能を失うなどの深刻な健康被害に遭う危険に直面している。東京の複数の病院は、後日必要に応じて作業員への輸血を行うため、各作業員の造血用血液サンプルを要求した。

福島原発の周辺では警察官が311日の津波による被害者の遺体を防護服を着て収集にあたっている。あちこちに残された遺体は、放射線濃度が高すぎて焼却することができない。煙や灰に放射性の分子が残留するためだ。

Philippe Mesmer, Le Monde, 2011.04.02

チェルノブイリ大惨事についての映画「土曜日」、ロシアで公開「福島の悲劇でひどくリアルに」(3月31日)

チェルノブイリ原発の大惨事に関する初めてのフィクション映画、「土曜日」(原題V soubbotou」、Alexandre Mindadze監督、ロシア・ウクライナ・ベラルーシ・ドイツ合作)が324日にロシアで行われたチェルノブイリ事故25周年行事の中で公開された。

チェルノブイリにおける原発事故は1986426日に起きた。現地の雑誌Expertは福島で原発事故の悲劇が起きたことで、映画は突如としてひどくリアルになった」と論評。

Courrier International no. 1065, 2011.03.31-04.06

2011年4月 4日 (月)

「東京都民、呼吸から被曝中。市販のマスクは放射性ヨウ素に用をなさず」CRIIRAD(3月30日)

フランスの団体CRIIRADは3月30日、東京都内その他で計測されている放射性物質の濃度に基づき緊急声明を発表。

空気中に含まれる高濃度の放射性物質と放射性降下物(塵)が現在も東京や仙台を含む広範囲に降り注いでいると警告、日本国民への健康被害を防ぐため緊急措置をとるよう、日本政府と国際社会に強く求めた。

特に、呼吸で放射性物質を体内に取り込む内部被ばくについては、呼吸をする全ての人がその影響のさらされており、市販のマスクでは放射性ヨウ素を防ぐことはできないと指摘している。

<3月30日に出されたCRIIRADによる声明の全文>

http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon/en_japonais/Communique_03-30_japonais.pdf

<関連ブログ記事>

http://popopopoon591.blog60.fc2.com/blog-entry-382.html

注)被爆すると甲状腺がんや白血病などのがんに罹る。チェルノブイリ事故の後、フランスを含む多くの周辺国住民が甲状腺がんの被害者となり、今日に至っている。

注)CRIIRADはチェルノブイリ事故の際に被爆被害を受けたフランス人関係者が中心となって結成した組織。大学の研究者を含め幅広い専門家を揃えている。福島原発での事故発生後、ホームページを通じて日本語でも情報を提供。

(Corinne Castanier, CRIIRAD, 2011.03.30)

「事故の後、36時間後には住民全員が避難していた。情報を隠さないことが重要だ。」元チェルノブイリ作業員(3月26日)

ル・モンド紙は3月26日、25年前のチェルノブイリ原発事故の際に自ら志願して事故の処理にあたった450人の若い「掃除人」の1人、ブラディミル・ナウモフ氏(56歳、事故当時30歳)へのインタビューを掲載した。

ブラディミルは、「福島原発での放射能の汚染除去作業に力を貸して欲しいと言われたら、いつでも力を貸すよ」、と述べる。

ブラディミルのようにチェルノブイリ事故の後、1986年の春から1987年の秋までの間に汚染地域で業務を行った労働者、消防団員、兵士、医療関係者は計60万人にのぼる。

そのうち、50名の消防士と技術者が事故の数ヶ月後に亡くなり、2万人が数年後に亡くなった。また、20万人の人が病気にかかった。

450人いた若い作業員のうち、100人は死に、350人は体を蝕まれ仕事ができなくなった。

「俺たちは若かった。どんな危険があるのか知らなかった。(。。。)放射能は銃弾とは違う。目に見えないし音もしない。でも体への影響は後でやって来た。」

そんなブラディミルがこのような言葉を残している。「事故の時、炉心が爆発した。モスクワの政府にすぐに連絡が行った。でも、政府は何も曖昧にはしなかった。爆発からたった36時間後には、チェルノブイリ原子力発電所の町プリピアットの住民全てが脱出していた。ほら、情報の透明性を保つことが大事なんだ。問題を隠すのは、最悪だよ。」

(Marie Jégo, Le Monde, 2011.03.19&26)

東京の空気、チェルノブイリ事故後の仏以上に汚染 ~甲状腺がん大量発生の予感~

いつも御愛読ありがとうございます。

先日の331日に東京で記者会見したフランスの原発専門家集団CRIIRADによるデータを読んでいて、福島原発事故が勃発した直後の東京での放射能汚染があまりにもひどいのに卒倒しそうになりました。

どれだけの人たちが、この後癌で苦しむことになるんだろう。

これから生まれてくる赤ちゃんは、動物たちは、どうなるんだろう。

私たち、このまま東京に住めるんだろうか。

と言う訳で、急きょ複数のフランス語の記事にあたって分析をまとめてみました。

どうぞ。

1. チェルノブイリ原発から2600キロの地点で甲状腺がんが大量発生

チェルノブイリ原発事故の直後に空中に排出された多量の放射性物質により、多くの甲状腺がん患者、奇形児、白血病の子どもたちが生む悲劇を経験したフランス南西部。この地域は、チェルノブイリから約2600キロの距離に位置する。

当時、フランス以外のヨーロッパ諸国は、即座に汚染された野菜や果物の摂取に注意を促す警告を発し、内部被ばく防止のためのヨウ素剤を国民に配布。

しかし当時のフランス放射線防護中央局(SCPRI)局長をつとめていたピエール・ペルラン教授が「フランス国内では放射性物質による健康への危険はない」と宣言、現状を放置。甲状腺がんを生む深刻な被害をもたらしたとみられている。ぺルラン教授は、国民に対し誤った情報を流し、深刻な健康被害をもたらした罪で、2002年以来パリ法廷に起訴されている(詳しくは、下記の記事参照)。

http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/41-cc0e.html 

今日、「フランス甲状腺患者の会」は当時のぺルラン局長の対応を「農業従事者などに配慮したものだった」と解釈している。

2. 「チェルノブイリ後のフランス」と「福島原発事故の後の東京」を比較

フランスでも日本でも、公式に発表される放射性物質の計測値はヨウ素131とセシウム134137に関するものがほとんどだ。しかし、放射性医学の専門家Dr.ジャック・ギエによれば、チェルノブイリ事故の直後、事故の現場から2600キロ離れたフランス南西部で検出されたこれらの放射性物質の空気中濃度は比較的低かった一方で、「ヨウ素132」とその仲間「テルル132」の高い放出量が記録されていた。

Dr.ギエは、フランス南西部でその後多く発生した甲状腺がんの被害は、これら2つの物質に起因する可能性が高いことを指摘している。

http://www.asso-malades-thyroide.org/detail_asc.php?id=1 

もう一つ気になるのは、チェルノブイリとフランス南西部の距離だ。放射性ヨウ素は2600キロの距離を一気にかけぬけ、呼吸や野菜・果物への付着によって住民たちの体内に取り込まれていた(下で使われている「Bq(ベクレル)」とは、放射性物質から出される放射能の強さを示す単位)。

<チェルノブイリ事故の後のフランス南西部>(事故発生日:426日、データ計測日:51日~3日の一日平均)

http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon/11-03-17-CPtokyo.pdf 

セシウム137    0.30.9 Bq/M3

ヨウ素 131   0.64.2 Bq/M3

<福島原発事故の直後の東京>(事故発生日:311日、データ計測日:315日~16日平均)

セシウム137     3.2 Bq/M3

ヨウ素 131     14.9 Bq/M3

<現在の東京>(データ計測日:331~41日)

セシウム137     0.12 Bq/M3

ヨウ素 131     0.11 Bq/M3

311日から41日までのデータはこちら)

http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon/J3-Courbes.pdf

(データ:東京都立産業技術研究センター収集/CRIIRAD分析)

地震・津波の後に起きた事故の直後、東京に降り注いだ放射性物質濃度が、チェルノブイリ事故の後のフランスよりずっと高かったことが分かる。また、今もかなり高い濃度が続いている。

331日に記者会見を行ったフランス原発専門家集団CRIIRADによれば、312日以降、福島から100キロの距離にある仙台市、240キロの距離にある東京を含め、広範囲にわたる地域に多量の放射性物質が排出されていることが推測されている。特に、福島原発から20キロ・30キロの距離で自宅から出られないでいる人々、仙台市を始めとする近隣の住民は更に高い濃度の放射性物質にさらされている。

CRIIRADは、「ただちに東京を含む広範囲の住民にヨウ素剤の配布して内部被ばくを防ぐとともに、福島原発から30キロの範囲で自宅から動けないでいる住民達をただちに救出するよう、日本政府に対応を求める緊急声明を出し続けている。既に記者会見より3日以上が経過しているが、日本政府が対応する様子は見えない。

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2011年4月 3日 (日)

「汚染された野菜・果物を売り続ける被災地の農民」ル・モンド紙(4月1日)

3月30日、栃木県庁で被災した農牧畜業関係者を支援するための野菜と果物の即売会が行われ、盛況を収めた。栃木では3月23日に基準の48倍もの放射能汚染が見つかりホウレンソウやブロッコリーなどの野菜が出荷禁止になっている。

政府スポークスマンである枝野官房長官は、「野菜については短期間の消費であればすぐには健康への被害はない」と発言しているが、その後に「でも、残念ながらこの事態は長く続きそうだ」と述べている。野菜の安全性への心配から、生鮮食品の価格は下がるばかりだ。

首相府が管轄する食品安全委員会は、現在年間5ミリシーベルトに定められている放射性物質の上限濃度が「厳しすぎる」として、その緩和を検討している。1984年、国際放射線防護委員会は上限を5ミリシーベルトに定め、原発事故の次の年については50ミリシーベルトを上限としていた。1992にはこれを10ミリシーベルトにまで引き上げている。これは水1リットル当たりに含まれるセシウムの上限400ベクレル、食品については1キロ当たりに含まれるセシウムの上限1000ベクレルに相当し、日本がこれを採用する可能性がある。

多くの関係者は、今回の基準緩和を地元の国会議員に支えられた農業関係者への要望にこたえる措置であると見ている。しかし、消費者の食の安全を十分確保することが必要である。

(Philippe Mesmer, Le Monde, 2011.04.01)

「福島原発周辺、数年間は居住禁止に」フィガロ紙(4月1日)

「日本の米どころ」である東北地方の人々は、自らの土地が長期に渡って汚染され続けるだろう、という事実に少しずつ気づき始めている。

「福島周辺には立ち入り禁止区域を設けざるを得ない」

日本人の専門家たちは表立って認める。

しかし、どの区域が立ち入り禁止となるのか、については事故の終結を待たねばならない。その影響は、ベルギー王国に相当する東北地方の経済に致命的だ。

(Régis Arnaud, Le Figaro, 2011.04.01)

「チェルノブイリ事故後の野菜・果物への放射能汚染を過少評価した仏政府責任者、起訴」フィガロ紙(4月1日)

チェルノブイリ原発事故が起きた1986年4月26日当時、フランス放射線防護中央局(SCPRI)局長をつとめていたピエール・ペルラン教授(88歳)は、チェルノブイリ事故が起きた直後の4月30日から5月5日にかけ、「フランス国内では『死の灰』(放射性物質)による汚染は無く、健康への影響は無い」と発言、「深刻な嘘をつき」国民の健康を害したかどで、2002年より起訴されている。ぺルラン教授の件は3月31日にパリ法廷で協議され、9月7日に最終決定がなされる予定。

3月31日、傍聴席に座った「フランス甲状腺がん患者協会」のシャンタル・ガルニエール代表は次のように述べた。

「私たちは怒り心頭だ。政府の嘘はもう終わりにしてほしい。今日フクシマで何が起きているか、本当に分かっているのか?」

「私たちはぺルラン教授が嘘をついたことに怒っている。チェルノブイリ惨事の後に国民が野菜や果物を食べないようにすべきだったのに。」

3700名の甲状腺がん患者が参加する同協会のガルニエール代表(61歳)は、1987年に甲状腺がんの診断を受け、今日に至る。

注:SCPRIを管轄するのはフランス保健省。

(Anne Jouan & Marie-Amélie Lombard-Latune, Le Figaro, 2011.04.01)

2011年4月 2日 (土)

「東京電力の清水正孝社長、恥を語る『俺、孫たちの目をまっすぐに見れないよ』」一コマ漫画/ル・モンド紙(3月31日)

P40100083月31日のル・モンド紙は、煙を吹く原子力発電所を背景に、三つ目の子どもの前でうつむきながら涙を流す、東京電力の清水正孝社長の姿を1面の一コマ漫画で掲載。

「俺、孫たちの目をまっすぐに見れないよ。」と語らせた。

同日の紙面は、東北大震災の5日後に体調不良で入院、1週間の間休業し、政府による緊急委員会への参加も見合わせて副社長に任を負わせた66歳の社長の態度が、「日本のメディアに非常に強く批判されている」と論評抜きで伝えた。 

(AFP/Le Monde, 20110331)

2011年4月 1日 (金)

「原発被害に沈黙するWHO:IAEAの同意なしに発言できず」ル・モンド紙(3月19日)

日本で原発事故が起きて以来、世界保健機構(WHO)は驚くほど沈黙を守っている。まるで、日本政府と国際原子力機関(IAEA)からの情報を繰り返すだけで満足しているかのようだ。これは、WHOが1959年以来、IAEAからの合意がなければ原子力に関する健康問題に着手しないという協定を結んでいることに起因する。

WHOは3月14日に放射線や被爆した際の対応について文書をまとめたが、日本についてはたったの2パラグラフしか記載しなかった。更には、福島での原発事故が国民の健康に与える被害は少ない、とのみ記されている。

3月17日に改訂された同じ文書では、福島周辺で引き起こされている健康への脅威に触れず、「日本政府が提案した行動」を適切として承認している。

IAEAは核兵器以外での原子力の利用を推進するロビー機関である。従って、IAEAとのこうした関係は、WHOが独立した専門機関として機能するのを妨げている、と多くの関係者は考えている。

2つの機関が結んだ協定は、「両機関の利益に関する活動に着手する場合には、もう一方の機関の同意を得なければならない」と定めている。これは大概の場合、IAEAに有利に働く。

たとえば、2005年9月にWHOとIAEAが合同で取りまとめたチェルノブイリ原発事故の被害状況では他の多くの調査結果が無視され、死亡者50名、甲状腺の癌で亡くなった子ども9名、死亡に至る癌にかかった者は4000名、と結論がなされた。他方、2010年2月にニュー・ヨーク科学技術大学が実施した調査では、チェルノブイリ事故の関連で亡くなった人は98万5千人にまでのぼる、とされている。

アリソン・カッツは以前WHOの環境課に勤めていた。「WHO内でも、チェルノブイリの被害が過少に見積もられていることに対して落ち着かない気持でいる者が何人もいる」と言う。そして、日本のケースについてもまた同様のことが起こるのではないかと心配している。「IAEAが健康や退避の全般について決めている。」WHO本部には放射線防護の専門家が現在4名しかいない。

2007年には「独立したWHOを目指す会」が結成され、カッツ氏を含むメンバーが毎日WHO本部の近くでIAEAとの協定廃止を求めてデモを行っている。WHOは、ル・モンド紙がIAEAとの関係について質問したのに対し、これまでのところ回答を拒否している。

(Agathe Duparc, Le Monde, 20110319)

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