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2011年6月18日 (土)

「フランスが語る『原子力の真実』」(後編) 「原子力発電は『安い』か?フランス原子力業界とフランス国家が直面する財政破綻の危機」ル・ヌーベル・オプセルヴァテール(6月2日)

ドイツとスイスに続くイタリアの「脱原子力」方針決定、アレバ社の社長交代。
6月10日に「フランスが語る『原子力の真実』」の前編、「フクシマ」後に再燃する「国策」原子力への恐怖」を掲載してから既にいろいろなことが起きました。少し遅くなりましたが、後編をお送りします。(少し長めです。ゆっくりお読みください。)

(前編を読んでいない方はこちらからどうぞ。この記事の元になる本を書いた著者の紹介などを含め掲載しています。)
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/62-dba6.html

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「フランスが語る『原子力の真実』」(後編)

1.フランス電気公社(EDF)の経営破綻:利益1兆円、借金4兆円

フランス電気公社(EDF)は野心的な事業に資金をつぎ込んだために経営困難に陥り、深刻な事態に直面している。

2010年1月1日、同社の粗利益(税金等を差し引く前の利益額)175億ユーロ(約2兆円)に対し、負債は425億ユーロ(約5兆円)、粗利益の2.4倍にまで膨らんだ。イギリスの配電線網事業(約67億ユーロ、約7700億円)を手放したにも関わらず借金は大きく減らず、2010年末の時点でもまだ344億ユーロ(約4兆円)の負債が残っている。


●2010年末時点での 粗利益:約1.1兆円 vs 負債:約4兆円


更に、フランス電気公社グループ全体の利益は2009年の39億ユーロ(約4.5兆円)から2010年の10億ユーロ(約1.1兆円)にまで落ち込み、1年で73.9%減少した。背景には、9.1億ユーロを投資した米国コンステラション・エネルギー社との関係解消がある。又、2010年末にドイツの電力会社EnBW社に保有していた同社の45%にのぼる株を買い戻されたことでも辛酸を舐めた。

イタリアでは更に困難な事態に陥った。フランス電気公社はイタリアで現地の子会社を通じ4基の原子炉建設を計画したが、政府による1年間の原子力利用停止の決定により身動きが取れなくなった(そして、この記事が書かれた後、同国での原子力利用の廃止決定により、この計画は断念に追い込まれている)。
これはまだ「フクシマ」が勃発する前の話である。

フランス電気公社へのフィッチ社による格付けは、同社が抱える多額の負債によりA+からAA-に下降した。株式市場は同社の財政状況が今後改善するとは見ていない。2011年1月1日から4月8日までの間に同社の株価は10%下落、過去3年間では53%の下落を記録している。

2.原子力発電の真実のコスト:原子力による電気料金、40%値上げ

フランス電気公社が2011年2月に発表した電気の売却価格は、メガワット(MWh)1時間当たり42ユーロ(約4800円)である。原子力発電が自然エネルギーを初めとする他の発電方法よりコストが低いことを演出するため、原子力発電にかかるコストはこの数年間、徹底して実際よりも低く見積もられて来た。

しかしこのコストの過少評価は今日、フランス電気公社の経営にはね返る結果となっている。したがって他の電気会社がフランス電気公社から電気を買い取る価格を設定するにあたり、同社は原子力発電所の更新料を上乗せし、電気価格は MWh当たり42 ユーロ(約4800円)から55ユーロ(約6300円)以上にまで上昇することとなった。

福島での原発事故の後、全ての原子力発電コストは従来より更に高くなっており(注)、実際には55ユーロ(約6300円)ではなく60ユーロ(約6900円)に近い数字になることが見込まれている。


●これまでの電気料金:4800円/MW→原発関連コストを含めた今後の「本当の」電気料金:6900円/MWh(40%以上の値上げに相等)

3.地下に隠蔽された爆弾:放射性廃棄物

長期間に渡り高度の放射能を出し続ける危険な廃棄物を地下に埋めていることによる高い代償もまた、問題になっている。これらの放射性廃棄物の処理にかかる費用は、150億〜350億ユーロ(1.7兆〜4兆円)と見られている。

この数字はどのように算出されたのだろうか。廃棄物の処理費用は基本的にはフランス電力公社とアレバ社の負担となる(フランス電力公社は長期に渡る放射性廃棄物の処理費用の80%を負担することになっている)。自らの利益に関係することとなるや否や、フランス電力公社はより現実的なコスト計算を行い、費用を電気料金に上乗せすることに決めた。

フランス電力公社は放射性廃棄物の処理にかかる予算を、これまで63億ユーロ(約7200億円)分しか見積もって来なかった。実際には最大350億ユーロ(4兆円)かかるとすれば、短期的に問題が生じるのは明らかである。放射性廃棄物にかかる問題解決を先延ばししてきたことにより、フランス電力公社の財政問題とフランス国家の政策上の問題が同時に生じている。最終的にはフランス電力公社が最終的に機能不全に陥り、我々国民の負担になることを想定せざるを得ない。廃棄物の処理費用に加え、廃炉の費用(250億ユーロ、約2.9兆円)を計算に入れれば、国民の負担は更に跳ね上がる。


4.アレバ社の将来は?

アレバ社は資金を外部公開したものの、S&Pによる長期的な信用評価は「問題が起きないよう監視を行う」という内容にとどまった。同社への評価はBBB+にとどまっており、今後更に下がる可能性がある。

アレバ社が持つ資金250億ユーロ(約2.9兆円)のうち自社資金は9億ユーロ(約1000億円)に留まっており、キャッシュフローもマイナスだ。こうした状況から、同社は将来の資金繰りが苦しくなることが見込まれる。このように、福島原発事故が起きる以前から、アレバ社は既に社内での問題により苦しい状況にあった。福島原発事故の煽りを受け、同社の経営状況は更に悪化することが見込まれる。

同社がこれまで力を入れて来た使用済み核燃料(プルサーマル、Mox燃料)についても、これを使用する原子力発電所で福島でのような事故が起きた場合の危険を考えると(注2)、今後需要が減ることが予想される。そうなった場合、アレバ社は在庫の使用済み核燃料をどうするつもりなのか?全ては霧の中だ。他国に民主主義を説教する国がこのような状態にあるのが「普通」と言えるだろうか(注3)。


5.廃炉費用の過小評価

2005年に我が国が見積もった国内58カ所の原子力発電所の廃炉するにかかる費用は、380億ユーロ(約4.3兆円)だった。これは少なめに見積もった数字と言える。原発の数がフランスの3分の1しかないイギリスでも1040億ユーロ(約12兆円)を見積もっており、原発が11しかないスウェーデンでも190から410億ユーロ(約2.2兆〜4.7兆円)の間で廃炉オプションを準備している。他国の計算方法をフランスに当てはめた場合、廃炉の費用は1000億〜2000億ユーロ(約11.4兆〜23兆円)にものぼる。

使用が見送られたフランス国内のブレニリス原子力発電所を例に取ると、これ1件の廃炉にかかる費用は5000万ユーロ(約57億円)、当初見積もりの10倍にもなった。この負担は今後、廃炉費用に責任を持つ立場にある我が国政府とフランス電力公社の財政に大きくのしかかってくる。


(注)原子力発電への市民の目が厳しくなるにつれ、電気会社はより正確な検査や適切な安全対策の実施を促されることになる。これによるコストの上昇を指していると見られる。

(注2)福島原発第3号基に使用されており、3月11日の事故によりプルトニウムの流出が指摘されている。Mox燃料は通常の20倍の放射線量を発するアルファ波を生じさせる放射性物質を排出する。こうした放射性物質を内部被曝で体内に取り込んだ場合、通常は二度と体外に取り出すことができないとされる。今後各地の原子力発電所でMox燃料の使用が計画されている。

(注3)アレバ社の最大の株主はフランス政府で、株全体の約90%を保有している。社長の任命権は大統領にある。


Guillaume MALAURIE, « Après Fukushima...un Tchernobyl financier ? » Le Nouvel Observateur, 2 juin 2011 – N°2430

http://tempsreel.nouvelobs.com/actualite/planete/20110601.OBS4327/nucleaire-francais-menace-d-un-tchernobyl-financier.html(仏語、要約のみ掲載)

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