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2011年7月30日 (土)

「情報が足りない」〜牛肉汚染に関する情報不足で高まる国民の不信/ルモンド紙(7月28日)

汚染情報の周知と対応の遅れで牛肉価格が60%下落(注1)

福島原発による放射能汚染、および牛肉を初めとする食物連鎖全体の放射能汚染に関する情報の不足が、日本国民を不安にさせている。また、政府による対応の遅れと関係者間の不協和音が国民の不信をさらに増幅させている。

日本政府は7月26日、牛肉産業関係者に対し、放射性セシウムで汚染された干し草を摂取した牛の全頭買い上げと焼却を指示した。多くの日本人がこうした政府の対応を「非常に遅い」と感じている。農林水産省によれば、16県で生産された計2906頭の牛が汚染のための買い上げ・焼却の対象となっており、一部はすでにイーオンなどの大手食品店で販売済みとなっている。政府の試算では今回の措置にかかる費用は20億円にのぼるとみられ、政府は肉牛産業への支援を行うものの補償は福島原発の事業主である東京電力に請求するよう求めている。

今回の決定は7月8日に初めて福島県で基準値を超える放射性セシウムで汚染された肉が発見されたことを受けたものだが、政府が福島県に対し出荷命令を出したのは7月19日になってからのことだった。なお、他の複数の県が牛肉について組織的な検査を実施することを決めている。

こうした状況を受け牛肉価格は60%以上下落。消費者が食品の安全性に対して抱き続る不安を証明する形となった。


「県任せ」検査体制の限界

東北地方の食品生産物は通常、人口350万人をかかえる東京首都圏の必需品だ。しかし、多くの人が3月に起きた原発事故当初から東北地方の生産物の購入を拒否している。当然ながら不安は母親層で特に強く、「アエラ」が6月に行った調査では、東京に住む母親の76%が買い物の際に食品の安全に注意を払っているほか、69%が子どもに水道水を与えていない。

こうした消費者の不安は、中央省庁が食品の安全性検査を実施せず、県に責任を任せる現在の政策が持つ限界を示している。政府は福島での原発危機が発生して以来、しばしば「健康に大きな影響はない」とのコメントとともに、その都度、各々の食品について出荷禁止の措置をとって来た。また、政府による出荷禁止命令が出されても、これに反発する静岡県の川勝平太知事のような地方政治家もいる。売り上げを心配する生産者の中には、国民への「支援」を求め産直キャンペーンを組織する人もいる。


現行調査の限界〜文科省の海洋汚染データ「検出限界以下」でも汚染され続ける魚介類

さまざまな情報が入り乱れ、消費者への混乱を招く中、新たな危険を警告する声が発せられている。7月25日、日本海洋学会は政府に対し、海水の汚染に対しより厳しい規制をしくよう求める声明を行った。同学会によれば、海水に含まれる放射性物質が少量であっても、周囲濃度の100倍以上の濃度の汚染物質を蓄積する魚介類がいることから、重大な食品汚染を招く可能性がある(注2)。こうした汚染を放置すれば、食物連鎖全体が汚染されてしまう。


消費者の信頼回復には情報の透明性が不可欠

これらの問題には、さらに現在市場で出荷されている食品に対する汚染検査の問題が付け加わる。福島県郡山市に住む本田さんは、「政府はサンプル検査しか実施しない」と指摘する。「(消費者は)みんな(政府の汚染検査の結果を)信用しないから、(福島周辺以外の)他の産地のものを買ってるよ。」

「他の産地」とは、主に西日本と海外をさす。米国牛肉産業の関係者は今年の日本での牛肉販売について、前年比で33%の売り上げ増を見込んでいる。

こうした状況を受け、「ジャパン・タイムス」紙は7月25日、「政府は他の農畜産物についても詳細な放射能検査を実施することが必要」と指摘、「国民が日本の生産物への信頼を回復するためには、(汚染情報についての)完全な透明性をはかることが最善の策であることを政府は認識すべき」としている。


(注1)この見解については賛否が分かれるところがあると思われますが、原文に従って訳しています。
(注2)日本海洋学会は、文部科学省が取りまとめている海洋の放射能汚染に関する検査手法に関し、現行より詳細なデータを得るための手法を採用するよう求めてきたが、いまだ受け入れられるに至っていない。以下が提言の要旨。

<日本海洋学会による提言(抜粋)>
「現在,(…)文部科学省において取りまとめて公表される海域モニタリングにおいては5月以降の沖合海域のデータの大多数がN.D.(検出限界以下)とされています。しかしながら,検出限界以下とされるレベルでの数値の大小は,放射能汚染の拡がりに関して国内外に公開すべき重要な情報であると共に,海産食品への不安を取り除く上でも必要性が高い情報と考えられます。検出限界を下げることのできる高感度な分析手法は,事故前の海洋放射能研究において用いられてきており,事故後の国内・国外の研究機関による研究活動としての海域調査でも一部がこのような手法で実施されております。広範な海域について速やかな情報が公開されるべきであるという観点から,当ワーキンググループでは,政府の行うモニタリングにおいてもこうした手法を導入すべきであると考えております。」

全文はこちら http://www.kaiyo-gakkai.jp/main/2011/07/post-157.html

記事出典(小見出しは訳者が追記しました)
(Philippe Mesmer « Japon : la diffusion des informations sur la radioactivité des aliments reste parcellaire », Le Monde 2011.07.30)
http://www.itamaraty.gov.br/sala-de-imprensa/selecao-diaria-de-noticias/midia-internacional/franca/le-monde/2011/07/28/japon-la-diffusion-des-informations-sur-la

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