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2011年7月

2011年7月30日 (土)

「情報が足りない」〜牛肉汚染に関する情報不足で高まる国民の不信/ルモンド紙(7月28日)

汚染情報の周知と対応の遅れで牛肉価格が60%下落(注1)

福島原発による放射能汚染、および牛肉を初めとする食物連鎖全体の放射能汚染に関する情報の不足が、日本国民を不安にさせている。また、政府による対応の遅れと関係者間の不協和音が国民の不信をさらに増幅させている。

日本政府は7月26日、牛肉産業関係者に対し、放射性セシウムで汚染された干し草を摂取した牛の全頭買い上げと焼却を指示した。多くの日本人がこうした政府の対応を「非常に遅い」と感じている。農林水産省によれば、16県で生産された計2906頭の牛が汚染のための買い上げ・焼却の対象となっており、一部はすでにイーオンなどの大手食品店で販売済みとなっている。政府の試算では今回の措置にかかる費用は20億円にのぼるとみられ、政府は肉牛産業への支援を行うものの補償は福島原発の事業主である東京電力に請求するよう求めている。

今回の決定は7月8日に初めて福島県で基準値を超える放射性セシウムで汚染された肉が発見されたことを受けたものだが、政府が福島県に対し出荷命令を出したのは7月19日になってからのことだった。なお、他の複数の県が牛肉について組織的な検査を実施することを決めている。

こうした状況を受け牛肉価格は60%以上下落。消費者が食品の安全性に対して抱き続る不安を証明する形となった。


「県任せ」検査体制の限界

東北地方の食品生産物は通常、人口350万人をかかえる東京首都圏の必需品だ。しかし、多くの人が3月に起きた原発事故当初から東北地方の生産物の購入を拒否している。当然ながら不安は母親層で特に強く、「アエラ」が6月に行った調査では、東京に住む母親の76%が買い物の際に食品の安全に注意を払っているほか、69%が子どもに水道水を与えていない。

こうした消費者の不安は、中央省庁が食品の安全性検査を実施せず、県に責任を任せる現在の政策が持つ限界を示している。政府は福島での原発危機が発生して以来、しばしば「健康に大きな影響はない」とのコメントとともに、その都度、各々の食品について出荷禁止の措置をとって来た。また、政府による出荷禁止命令が出されても、これに反発する静岡県の川勝平太知事のような地方政治家もいる。売り上げを心配する生産者の中には、国民への「支援」を求め産直キャンペーンを組織する人もいる。


現行調査の限界〜文科省の海洋汚染データ「検出限界以下」でも汚染され続ける魚介類

さまざまな情報が入り乱れ、消費者への混乱を招く中、新たな危険を警告する声が発せられている。7月25日、日本海洋学会は政府に対し、海水の汚染に対しより厳しい規制をしくよう求める声明を行った。同学会によれば、海水に含まれる放射性物質が少量であっても、周囲濃度の100倍以上の濃度の汚染物質を蓄積する魚介類がいることから、重大な食品汚染を招く可能性がある(注2)。こうした汚染を放置すれば、食物連鎖全体が汚染されてしまう。


消費者の信頼回復には情報の透明性が不可欠

これらの問題には、さらに現在市場で出荷されている食品に対する汚染検査の問題が付け加わる。福島県郡山市に住む本田さんは、「政府はサンプル検査しか実施しない」と指摘する。「(消費者は)みんな(政府の汚染検査の結果を)信用しないから、(福島周辺以外の)他の産地のものを買ってるよ。」

「他の産地」とは、主に西日本と海外をさす。米国牛肉産業の関係者は今年の日本での牛肉販売について、前年比で33%の売り上げ増を見込んでいる。

こうした状況を受け、「ジャパン・タイムス」紙は7月25日、「政府は他の農畜産物についても詳細な放射能検査を実施することが必要」と指摘、「国民が日本の生産物への信頼を回復するためには、(汚染情報についての)完全な透明性をはかることが最善の策であることを政府は認識すべき」としている。


(注1)この見解については賛否が分かれるところがあると思われますが、原文に従って訳しています。
(注2)日本海洋学会は、文部科学省が取りまとめている海洋の放射能汚染に関する検査手法に関し、現行より詳細なデータを得るための手法を採用するよう求めてきたが、いまだ受け入れられるに至っていない。以下が提言の要旨。

<日本海洋学会による提言(抜粋)>
「現在,(…)文部科学省において取りまとめて公表される海域モニタリングにおいては5月以降の沖合海域のデータの大多数がN.D.(検出限界以下)とされています。しかしながら,検出限界以下とされるレベルでの数値の大小は,放射能汚染の拡がりに関して国内外に公開すべき重要な情報であると共に,海産食品への不安を取り除く上でも必要性が高い情報と考えられます。検出限界を下げることのできる高感度な分析手法は,事故前の海洋放射能研究において用いられてきており,事故後の国内・国外の研究機関による研究活動としての海域調査でも一部がこのような手法で実施されております。広範な海域について速やかな情報が公開されるべきであるという観点から,当ワーキンググループでは,政府の行うモニタリングにおいてもこうした手法を導入すべきであると考えております。」

全文はこちら http://www.kaiyo-gakkai.jp/main/2011/07/post-157.html

記事出典(小見出しは訳者が追記しました)
(Philippe Mesmer « Japon : la diffusion des informations sur la radioactivité des aliments reste parcellaire », Le Monde 2011.07.30)
http://www.itamaraty.gov.br/sala-de-imprensa/selecao-diaria-de-noticias/midia-internacional/franca/le-monde/2011/07/28/japon-la-diffusion-des-informations-sur-la

2011年7月29日 (金)

「福島原発の大惨事を受け、世界の原子力市場は衰退へ〜仏アレバ社、事故発生以来214億円分の商談が破棄に」ルモンド紙(7月28日)

世界の原子力業界を率いるフランスのアレバ社は7月28日、原子力の国際市場の成長は日本で起きた福島原発事故の影響を被り鈍化する、との見通しを発表。合わせて、福島原発事故以来、1.9億ユーロ(約214億円)分の顧客契約が破棄されたことを認めた。

新たに社長に就任したアレバ社のルーク・ウルスル氏はこの日、福島原発事故の後における国際原子力市場の成長に関するシナリオを発表。2009年には「2030年までに659ギガワット分の発電施設が設置される」との予想を行っていたのに対し、今回は「2030年までに584ギガワットを達成し年2%の成長を達成」と事実上の下方修正を行った。

株式市場で株の公開を行っているもののフランス政府の指導下に置かれているアレバ社は、7月27日に福島原発事故発生後初めての四半期売り上げを発表、既に1.9億ユーロ(約214億円)分の契約が破棄となったことを公式に認めた。アレバ・グループへの原子力発電施設の注文は、過去6ヶ月で10億ユーロ(1,130億円)低下して430億ユーロとなった。

(Le Monde & AFP, « Ralentissement du marché mondial du nucléaire » Le Monde, 2011.07.28)
http://www.lemonde.fr/asie-pacifique/article/2011/07/28/l-alerte-sanitaire-sur-les-b-ufs-japonais-s-etend-a-une-deuxieme-region_1553621_3216.html

2011年7月27日 (水)

「フランスの夢の『最先端原子炉』EPR、福島原発事故と同様の電源喪失で壊滅的ダメージの恐れ」ルモンド紙(7月25日)

フランスが自国の原子炉輸出における戦略的存在と位置づける「欧州加圧水型軽水炉(EPR)」(注1)。Mox燃料の使用も可能な低コストでの発電を実現する新型原子炉、として当初は注目を浴び売り出されました。既にフィンランド、フランスのフラマンビル、中国(「台山原子力発電所1号機」)などで着工していますが、相次ぐトラブルによる工事の遅れと膨らむ総費用が問題化しています。これに加え、7月25日、環境団体のグリーンピースは、EPRにおける電源喪失の可能性とこれによる壊滅的な打撃を指摘する報告書を発表しました。

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1.福島での「電源の完全喪失」、再び

環境NGOのグリーンピースは7月25日、「未来の第三世代原子炉」と目されるEPRに、福島原発で3月11日の地震および津波の後で起きたような停電が発生した場合に起きる安全性の欠陥を指摘した。

グリーンピースは「(EPRの)安全対策は、電力網もしくは発電機による電力供給が24時間以内に復旧する、という仮説に基づいている」と指摘、「福島では完全な電源喪失が11日間継続した」と述べている。今回のグリーンピースの指摘は、原子力分野におけるドイツ・オーストリア両政府の技術専門家をつとめ、かつ経済協力開発機構(OECD)の原子力エネルギー機構が設ける専門家部会の委員をつとめるオーストリア人専門家、エルムート・イルシュ氏が作成した報告書(注2)に基づいている。                                                    

2.アレバ社による危険の軽視

この報告書は、「福島原発事故から導かれる重要な教訓は、安全装置への電源喪失が起きた場合、原子炉は脆弱であるという事実である」と述べている。さらに報告書では「日本で起きたような全電源喪失のような状態がEPRに起きた場合には、原子炉内の水を100度以下に冷やすことができない。また、原子炉を安定した安全な形で停止することはできなくなる」としている。

報告書はまた、「アレバ社は、EPRにおける停電の予防策をむしろ減らすという程度にまで停電の危険性を軽視している。」と指摘している。グリーンピースによれば、アレバ社は非常用の発電機の数を減らしており、発電機は手動でスイッチを入れなければならないため、ヒューマンエラーの可能性を増幅させている。

日本で大地震と津波が起きて5日後の3月16日、当時のアレバ社社長だったアン・ロヴェルジェオン氏は国会議員による委員会での聴取の後で行った記者会見で「福島でEPRを使っていたならば、どんな状況でも外部へ放射性物質が漏れることはなかった」述べた。

他方、7月25日朝のテレビ番組「ラ・マティナル・ド・フランス・インター」(早起きフランス市外局番)に出演したエリック・ベッソン産業省大臣は、オーストリア人の研究者であるヒルシュ氏の専門性とグリーンピースの真剣さに疑問を呈し、次のように述べた。

「グリーンピースはこの件について本当にばかばかしいことを本当に長い間言ってきた。質問の報告書のことは知らないし、私は国際的に最高レベルの専門家、フランス人の、じゃなくてね、の言うことしか認めない。これらの専門家は、現在の知識ではEPRが最も安全なタイプの原子炉だと言っているよ。」

他方、「第三世代の原子炉」第一号であるフラマンビルのEPRは、工事の遅れにより2016年まで稼働が開始できない見込みとなった旨が先週水曜日に発表されたばかりである。

(Le Monde.fr & AFP, « Greenpeace souligne les failles de l’EPR en cas de panne électrique », Le Monde, 2011.07.25)
http://www.lemonde.fr/planete/article/2011/07/25/greenpeace-souligne-les-failles-de-l-epr-en-cas-de-panne-electrique_1552664_3244.html 

(注1) 「欧州加圧型軽水炉(EPR)」とは?
財団法人 高度情報化額技術研究機構による解説(2008年当時の解説)。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-08-03-05 

(注2)グリーンピースによる報告書(英文)
http://www.greenpeace.org/france/PageFiles/266521/EPR_Report_Greenpeace.fr.pdf

2011年7月24日 (日)

「仏フラマンヴィル原発の竣工、事故や技術問題で再度延期—他方、建設費用は当初の1.5倍に」ルモンド紙(7月22日)

仏最大の電気会社フランス電気公社(EDF)は7月20日、マンシュ県で建設中のフラマンヴィル原発の完成時期を、当初計画の2012年から4年延期すると発表した。EDFは2007年にフラマンヴィル原発の建設に着工。今回の延期は、昨年発表した2年の延期に続く2回目の延期となる。

工事が遅れている背景には、現場での2件の死亡事故に加え、基礎部分の鉄筋への亀裂、安全対策の不備、現場での労働事故の報告を怠っていたことなど、様々な問題が指摘されている。他方で建設費は当初予定の40億ユーロから60億ユーロ(約6800億円)に増大しており、1600メガワットの発電量を誇る「フランス原子力技術を集大成」した実験的原子炉として宣伝されてきたフラマンヴィル原発が、技術的問題を露呈した形となっている。

EDF側は今回の遅れについて、15年ぶりの新規建設案件であること、新しい手順を採用していること、土木工事の規模について見直しが必要であること、を挙げている。

一方でこの工事に関わる電気技術者は本紙のインタビューに対し、1月24日と6月11日に建設現場で起きた2件の死亡事故と関連する調査の実施により、5ヶ月の遅れが出たと述べている。その他、2010年末の降雪と寒波、福島原発事故の発生後に決まったストレステスト実施を受けた安全対策強化に関する原子力安全機関による指導への対応、運転前の詳細なテストなどで遅れが生じているとしている。 

フラマンヴィル原発の建設はその着工直後から多くの問題を抱えてきた。2008年には原子力発電を実施する予定の区画にあるコンクリートの基礎部分において、鉄筋内に複数の大きな亀裂が見つかったため、原子力安全機関がEDFにコンクリート打ち込み作業の中断を命令した。

2009年には、フランス、イギリス、フィンランドの各国における原子力の安全を所管する監督官庁が、EDFとアレバ社(フィンランドのオルキルオト原発で建設責任者に該当)に対し、運転制御および安全に関するシステムが同時に崩壊しないよう十分な措置をとるよう、当初の設計図の変更を求めた。

今年の6月6日には、原子力安全機関がEDFとアレバ社の2社に対し、フラマンヴィル原発の建設に関連しておきた建設現場での労働事故を報告していなかった門で、非難と指導を行った。

福島原発事故の後、EDF社長のアンドレ・クロード ラコステは、「もし原発の建設を遅らせるということであれば、フラマンヴィル原発の建設を遅らせる」と述べている。

なお、フラマンヴィルにおける原子炉建設にかかる費用の総額は当初40億ユーロ(約4500億円)と試算されていたが、現時点では60億ユーロ(約6800億円)と考えられており、建設費用の増加と工事の新たな遅れは、イギリスでの原子力再興の流れにあやかろうとするEDFの意図に水をさす形となっている。EDF側は「技術を重視し、費用はかかってもより安全な原子炉作りを優先する」と述べている。

(一部要約・編集)
(Pierre, Le Hir, « L’EPR français de Flamanville aura deux années de retard supplémentaires », Le Monde, 2011.07.22)

<参考>フラマンヴィルの位置(グーグルマップより)
http://www.maplandia.com/france/basse-normandie/manche/cherbourg/flamanville/

2011年7月23日 (土)

家の外部における除染や清掃の手引き/福島県災害対策本部(7月15日)(

福島県の災害対策本部が、家の外回りを除染/清掃する際の注意点や方法を詳しく紹介した「生活空間における放射線量低減化対策にかかる手引き」を発表しました。

週末に家の庭や周辺での清掃をされる方も多いかと思います。フランス語の記事ではありませんが、参考になるので御紹介します。

http://www.pref.fukushima.jp/j/tebiki0715.pdf

「放射性物質の拡散予想〜外出時の風向きにご注意」ドイツ気象台(7月23日)

ドイツ気象台の予報では、この週末にかけて関東地方を含む広範な地域で放射性物質の拡散が予想されています。少し気になったので念のため載せておきます。(表示時間に9を足したのが、日本時間です)

ドイツ気象台自身、日本からの放射性物質放出にかかる詳細発表が無いため正確な予報はできない、と断っていますし、雨や風向きによっても変わってくると思われますが、とりあえずはご注意を。取り越し苦労で済むことを祈っています。

http://www.dwd.de/bvbw/appmanager/bvbw/dwdwwwDesktop?_nfpb=true&_pageLabel=dwdwww_start&T178400415551302522764483gsbDocumentPath=Content%2FOeffentlichkeit%2FKU%2FKUPK%2FHomepage%2FTeaser%2FJapan.html&_state=maximized&_windowLabel=T178400415551302522764483&lastPageLabel=dwdwww_start

2011年7月20日 (水)

「ヒマワリによる除染の試み—飯舘への帰郷の道は見えず」ルモンド紙(7月19日)

<福島県飯館村/フィリップ・ムズマー特派員取材>

7月15日、飯舘村にある二枚橋に「帰郷のための事業」という前向きなメッセージをたたえた看板がひっそりと取り付けられた。

その足下に、ヒマワリが列をなし一面に芽吹いている。天気の良い日なら長泥の高いところからでも望める40キロ先にある福島原発で事故が起きた後、農民達に捨てられ休閑地となっていた土地である。

プロジェクトを率いるエガワ・コウジによれば、この試みは農林水産省、福島県、および飯舘村からの要望により、土壌に含まれるセシウムの量を減らすために実施されている。

飯舘村の土を回復するためには、たくさんのヒマワリが必要になるだろう。なぜならこの村は、気まぐれな天候によって、福島原発での爆発により発生した放射性の雲の通り道に当たってしまったのだから。折しも悪いタイミングで降ってきた雪によって、放射性の粒子は田に、家に、森に降り注いだ。飯舘村に一部の地域では、放射線量は毎時80マイクロシーベルト、年700ミリシーベルトにものぼる。年100ミリシーベルトの放射線を浴びれば癌になることが実証されているにもかかわらず、である。

こうして、6000人の住民が政府主導による退避を余儀なくされた。7月中旬現在、村役場の軒先にある電光掲示板は毎時4マイクロシーベルトを示しているが、今だ100人あまりの人が退避先の「住居待ち」で村に残っており、80名いた村役場の職員のうち5名が残って業務を続けている。

二枚橋では、土壌一キロ当たり3,334ベクレルのセシウムが検出されている。政府はアマランスや菜種と合わせ、ヒマワリによる(除染の)実証試験を飯館や隣接する川俣で実施している。これらの村では、汚染は3万ベクレル/キロにものぼっている。この実証試験では、セシウムを吸収するとされるゼオライトというミネラル分で加工した水で泥を吸い上げる試みも行われている。

「ヒマワリの花が咲いたら、それを引き抜いて吸収されたセシウムの量を調べるのです」とエガワ氏は言う。ヒマワリその他の植物を用いた除染はチェルノブイリ周辺地域でも実施されており、良い結果を生んでいると言う。

名古屋に本拠地を置くNGO「チェルノブイリ中部」は、2007年よりウクライナにあるナロディッチ地方でこうした試みを続けて来ている。

しかしこうした活動にも限界がある。土壌の除染を行っても、新たな大気の放射能汚染により土壌の放射能汚染の状況は刻一刻と変化して行く。また最終的には、従来とは別の形での放射性廃棄物が生み出されかねない。

飯舘村では同じ問題に直面している。収穫した植物を焼けば、新たに放射能を発生させることになってしまう。現在のところ、放射性廃棄物の容量をバクテリアで減らし最終的に残ったものを処理することが想定されている。しかし全ては実験の段階だ。飯舘村の住民が自宅に戻るという可能性は、まだ「仮定」でしかない。

(一部要約・編集)

(Philippe Mesmer, « A Iitate, des tournesols dépolluent les terres devenues radioactives », Le Monde, 2011.07.19)

「福島原発事故の発生から4ヶ月—汚染牛650頭に出荷停止命令」ルモンド紙/AFP(7月19日)

「福島原発事故の発生から4ヶ月—汚染牛650頭に出荷停止命令」ルモンド紙/AFP(7月19日)

福島原発での事故発生から4ヶ月が経過した7月19日、日本政府は福島県産牛肉の販売を禁止した。およそ650頭の牛が放射性セシウムで汚染された干し草で育成され、全国に食肉として販売されたと見られている。

(AFP « Tokyo interdit la vente du bœuf de Fukushima », Le Monde, 2011.07.20)
http://www.lemonde.fr/japon/article/2011/07/19/tokyo-interdit-la-vente-de-b-uf-de-fukushima_1550405_1492975.html

2011年7月16日 (土)

フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)による「土壌の放射能汚染に関する情報の要旨」その(2)(7月13日)「梅の実の汚染は数年にわたり続く」

先に掲載した「その(1)」に続き、7月13日に発表されたフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)による「土壌の放射能汚染に関する情報の要旨」のポイントについて御紹介します。

後半では、埼玉県を含めた広い地域で、大気、土壌、水道水の汚染が継続していることを指摘しています。また、特に汚染されている食品として梅の実、茶葉、竹の子の3つの食品をとりあげ、汚染された食品を摂取しないよう今後数年間に渡って監視が必要、と述べています。

尚、「その(1)」で言及されている詳細な土壌汚染地図の必要性は「その(2)」で述べられている食品汚染への監視の必要性と直結しています。現在公表されている福島原発周辺のみについての大づかみなデータでは、茶葉などへの汚染を引き起こすレベルの放射能汚染を特定することができない他、現在食品汚染の被害を受けている広範な地域に関する情報が網羅されていません。農家にとっても消費者にとっても、自らを守るために必要な情報の公開が求められています。

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2.2 3月以降の土壌における放射能汚染の推移

文部科学省が発表している土壌への放射能汚染データによると、3月以降も大気中に継続して低濃度の放射性物質が見られる。これは福島原発からその後も継続して放射性物質が放出されていること、場合によっては以前放出された放射性物質が大気中に残存していること、が考えられる。

4月18日、19日の時点で福島県より南部に位置する2県で測定された放射性物質による土壌汚染の状況は下記の通りである。

茨城県 ひたちなか市 ヨウ素131: 290ベクレル/平方メートル
セシウム137: 160ベクレル/平方メートル

埼玉県 さいたま市 ヨウ素131: 368ベクレル/平方メートル
セシウム137:137ベクレル/平方メートル

その後、土壌に降下する放射性物質の量は減少しており、ヨウ素131については5月末時点においてどの県でも検出されなくなっている。6月時点でセシウムが観測されているのは、福島市、ひたちなか市、さいたま市の3つの観測地点である。


3. 食品における放射能汚染の変化

野菜類の中で、現時点においてもセシウム134と137による深刻な汚染が見られるのは、竹の子、茶葉(荒茶、製茶の両方を含む)、梅の実、の3つである。これは、原発事故で放射性降下物が放出された際(特に3月)に、竹の子や茶葉の葉が放射性降下物、特にセシウムを取り込んだために汚染されるに至ったことが考えられる。汚染は一番茶で1キロ当たり1000ベクレル、竹の子で1キロ当たり2000ベクレルを越えており、2番茶になると汚染の度合いは低下すると思われる。

尚、茶葉を使用した際に、それぞれの放射性物質が茶に溶け出す比率は下記の通りである。

セシウム137 92%
セシウム134 80%
ポタッシウム 82%

こうした茶を毎日1リットル摂取した場合、体内には一日当たり0.6マイクロシーベルト、年0.2ミリシーベルトに相当する被曝が起きる。また通常のこの種の茶を飲む際に行われている通り、6グラムの茶を300mlの湯で淹れ、放射性物質が湯に溶け出す率等を考慮に入れて計算した場合、毎日一リットルづつこうした茶を飲んだ場合、一日0.24マイクロシーベルトの被曝が起こり、年0.1ミリシーベルトに相当する被曝が引き起こされる。

しかし、こうした食品の汚染はすぐになくなるものではない。また、初物は今後数ヶ月に渡って市場に出回ることが考えられる。今後収穫されるものについても、基準を越える深刻な放射能汚染が観測される可能性がある。従って、今後数ヶ月、場合によっては数年にわたって、これらの食品群については引き続き監視を続ける必要がある(強調は原文どおり)。

梅については、3月中旬には既に花がついていたことが考えられる。直近の計測データによると、福島県でとれた梅の実におけるセシウム(134と137の放射線量を足し合わせた数値)は一キロ当たり137から700までとなっている。茶葉や竹の子と違い、梅の実については、放射能による汚染は初物に限らず、今後も続くと思われる。

他の食品で汚染が報告されているのは、椎茸、卵、牛肉、乳製品、水道水である。乳製品については、宮城、埼玉、栃木、群馬の各県で、一リットル当たり0.34(群馬、6月29日現在)から42ベクレル(栃木、6月22日)までの間で汚染が観測されている。水道水については、埼玉県でセシウムが観測されている。(了)

<出典>
IRSNによる「福島原発事故によって起きた日本の土壌環境における放射能汚染に関する情報要旨」

http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN-NI_Fukushima-Consequences_environnement_Japon-13072011.pdf 

<参考>
IRSNによる「福島原発事故によって排出された放射性降下物による海洋への影響に関する最新情報の要旨」

http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN-NI-Impact_accident_Fukushima_sur_milieu_marin_11072011.pdf 

フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)による「土壌の放射能汚染に関する情報の要旨」その(1)〜「汚染対策には詳細かつ広範囲にわたる汚染地図が必要」(7月13日)

フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は7月11日と13日、放射能による海洋汚染、および土壌汚染に関して入手可能な情報を取りまとめた「要旨(要約)」をそれぞれ発表しました。ここでは、「土壌の放射能汚染に関する情報の要旨」におけるポイントのいくつかを2回に分けて御紹介します。今回発表された文書は、4月12日、5月25日に発表されたデータを更新したものです。

なお以前より、CRIIRADなどの放射線防御に関わる組織から、各地域の住民におけるより正確な被曝量を推定するために福島原発事故直後に大気中に放出された放射性物質の種類と構成の発表を東京電力に求める声が出ていました。今回のIRSNによる土壌の汚染状況の分析は、こうしたデータの入手が難しい中、土壌のデータから各地域における福島原発事故直後の大気の状況を推測しようという試みとも言えます。今回の分析で見つかった放射性物質の特性や量を参照することによって、より具体的な健康被害や今後の汚染被害の動向を推測することが可能になると考えられます。

また、土壌汚染の状況をより詳細にかつ広範囲に渡って示す地図の必要性についても指摘しており、静岡県その他での茶葉汚染問題等、広範囲の地域における食品汚染やホットスポットの存在が問題となる中、東京その他の地域を広く含めた詳細地図の作製を専門機関の立場から後押しする内容となっています。

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フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)「土壌の放射能汚染に関する情報の要旨」(7月13日)

1. 大気中に含まれる放射性物質の構成

主に3月12日と22日に大気中に放出された放射性物質の一部は土壌に蓄積し、野菜、土、建物、海や川の表面に汚染を引き起こした。IRSNではNGO「ACRO」(フランス西部地域における放射線調査協会)より提供された飯舘村前田地区の土壌(3月31日採取)を分析した。結果は、以下の通りである。

表1.飯舘村前田地区における放射性降下物による土壌汚染の状況

放射性物質(半減期)/3月31日時点での放射線量(ベクレル/Kg)/3月15日時点での放射線量の推定(ベクレル/Kg)
ヨウ素131(8日) /86,680 / 345,345
ヨウ素132(2.3時間) /7,084 /~250,000
セシウム137(30年) /44,362 / 44,407
セシウム134(2.1年) /45,343 /46,003
セシウム136(13.2日) /4,442 /10,317
テルール129m(33.6日) /34,472 /47,953
テルール129(1.2時間) /21,692 /~45,000
テルール132(3.2日) /7,961 /253,652
バリウム140(12.7日) /859 /2,057
ランタン140(40.2時間) /1,128 /~2,000
銀110m(249日) /309 /323
ストロンチウム90(29.1年) /33 /33


他方、6月13日に浪江町から採取した土壌の分析によると、3月15日の時点で浪江町において観測された放射性降下物の量は、飯舘村における量の10倍に相当する。以下がそのデータである。

表2.浪江町における放射性降下物による土壌汚染の状況

放射性物質(半減期)/6月13日時点での放射線量(ベクレル/Kg)/3月15日時点での放射線量の推定(ベクレル/Kg)
ヨウ素131(8日)     /1,300              /3,096,152
ヨウ素132(2.3時間)  /計測可能値未満           /計測不可能
セシウム137(30年)  /420,000 /422,397
セシウム134(2.1年) /340,000 /368,808
セシウム136(13.2日) /510 /58,383
テルール129m(33.6日) /78,000 /499,373
テルール129(1.2時間) /50,000 /~500,000
テルール132(3.2日) /計測可能値未満 /計測不可能
バリウム140(12.7日) /不明 /計測不可能
ランタン140(40.2時間) /220 /~30,000
銀110m(249日)     /1,600               /2,056
ニオビウム95(35日)   /430                /2,556

放射性降下物の堆積量については、場所によって大きな違いが観測されている。


2. 土壌への放射能汚染

2.1 より詳細かつ広範な地域についての土壌汚染データ地図が必要

5月の初めに米国エネルギー省と日本の文部科学省が合同で発表したセシウム134とセシウム137による土壌汚染の度合いを示す地図データは、航空機による測定値に基づいた福島原発周辺における土壌一平方メートル当たりの放射能汚染(30万ベクレル以上)の量を示している。しかしこの地図のデータは最も深刻な汚染被害を受けた地域についてのもののみに限定されており、より詳細かつ広範囲に渡る汚染状況の地図データが必要である。

実際、一平方メートル当たり30万ベクレル以下のセシウムによる汚染は、東京、および放射性降下物による食品への放射能汚染が見つかった神奈川や静岡などの東京から南東方向に位置する地域を含めたより広範な地域に及んでいたことが考えられる。茶葉や竹の子といった放射性降下物の影響を最も受けやすい作物の生産においては一平方メートル当たり数万ベクレルの汚染であっても重大な食品汚染を引き起こす。しかし、日本には現在こうした放射性降下物による汚染の詳細データを示す地図は作成されていない。

尚、航空機による計測では同一地域内において雨などにより形成された不均一な放射能汚染の状況が的確に把握されないため、そうした意味でも、より詳細な地図データが必要である。IRSNは、現在福島県についてのみこうした地図データの作成が進行中であるとの情報を得ている。

(注:尚、以前このブログでも掲載した7月に発表されたCRIIRADによる報告書でも、被曝量を計算するためには大気中に放出された放射性物質の詳細な構成に関する情報が必要であるとして、東京電力(株)に対しこれを要求する必要性を指摘している。また、日本全国に関するより詳細な放射能汚染の状況を示すデータの開示が必要であるとして、文部科学省等関係機関への働きかけを呼びかけている。従って、今回のIRSNによる報告書の内容はおおよそCRIIRADと方向性を一つにするものであると言えるだろう。)


<出典>
IRSNによる「福島原発事故によって起きた日本の土壌環境における放射能汚染に関する情報要旨」

http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN-NI_Fukushima-Consequences_environnement_Japon-13072011.pdf 

<参考>
IRSNによる「福島原発事故によって排出された放射性降下物による海洋への影響に関する最新情報の要旨」
http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN-NI-Impact_accident_Fukushima_sur_milieu_marin_11072011.pdf

2011年7月15日 (金)

「菅首相の脱原発宣言〜財界からは批判、福島県関係者からは強い支持」ルモンド紙(7月15日)

菅直人首相は7月13日、大多数の国民の期待に応えて、日本が今後原発を廃止してゆくことを示唆した。この発言は、経団連を初めとする財界からは強い批判を浴びる一方、福島原発事故の影響を直接に受け、今も放射能汚染に苦しめられている福島県関係者からは強い支持を得ている。

福島原発事故の影響を最も強く受けている福島県では放射能汚染の影響が日常生活にまで及んでおり、県外への退避者が8万人にのぼっている。福島県では現在、複数の市町村が電光掲示板で放射線量の掲示を行っている。7月13日時点での飯舘村での放射線量は一時間当たり4マイクロシーベルトで、法定量の被曝量を越えていた。郡山市では10マイクロシーベルトを越える場所もある。

福島県関係者の心配は、「段階を追って原子力への依存度を減らして行く」とする菅首相の方針では落ち着くに至っていない。しかし他方で、南相馬市の桜井勝延市長は首相の発言を「良い決定だ」と評価。佐藤雄平・福島県知事もこの機会をとらえ、「福島から原発を無くすために全ての手を尽くして欲しい」と述べた。

他方、保守派からは菅首相の方針に疑念の声が上がっている。経団連では東京電力の清水元社長がこの4月まで副会長をつとめており、7月12日火曜日には経団連として政府に対し原子力発電の推進を要請している。この経団連に近い立場を取る日経新聞は、首相が「脱原発」のカードを使って人気を回復し自らの政府を救おうとしている、と批判している。

実際には、菅首相による今回の宣言は驚くにはあたらない。福島原発事故以来、首相は繰り返し原子力への依存度の軽減を目指したい旨を表明してきており、浜岡原発の停止に際しては電力政策の見直しを示唆している。7月21日には、再生可能エネルギーの使用に関する法律を国会に提言する予定となっている。菅首相による「ポスト原発」へのコミットメントは、3月11日の津波の直後に「明治維新や終戦に匹敵する新しい時代が日本にやってくる」と首相が述べた演説の中身を具体化する手段でもある。

(Philippe Mesmer記者が福島県より取材しました。一部要約しています。)

(Philippe Mesmer, « Le premier ministre japonais se déclare favorable à une sortie du nucléaire », Le Monde, 2011.07.15)

2011年7月14日 (木)

福島原発事故に関するIRSNによる調査報告会の要旨(7月7日)/Genpatsu

Genpatsuさんが7月7日にフランス大使館で開かれたIRSNによる報告会での模様を詳細に掲載してくださっていますので御紹介します。環境汚染の専門家および食品汚染の専門家、の2名が発表を行い、参加者からの質問に答えました。

4月1日から2日にかけての東京の大気における深刻な放射能汚染の状況、放射性の雲が3月15日と21日の2回にかけて通過していた事実、食品汚染についてのIRSNの見解など、参考になる情報がビジュアルで紹介されています。

GenpatsuさんによるIRSN報告会についての記事はこちら
http://genpatsu.wordpress.com/2011/07/10/isrn-conference-french-embassy/

2011年7月13日 (水)

「ドイツはなぜ原発をやめるのか?(3)脱原発は民主主義への道」ルモンド紙/ウルリッヒ・ベック(7月10日)

前回、前々回に引き続き、ウルリッヒ・ベック教授による論文「遂に『原子力後』(ポスト原子力)の時代がやってくる」の続きをお送りします。

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5.原発事故による危機意識の高まり、団結、そして電気を自らの手に取り戻すための民主化へ

太陽光発電は民主的だ。原子力発電はその性質からして反民主主義的である。原子力発電所から電気を引く者は、請求書にある金額を支払わない人間への電気を断ち切ってしまう。こんなことは、自宅で太陽光発電を通じて電力をまかなっている人間には起きようがない。太陽光発電は、人を独立させる。

言うまでも無く、太陽光発電が人々を自由にする潜在的な可能性を持つという事実は、原子力エネルギーによる電力の独占に疑問をつきつける。アメリカ人、イギリス人、フランス人―あれ程までに自由に価値を置く人々が、なぜ電力政策の転換がもたらすであろう「自由への解放」という結果を理解できないのだろうか。

(ドイツによる電力政策の転換に直面して、)あちこちで人々が(ドイツにおける)政治の終焉を宣言し、それを嘆き悲しんでいる。しかし逆に、リスクに対する見方を変えれば、私たちは「政治の終焉」の更なる終焉を引き起こすことができる。これを理解するためには、アメリカ人哲学者のジョン・ドゥーイが1927年以来その著作『公衆とその諸問題』(邦訳2010年、ハーベスト社)で示した見方に立ち戻るべきだろう。ドゥーイによれば、国際的な世論の高まりは政治的な決定を生み出さない。しかし政治的な決定がもたらす結果そのものは、市民の物の見方に極めて重要な問題を引き起こす。

それまではお互いに全く関係の無かった個々人が、危機を感知したことによって互いに連絡を取り合わざるを得なくなる。リスクの存在を認識したことによって、これらの人々にはそのリスクを消し去るための義務と支払うべき代償が生じる。原子力の「危険」に対するヒステリーで過剰な反応だとして、多くの人が非難されるべきと考えている個々人の反応は、実は民主的な社会を形成するために必要な社会の転換と両輪の関係にある電力政策の転換をもたらすのに必要不可欠な展開なのである。

原子力による大災害が起きる危険性を許す行動戦略は、文明という観点から見る時、資本と国家の新自由主義経済的な連携が生み出す秩序を意味のないものにしてしまう(注5)。原子力に関する災害に直面し、政権を握る者としての新たな正統性を持つや否や、国家と市民社会の運動は新たな力を得ることになる。逆に、原子力産業は自らが行った投資の結果として全ての人の人生を危険にさらすことにより自らの正統性を失う。反対に、今日のドイツで見られるような市民社会と国家の新たな連帯は、歴史的なチャンスを生み出すことになる。

政治的な観点からも、電力政策の転換には意義がある。保守的で財界の近くに身を置く者だけがこのような電力政策を交渉し勝ち取ることができる。こうした転換に最も強く反対する者が同業者だからこそ、交渉できるのである。

原子力経済から脱却するというドイツの決意を批判する者は、自らがさなぎから抜け出て「再生可能エネルギー」という名の蝶として羽ばたいて行こうとしていることに気づかずに(原発の)消滅を嘆く醜い青虫のような、そんな過ちにいずれは苦しむことだろう。(了)


<注5>すなわち、政府と財界が協力して原子力の危険を容認する行動戦略を容認している場合にも、「文明」の観点からこうした現状を見直せばこうした秩序は意味のないものになる、の意。

ルモンド紙によるオリジナル記事
(Ulrich Beck, « Enfin l’ère postnucléaire », Le Monde, 2011.07.10)
http://www.lemonde.fr/idees/article/2011/07/09/enfin-l-ere-postnucleaire-par-ulrich-beck_1546872_3232.html

「ドイツはなぜ原発をやめるのか?(2)脱原発で電気を電力会社から取り戻す」ルモンド紙/ウルリッヒ・ベック(7月10日)

「ドイツはなぜ原発をやめるのか?(1)〜『原子力というリスク』を取らない生き方」http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/1710-d674.html
に引き続き、ウルリッヒ・ベック教授による「遂に『原子力後』(ポスト原子力)の時代がやって来る」の続きを掲載します。

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3.原子力的「社会主義」:利益は電力会社へ、無限のリスクは納税者と将来の世代へ

「保険」についての問題はどうだろうか。奇妙なことに、市場経済の帝国においては原子力は最も国家社会主義的な産業として存在した。少なくとも、失敗に対する代償を誰が支払うのか、という問題について言えば。利益は民間企業の懐に入るが、リスクは社会によって分配されている。つまり、将来の世代や納税者が担うのが当たり前と思われている。もし原子力発電を行う企業が(納税者や将来の世代といった)原子力を実施するにあたっての「保険」を準備できなくなった場合には、「お得な原子力発電」という作り話はもはや過去の思い出でしかなくなる(つまり、実施が不可能になる)。

21世紀の初めにあたる今日、原子力エネルギーに関する議論に使われている「危機(リスク)」の概念は、19世紀に使われていた「死ぬか生きるか」といった二者択一の議論(つまり、死に至る場合のみを「危機」と見なし、そうでない場合は見なさない単純化された議論)であり、今日私たちが生きる時代が直面している現実を見えなくさせている(注4)。したがって、原子力をやめるのが非理性的なのではない。むしろ、福島で原発事故が起きた後でさえ原子力を擁護し続けることが非理性的なのである。こうした態度は、いわば賞味期限の切れた時代遅れのリスク概念に基づいたものであり、歴史的経験から教訓を引き出すことを拒否するものだ。


4.ドイツは原発をやめ経済発展を遂げる

ドイツほど早く経済発展を遂げた工業国は無い。それでは、脱原発、という方向転換は、根拠の無いパニックによる動揺から生まれたものなのだろうか。長期的に見れば、原子力発電にかかる費用は今後どんどん高くなって行くし、自然エネルギーによる発電は割安になってゆく。しかしここで重要なことは、原子力を含む全ての選択肢を引き続き残しておこうとする者は、(自然エネルギーの開発に向けた)必要な投資を行わないということだ。もしドイツがこのような考えを持っていたとしたら、エネルギー政策の転換など行わないことだろう。しかし、ドイツ人を脱原発に向けて突き動かしている苦悶の裏に何の策略や計算が無い訳ではない。

ドイツ人は将来に向けて発展するであろう市場の経済機会を嗅ぎ分け、察知する。ドイツでは、電力政策の転換は4つの文字に要約される。すなわち、「仕事(jobs)」である。皮肉なドイツ人だったら、こんな風に言うかもしれない。「他の人たちはこれからも怖いもの知らずのままでいればいい。そういう人たちは、経済の停滞と投資の失敗という結果に終わるだろう。」原子力推進派は節電設備や代替エネルギーの開発に向けた投資を行わないために、市場で成功する道を自ら断つことになるだろう。

(現在の)21世紀初めの状況は、他の時代に起きた電力供給における歴史的な新局面(すなわち新たな技術の導入による電力供給の大転換の時期)に匹敵する。もし250年前の第一次産業革命初期に人が石炭、鉄、蒸気による動力機器、機織り機、そして鉄道に投資すべきという助言をはねつけていたとしたら、どうなっていたことだろう。もしくは、50年前にアメリカ人がマイクロプロセッサーやコンピューターやインターネットに投資するという考えを拒否していたら、どうなっていただろうか。

私たちは同じ流れの上にある歴史的瞬間に直面している。自然エネルギーによる発電を開発する者は、砂漠の一部分で太陽光発電を行って国家全てが必要とする電力をまかなうことができるだろう。太陽光を独占して所有することができる者はいない。誰も太陽を民間経営にしたり国営化することはできない。誰もがこの電力源を自らのために、そしてそこから利益を生むために開発することができる。世界で最も貧しい国の住民が「太陽の豊かさ」を自由に使うことができるのだ。

(最終章へ続く)

<注4>被曝しても死なないケースは多い。しかし死なないから大丈夫、リスクは無い、と言うことはできない。今の社会における「危機(リスク)」の概念が以前よりも複雑になっていることを著者は示唆している。

ルモンド紙によるオリジナル記事
(Ulrich Beck, « Enfin l’ère postnucléaire », Le Monde, 2011.07.10)
http://www.lemonde.fr/idees/article/2011/07/09/enfin-l-ere-postnucleaire-par-ulrich-beck_1546872_3232.html

2011年7月12日 (火)

「ドイツはなぜ原発をやめるのか?(1)〜『原子力というリスク』を取らない生き方」ルモンド紙/ウルリッヒ・ベック(7月10日)

ヨーロッパの経済を牽引する大国、ドイツ。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、福島での原発事故が勃発した直後、『リスクの社会学』(邦訳『危険社会』)などの著作で知られる環境問題と危機管理専門の社会学者、ウルリッヒ・ベック教授(注1・注2)を電力政策に関する特別専門部会の委員に任命した。その後ドイツ政府は、メルケル政権の元で脱原発政策へと大きく舵を切ってゆく。

ドイツの政策転換の背景にあるのは、どのような考え方なのだろうか。

こうした疑問に答えるべく、ルモンド紙は7月10日、ドイツ政府が電力政策を転換するに至った議論と考え方を簡潔に示したベック教授自身による寄稿論文を掲載しました。(一部要約しています。又、小見出しは訳者によるものです。)

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遂に「原子力後」(ポスト原子力)の時代がやって来る

ウルリッヒ・ベック

ここでこれから述べるのは、今後2021年に向けて原子力発電から自然エネルギーによる発電へと転換をはかろうとしているドイツ政府の政策基盤となった、専門家による提言の一部分である。ドイツは原子力発電から脱却することが、実は強い経済を作り出す重要なチャンスの源であることを、これから証明するだろう。


1.原子力推進派による批判〜脱原発は「非理性的」で「原始的」?

「あなたたちドイツ人は孤立している。」

アメリカの環境活動家スチュワート・ブラント(注3)は、ドイツによる脱原発政策をこのように批判し、次のように続けた。

「ドイツの行動は無責任だ。経済的な観点からも、地球温暖化の危機への配慮を行うという意味でも、我々は原子力発電をやめることはできない。」

英国ガーディアン紙のジョージ・モンビオット編集長は、「これまで原子力について疑念を抱いたこともあったが、福島での原発事故で原子力エネルギーの価値を確信した」と述べて、原子力発電に対しこれまで以上に高い評価を行っている。

「日本の原子炉は(福島原発事故で)史上最悪の地震と津波、という最も厳しい試練を受けざるを得なかった。それなのに、今日に至るまでまだ誰も死んでいない。ほら、だから僕は原子力発電が好きなのさ。」

しかし、ドイツによるエネルギー政策の転換が、ヨーロッパにおける近代性の概念と縁を切り、混沌と森の生活に象徴される原始的な時代へと後戻りすることを示すものだと考えるのは、大きな間違いだろう。

今(ドイツで)力を持とうとしているのは、自ら生み出した危機に直面した時、人々が新しいことを学ぶことのできる力、そして近代性が新たなものを創り出すことができると考える信念である。

(今(ドイツで)力を持とうとしているのは、一般に知られるドイツ人の非合理性ではなく、自らが生み出した危機に直面して新しいことを学ぶ力、そして近代性が新たなものを創り出すことができると考える信念である。)


2.原子力で複雑・深刻化する現代の「リスク」〜回復できない被害

原子力の推進派は自分たちへの評価と支持をより強固なものにするため、経験から学ぶことの無い固定した「危機(リスク)」概念への支持を呼びかけ、じっくり考えることもなく(250年前の)第一次産業革命の時代を(今日の)原子力の時代に比較している。

(第一次産業革命の時代に受入れられていた)「危機管理」の原理は、想定されうる仮定のうちで最も悪い事態が現実になりうる、従って我々はこうした見方に立って予防策を選択しなければならない、という原則から出発する。例えば家の骨組みが燃えている時には、消防士がかけつけ、保険会社が保険金を払い戻し、必要な医療サービスを惜しみなく与える、といった風に。

(危機に対しては常に「予防策」や「事後の対処」を取り得る、という前提に立った)この公式を原子力発電の危険にあてはめると、(最悪の原発事故が起きた場合でも、ウランは数千年の代わりに数時間しか被曝を引き起こさず、隣接する大都市の住民を退避させる必要は無いことになる。これは、言うまでも無く常道を逸している。チェルノブイリや福島で原子力発電所の事故が起きた後ですらまだ、フランス、イギリス、アメリカ、中国、そしてその他の国々にある原発が安全だと言い続けるのは、経験に基づいて物事を理解することを拒否していることに他ならない。実際には、結論は正反対となる。つまり確実に言えることがあるとすれば、大規模な原発事故が再び起きる、ということだけだ。

大規模な装置で発電すれば、(電力源が何であれ)全てのリスクをゼロにすることはできない、と主張し、石炭による火力発電、植物などの生物体を燃料としたバイオマス発電、水力発電、風力や太陽光による発電を行った場合にも、原子力発電の場合と比較可能な程度のリスクが生じると結論づけることは、原子力発電所で炉心溶融が起きた際に生じる危険についての私たちの知識を否定することになる。

そうした場合に生じる放射能がどれだけ長い間存在し続けるか、セシウムや放射性ヨウ素が人や周囲の環境に引き起こす損害がどれほどのものであるか、最悪の事態が起きた場合に我々が何世代に渡ってその汚染と痛みに耐えなければならないか、を私たちは知っている。そして更には、自然の力によって生み出された代替エネルギーが、原子力のように時間や空間や社会の壁を越えてどこまでも続く被害、といった形でのリスクを引き起こすことは無い、という事実を知っている。
(その2に続く)

<注1>ウルリッヒ・ベック教授略歴

ミュンヘン大学、ロンドンスクール・オブ・エコノミクス社会学教授。
主要著書に『危険社会』(邦訳『危険社会―新しい近代への道-叢書』1998年、法政大学出版局)。「チェルノブイリ原発事故やダイオキシンなど、致命的な環境破壊をもたらす可能性のある現代の危険とそれを生み出し増大させる社会の仕組みとかかわりを追究。科学と政治のあり方から『危険』のメカニズムを分析」(アマゾン・ドットコムによる解説より)。1944年、ポーランド生まれ。

<注2>朝日新聞によるベック教授へのインタビュー記事「原発事故の正体」(2011年5月13日)byねこねこさん
http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1537440.html

<注3>「グローバル・ビジネス・ネットワーク」などの主催で知られる科学者。


ルモンド紙によるオリジナル記事
(Ulrich Beck, « Enfin l’ère postnucléaire », Le Monde, 2011.07.10)
http://www.lemonde.fr/idees/article/2011/07/09/enfin-l-ere-postnucleaire-par-ulrich-beck_1546872_3232.html

2011年7月 9日 (土)

「ヨーロッパ各国での原子力発電への支持、3割以下に落ち込む」ルモンド紙(7月8日)

ルモンド紙は7月8日、6月末にIFOP社を通じて実施した世論調査の結果を発表、ヨーロッパの主要各国における原子力への支持が3割以下にとどまっている現状を伝えた。

特に、「原子力への好感度が最も高い」とされるフランスでも原子力を支持する人の割合は3割以下にとどまっており、原子力産業が十分に安全性を確保していると考える人の割合も半数にまで落ち込んでいる。同紙は、福島での原発事故の後、原子力発電の安全性に対する疑念が少しづつ高まりつつあると分析している。

調査は「時事ニュースに関する調査」の一部として実施され、フランス(1006人)、イギリス(604人)、ドイツ(603人)、スペイン(600人)、イタリア(605人)の5カ国を対象に行われた(括弧内は調査への参加人数)。

調査の結果で際立ったのは、原子力エネルギーへの低い支持率。支持率が32%を越えた国は無かった。逆に原子力に反対する人の割合はイタリアで58%、ドイツで53%と高く、スペイン28%、21%、フランス20%と続いている。フランス、イギリス、スペインではどちらとも決めかねている人の割合が高く、フランス48%、イギリス47%、スペイン45%という結果になった。

(« Mons d’un tiers des Européens favorables à l’atome, 37% sont hésitants », Le Monde, 2011.07.08)

2011年7月 7日 (木)

「仏裁判所、『ラ・アーグ核廃棄物処理場』における危険作業の下請けを差し止め」ルモンド紙(7月5日)

パリ大審裁判所(日本の地方裁判所に相当)は7月5日、フランスのラ・アーグ核廃棄物処理場において使用済み核燃料の再処理を下請けに出す計画を立てていたアレバ社に対し、これを無効とする判決を下した。この訴えは、フランス労働総同盟(CGT)および「労働者の力(FO)」の2つの労働組合が起こしていたもの。事実上これらの組合による勝利となった。

2010年7月、ボモン・ラ・アーグにあるアレバ社の本部は3つの原子力蒸気供給設備(ボイラー)の建設と管理をダルキア社に委託する計画を発表。同社本部は経済的観点と環境への配慮からこうした計画に至ったと説明した。

しかし労働組合側は、この計画には核廃棄物貯蔵池の継続的な冷却と、主電源が切れた際の非常電源の確保についてもダルキア社に外注するという点が含まれているとして、差し止めを求めていた。

裁判所はこうした作業を外注・下請けに出すことについて、「重度の社会心理的リスクと技術・産業上の高いリスクを醸成するものであり、関係する作業員の健康や安全を危険にさらす性質のものである」と指摘した。

(一部要約)

(Le Monde.fr & AFP « Nucléaire : la justice empêche un projet de sous-traitance à l’usine de la Hague », Le Monde, 2011.07.05)

http://www.lemonde.fr/planete/article/2011/07/05/nucleaire-la-justice-empeche-un-projet-de-sous-traitance-a-l-usine-de-la-hague_1545170_3244.html

2011年7月 5日 (火)

CRIIRAD研究所による日本訪問にかかる報告書/暫定版(2011年5月24日〜6月3日) その3

以下、「その2」に続いてCRIIRADによる報告書の内容を御紹介します。訳は、EX-SKF-JPさんのブログに掲載された「東京茶とら猫」さんの訳によります。(東京茶とら猫さんの訳のうち、下線部分については訳の微調整をさせて頂いています。小見出しは、読みやすいようにこちらで多少訳を変更させて頂きました。ご了承ください)。

<出典>
EX-SKF-JPさん掲載、東京茶とら猫さん翻訳 
<パート1>http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/ngocriirad.html 
<パート2>http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/07/ngocriirad.html

CRIIRADによる報告書(オリジナル、英文)
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_anglais/criirad11-47ejapan.pdf

尚、最後にCRIIRAD研究書からIRSNに対する非難の言葉が記されていますが、これはフランスおよび日本で発表されているIRSNによるデータへのCRIIRAD研究所による批判を反映したものとなっています。尚、このブログでは現状に関するデータ自体が不足している現状を踏まえ、どちらの組織についても有用と思えるデータについては掲載する方針を取っていることを申し添えます。また、IRSNはCRIIRAD研究所による批判に対しそのホームページその他を通じて反論を行っており、こうした「対話」が政府研究機関とNGOの間になりたっていること、NGOが政府の発表するデータをきちんと監視する機能を担っていることについては評価に値すると考えます。

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3.福島第一原発から新たな放射線放出が起きた場合の不十分な備えとモニタリング・ネットワーク

福島第一原発では、3基の原子炉と複数の使用済み燃料プールが甚大な損傷を受けている。

東電は原子炉を「安全な状態」に戻す期限を延ばし続けている。原発からは通常レベルをはるかに上回る放射性核種が大気中に放出され続けている。このような状況であれば、継続的な放射能の大気放出の影響を評価するためのモニタリング・ネットワークは高性能で、放出量が増加した場合には警報を発してくれるものと普通は予想する。

5月30日の東電記者会見の場で、CRIIRADの研究所長であるシャレイロンは原発周辺の空気汚染モニタリングの手順について質問した。東電の説明によると、モニタリング・ポストは原発西門の一箇所にしかなく、毎日20分程度使用されるだけだという。つまり、残り98.6%の時間は原発周辺の空気汚染レベルが測定されていないことになる。CRIIRADのような小さいNGOですらフランスの5箇所にモニタリング・ポストを設置しているのに、なぜ東電が一箇所しか設置できないのだろうか。東電の回答は、資金の問題ではなく測定器のフィルターを交換することの出来る作業員が不足しているため、というものだった。

福島県県庁で、CRIIRADは県の緊急時対策担当者と面会した。空中放射線量の増加を早期発見するためにどのような測定装置を設置しているのかとCRIIRADが尋ねたところ、福島市内の空中線量モニターは原発事故によって汚染されたためにもう使用されていないとの回答があった。原発の周辺には空中線量を測定する装置のネットワークがあるが、自動操作できるものではなく、実際に誰かが行って手作業でフィルターを交換しなければならないという。そのような仕組みであるため、残念ながら測定は毎日15~20分しか行なわれていない。

担当者にもうひとつ尋ねたのは、放射性ヨウ素が新たに大放出される場合に備えてせめて安定ヨウ素剤を住民や学校に配布したのかどうか、である。そうしておけば、汚染が通告されたら住民はすぐにヨウ素剤を飲むことができる。県の担当者は、その種の決定は国が下すものなので、そのような計画はない、と答えた。

さらに担当者は、原発からの放射性ヨウ素で被曝するよりも、安定ヨウ素剤の副作用のほうがはるかに深刻だと言ったが、その情報をどこから得たのかは語らなかった。CRIIRADはそれに対し、チェルノブイリの事故を受けてポーランド政府は国民に安定ヨウ素剤を配布したが、大きな副作用は確認されていない、と伝えた。

4.CHIRIIRADから日本国民の皆さんへのお詫び

チェルノブイリ原発の事故から25年、原子力発電を行なう国家と電力会社は、原発事故の影響を低減させるために様々な手を尽くして迅速に対応できるようになっているのだろう、と普通は思う。しかし福島第1原発の事故で明らかなように、日本のような近代国家であってもそうはなっていない。事故が起きて汚染が広域に拡大すると、政府には自国の国民の安全を確保する能力もない。住民は次のよう
なきわめて難しい二者択一を迫られる。

(1)政府から「許容レベル」と宣言された汚染地域に留まる

(2)受けた被害や転居の費用や新しい仕事に対する十分な補償も得られないまま、汚染のない(または少ない)地域に逃れる

また、CRIIRADはフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の姿勢について日本国民の皆さんにお詫びしたい。IRSNは3月17日に発表した試算の中で、福島県近辺に住む子供の被曝量は50ミリシーベルト未満に留まると述べた。50ミリシーベルトは、日本で一時避難を勧告する基準値である。幸い、日本政府は半径20km圏内の住民の避難を決めた。けっして十分とはいえないものの、少なくとも一部の住民の安全を守ることはできた。IRSNは国の機関であるが、フランスでも原発事故が起きた場合に住民の健康保護にかかわる判断をここに任せていいのかどうか、CRIIRADは強い懸念を抱いている。(了)

<出典>
EX-SKF-JPさん掲載、東京茶とら猫さん翻訳 
<パート1>http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/ngocriirad.html 
<パート2>http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/07/ngocriirad.html

CRIIRADによる報告書(オリジナル、英文)
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_anglais/criirad11-47ejapan.pdf

CRIIRAD研究所による日本訪問にかかる報告書/暫定版(2011年5月24日〜6月3日) その2

以下、「その1」に続いてCRIIRADによる報告書の内容を御紹介します。訳は、EX-SKF-JPさんのブログに掲載された「東京茶とら猫」さんの訳によります。(東京茶とら猫さんの訳のうち、下線部分については訳の微調整をさせて頂いています。小見出しは、読みやすいようにこちらで多少訳を変更させて頂きました。ご了承ください)。

<出典>
EX-SKF-JPさん掲載、東京茶とら猫さん翻訳 
<パート1>http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/ngocriirad.html 
<パート2>http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/07/ngocriirad.html

CRIIRADによる報告書(オリジナル、英文)
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_anglais/criirad11-47ejapan.pdf

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2.汚染地域の住民に対する不十分な防護策



米国エネルギー省と日本の文部科学省が発表した公式の土壌汚染地図を見ると、半径20kmの避難区域圏外でも汚染レベルの高い地域がある。CRIIRADはいくつかの地点で地上1mの線量を計測した。

その数値を自然放射線量と比較すると、日立(福島第一原発から南100km)で2~3倍以上、郡山(西60km)で9倍、福島市(北西60km)内の学校や公園を含む複数地域で20倍、飯舘村長泥地区で130倍だった。測定後1年間のあいだに、それぞれの地域でわずか12時間、4時間、等々を屋外で過ごすだけで、住民の被曝量は年間被曝許容量の1mSvを超える。しかも、セシウム134とセシウム137が放出するガンマ線は高エネルギーなので、家や学校やビルの外の土壌が汚染されていると、建物内部の線量も増加する。

たとえば、CRIIRADが福島市内の一軒の民家で線量を計測したところ、居間の床上1mでは通常の線量の6倍、子供部屋の畳の上では4倍高かった。この家の場合、福島市内の他地域の線量も勘案すると、適切な防護策が講じられなければ子供たちの被曝量は1年間で約7~9ミリシーベルトに達するとCRIIRADは推定した。

この試算は外部被曝だけを計算したもので、汚染食物を摂取したり土壌から放射線粒子を吸い込んだりして生じる内部被曝は含めていない。日本政府は避難の目安としてICRP勧告の年間20ミリシーベルトを採用している。だが、年間20ミリシーベルトという被曝許容量は、下記の理由によりあまりにも高すぎる。



(1)ICRPは安全な基準値などないと考えている。将来的にがんで死亡するリスクは被曝量に比例し、「これを下回れば発がんしない」という閾(しきい)値は存在しない。福島第一原発の事故後最初の数日間から数週間のあいだにすでに高レベルの被曝をした人たち(大人も子供も)に対しては、以後の期間は被曝レベルを1ミリシーベルト未満に抑える必要がある。



(2)にもかかわらず日本政府は、一般に許容される発がんリスクを20倍も高めるような線量を追加で被曝しても構わないと考えている。住民にこのリスクを受け入れさせるため、政府は100ミリシーベルトまでは実際の健康影響がないとするデマを広めるキャンペーンを開始した。これはでたらめである。比較的最近の疫学研究からも、室内でラドンを吸い込むことによる被曝量と肺がんで死亡するリスクとのあいだに直接的な関連が確認されている。このリスクは年間被曝量がわずか2ミリシーベルトでも生じるものであり、これを下回れば発症しないという閾値は存在しない。



(3)年間20ミリシーベルトという基準値は主に外部被曝を念頭に置いて定められたものである。このことは、日本政府がこの数値を読み替えて1時間あたりの許容被曝量を毎時3.8マイクロシーベルト(外部被曝)と定めたことからも明らかである。これはきわめて高いレベルであり、自然放射線量(通常は約0.1マイクロシーベルト時)の約38倍に当たる。日本政府はこの数値を計算するのに、8時間を屋外で、16時間を屋内で過ごすことを前提としており、屋内の線量は屋外の線量に減衰率の0.4を掛けた数値としている。これで計算すると1日あたりの被曝量は54.7マイクロシーベルトとなり、年間被曝量は19.98ミリシーベルトになる。しかしこれ以外に、汚染された土を吸い込んだり、汚染された土を食べたり(とくに子供)、汚染地域で生産された汚染食物を食べたりする内部被曝の線量も加えなくてはならない。文科省は自身のウェブサイトに、子供が校庭にいるあいだの内部被曝の影響は全体の2.5%未満だと記載している。この値は、4月14日に13の学校の校庭で測定した数値を平均したものだが、これが正当な数値であるかどうかは独立機関の科学者によって検証する必要がある。


<備考>
CRIIRADのチームが福島県滞在中に複数の農家から聞いた話では、政府は水田の土壌の汚染レベルがキロ当たり5,000ベクレルまでであれば作付けを「許容」するという案を示しているそうだ。汚染された水田から米自体に移行する放射性セシウムは全体の10%にすぎないというのがその根拠である。

かりにそうだとすれば、その汚染地域で栽培される米の放射能量は穀物の暫定規制値であるキロ当たり500ベクレル以下となる。しかしCRIIRADが強調したいのは、あらゆる食品がそのレベルまで汚染されていたら、汚染食品を毎日1kg食べると年間被曝量は3ミリシーベルトとなり、がん死を許容できるかできないかを分ける基準値の3倍に達するという事実である。

CRIIRADの今回の訪日の目的は、放射線に対する市民の理解を高めることにより、避難や除染や十分な補償について政府や東電とより有利な交渉ができるようにすることである。[「測定器47台プロジェクト」[放射線量計計測データの集計および公表を行なっている全国の有志による団体]47プロジェクトとCRIIRADが、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」などのNGOと協力して様々なワークショップや講演、記者会見を開催したのはそのためだ。

食品サンプルの放射線測定を独自に実施したいという「測定器47台プロジェクト」の願いを受け、CRIIRADは特別な測定器(LB200)を持参して、5月29日に福島市内で測定ワークショップを実施した。このワークショップでは、参加者が各自好きな食品を一品ずつ持ち寄り、約30品目の食品(玉ねぎ、長ねぎ、鶏肉、アスパラガス、じゃがいも、えんどう豆、大豆、豆腐など)についてセシウムの放射線量を実際に測定した。

結果は検出限界である30~40ベクレル/kgから200~300ベクレル/kgの間であった。これらの食品のほとんどは温室栽培されたと見られるので、茶葉、たけのこ、しいたけといった最も危険度の高い品目[つまり、野外で栽培されている作物]にも、汚染を防護する対策を拡大すべきである。たとえば、CRIIRADの技術者が福島市の渡利地区で「すぎな」(食べられる植物)を採取して測定したところ、セシウムが3,600ベクレル/kg含まれていた。

3.福島第一原発から新たな放射線放出が起きた場合の不十分な備えとモニタリング・ネットワークに続く)

<出典>
EX-SKF-JPさん掲載、東京茶とら猫さん翻訳 
<パート1>http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/ngocriirad.html 
<パート2>http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/07/ngocriirad.html

CRIIRADによる報告書(オリジナル、英文)
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_anglais/criirad11-47ejapan.pdf

CRIIRAD研究所による日本訪問にかかる報告書/暫定版(2011年5月24日〜6月3日) その1

以前御紹介したCRIIRAD研究所による調査報告書について、EX-SKF-JPさんが「東京茶とら猫」さんの訳を掲載してくださっていますので、一部訳されていなかった部分については当方の訳を追記し、全体を御紹介します(一部要約しています。また、東京茶とら猫さんの訳のうち小見出しについては、読みやすいようにこちらで多少訳を変更させて頂きました。ご了承ください)。

少し長いので、3回に分けて掲載します。

EX-SKF-JPさん掲載、東京茶とら猫さんの翻訳はこちら 
http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/ngocriirad.html

CRIIRAD研究所による報告書(オリジナル、英文)はこちら
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_anglais/criirad11-47ejapan.pdf

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「CRIIRAD研究所による日本訪問にかかる報告書/暫定版(2011年5月24日〜6月3日」

今回の調査で得られた暫定的結果の主なものについては、すでに福島市(5/29に講演、5/30に記者会見)と東京(5/31と6/1に記者会見、6/1に会議出席、6/2に放射線モニタリングに関する講演とワークショップ)でのさまざまな公開イベントで発表してきた。それらの調査結果とわれわれの見解を以下にまとめる。

CRIIRADの研究所に持ち帰った土や食品のサンプルの分析が終わったら、数週間のうちにより詳細な科学報告書を発表する予定である。

1.福島第一原子力発電所事故による放射能被害への適切な情報および防御策の欠如(主な調査結果)

事故直後の日本政府による対応と説明

3月12日、福島第一原発の原子炉と使用済み燃料プールは事故で損傷し、以後そこから膨大な量の放射性物質が空中と海中に放出されている。公式発表されたデータによると、空気中への放出が最も甚大だったのは3月12日から3月30日までの期間である。

日本政府は半径20km圏内に住む住民の避難を指示し、半径20~30km圏内の住民を屋内退避とした。しかしこの対策は不十分だったことが明らかになっている。



(1)20km圏外の住民についても、風向きと気象条件に応じて避難させるべきであった。風や放射性粒子が政府の施策に従ってくれるわけではない。



(2)屋内退避が有効なのは、空気の汚染が短期間で収まって放射線量が小さい場合に限られる。福島第一原発の場合、放射性物質の空中放出は数日にわたって継続した(しかも線量ははるかに低くなったとはいえ現在も続いている)。このような状況下では、屋内と屋外の空気が入れ替わることにより、屋内退避は有効とは言えない。屋内の空気も屋外の空気に匹敵するほど汚染されてしまう。



(3)安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれるのを減らすため、とくに幼い子供の甲状腺がんリスクを低減させる効果がある。甲状腺がんのリスクについては、チェルノブイリ原発の事故以来よく知られている。効果を十分に発揮させるためには、放射能汚染が始まる数時間前に安定ヨウ素剤を服用する必要がある。日本では、安定ヨウ素剤の配布が適切に実施されなかった。

CRIIRAD調査団が日本滞在中に得た証言から判断すると、いくつかの自治体はヨウ素剤の配布に踏み切った。たとえば三春町の町長は3月15日に住民へのヨウ素剤配布を決め、実際に飲むように指示した。福島県の当局はこの取り組みを非難した。いわき市では、担当者が3月12日からヨウ素剤の配布準備を進めていた。市は3月18日に住民へのヨウ素剤配布を実施したが、住民に対しては「当局の明確な指示があるまでは服用はしないように」と命じた。結局、ヨウ素剤の服用が指示されることはなかった。それ以外の地域(飯舘村など)で多量の被曝をした住民に対しては、今に至るまで安定ヨウ素剤は配布されていない。



(4)空中に放出された放射性物質は、放射性降下物として地面に落ち、食物連鎖を急速に汚染する。とりわけ汚染されやすいのが葉物野菜と牛乳だ。日本政府は3月18日になってようやく特別な食品検査プログラムを開始した。初回の検査では数種類の食品サンプルから多量の放射能汚染が確認された。たとえば、3月18日に茨城県で採取されたほうれん草からは、ヨウ素131が1kg当たり54,000ベクレル検出されている。

CRIIRADの試算によれば、2~7歳の幼児がこのほうれん草を200g食べれば年間被曝許容量の1ミリシーベルトを超える被曝をする。その後発表された新たな検査結果によれば、飯舘村(福島第一原発から40km北西)で採取した草からキロ当たり250万ベクレルものヨウ素131が検出された。この地域の野菜の汚染レベルは間違いなくきわめて高いものである。注目してほしいのは、2~7歳の幼児の場合、そうした食物をたった5グラム食べるだけで1ミリシーベルトを超える被曝をするということだ。

政府は3月12日の時点で迅速に、ガンマ線量計で放射性降下物が検出された高リスク地域(福島第一原発の北100kmにある女川や、南230kmにある東京も含む)の食物を食べないように勧告すべきであった。日本政府はそれをしないばかりか、そうした汚染食物を食べてもCTスキャンを1回受けるのと同程度しか被曝しないと主張した。




私たちの被曝量を計測するために日本政府と東京電力に請求すべきデータ

(以下、2.までの部分については、フランスねこによる訳を追記)

多くの日本人が、放射線被曝への防護策が無いために高い放射線被曝にさらされている現状をふまえ、CRIIRADは放射線にさらされている市民に対して、東京電力と日本政府に対し下記のデータを要求するよう助言した。こうしたデータがあれば、これら市民がさらされている被曝量をより正確に計算することができる。

(1)空気中に放出された放射性物質の完全なリスト。原子炉内には100種類以上の放射性物質が存在する。東京電力はこれまでのところ、3月19日分の大気中放射性物質濃度しか発表していない。これによれば、5種類の放射性物質しか言及されていない(ヨウ素131、132、133、セシウム134、137など)。

(2)福島原発事故が起きた後の最初の数週間の間に排出されたこれら全ての放射性物質の大気中濃度(立方メートル当たりのベクレル数)。このデータによって、次の数値を計算することが可能になる。

• 空気中の放射性物質による外部被曝量。これには、β線による皮膚の被曝と呼吸器系統の内部表面への被曝が含まれる。
• 汚染された空気を吸い込んだことによる内部被曝。

(3)風向き、降雨、降雪量を含む詳細な気象データ。こうしたデータは土壌の汚染を計算するのに役立つ。こうして計算されたデータを現状のセシウム137およびセシウム134による土壌汚染のデータと比較し、短期間にのみ存在した放射性核種の落下量を再現することができる。

(4)日本全国におけるセシウム137とセシウム137の落下状況に関する詳細な地図。現状では、文部科学省は福島原発から半径80キロの地域においてのみこうしたデータを発表している。しかし、現在の一平方メートル当たり30万ベクレル、毎時1マイクロシーベルト、といった表示データの下限よりも更に詳細な、平方メートル当たり1000ベクレル、毎時0.1マイクロシーベルト、といった詳細な汚染データを含む地図を公表すべきである。こうしたデータは食品の汚染を監視するにあたり、土壌に残留する実際の放射能汚染の度合いを考慮するのに役立つ。

「2.汚染地域の住民に対する不十分な防護策

」へ続く)

<出典>
EX-SKF-JPさん掲載、東京茶とら猫さん翻訳 
http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/ngocriirad.html

CRIIRAD研究所による報告書(オリジナル、英文)
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_anglais/criirad11-47ejapan.pdf

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