無料ブログはココログ

« 「線量計は子どもたちを守りません。世界で初めて線量計をつけて通学する福島の子どもたち、そして責任ある日本の大人たちへ」アレックス(6月15日) | トップページ | フランスねこからのお知らせ (更新がすこ〜しスローダウンします) »

2011年8月11日 (木)

原発礼賛の論理を読み解く:「環境活動家」(?)ジョージ・モンビオは、科学データを読むのをやめたのか?(その1)/ガーディアン&クーリエ・アンテルナショナル(7月28日)

福島原発事故の後、他の複数の「環境活動家」たちと共に原発推進派に転向した英ガーディアン紙の環境コラムニスト、ジョージ・モンビオ(注1)。「福島原発事故の後で、私が原子力を愛するようになった訳」で原発礼賛宣言を行い、その転向ぶりで世界の環境関係者の注目を浴びた。以来、既に複数の環境専門家が、モンビオが記事で引用した科学データの解釈に関する多くの誤りを指摘している(注2)。

日本では長く「原発は(発電時に)二酸化炭素を出さないので、環境に優しい」との広告が使われて来た。福島原発事故の後、原発推進派はどのような論理を用いて生きのびようとしているのだろうか。そしてその論理に正当性はあるのだろうか。

環境問題を専門とするモンビオは、正しいデータに誤ったデータを混ぜて提示することで、原子力を正当化しようとしてみせる。原発反対派に受け入れられやすい政府批判、電力会社批判とともに、原発を擁護する。

モンビオの記事を、原発が抱える問題を指摘する他の科学者たちのデータや解釈と照らし合わせながら、確認してみよう。

(下記の訳は、英ガーディアン紙に掲載された記事の抜粋を『クーリエ・アンテルナショナル』が仏語で掲載したものに基づいています。この記事は、原発のコストを指摘する広瀬隆による「週刊朝日」の記事等と共に、原発推進派の意見として掲載されました。)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「原子力発電を行う企業は政府と癒着している。でもそれは火力/水力発電、代替エネルギーによる発電でも同じこと」

権力は腐敗している。そして原子力発電は権力の腐敗そのものだ。そもそも、原子力セクターとは核開発研究の副産物として発展したのである。核の軍事利用と民間利用の二つがこれまで無理やり分けられてきた一方で、世界のあちこちにいる原子力関係者たちは、政府との親密な関係、という最も大きな秘密を隠し、説明を拒否した上で維持し続けている。

こうした訳で、イギリス政府が福島での大惨事の影響を最小限に見せるために、企業と共謀していたことが、6月の末にガーディアン紙の手で明るみになったのである。民間企業を所管するイギリス政府の官庁によれば、事故への対応に関連する大臣たちへの公式の要旨説明や大臣たちが行う宣言の内容にすら、電力会社が作成した分析が使用されていたという。

まさに、この種の政府と企業の間の共謀関係があるために、事故が起きる。国際原子力機関(IAEA)による最新の報告書によれば、福島原子力発電所を運営していた東京電力という会社は、津波の脅威を過少評価し、いくつもの故障が起きることを十分に予想していなかった、という(注3)。一時的な法規制では怠慢を防ぐことはできなかったのである。世界中で、原子力発電を行う電力会社は、腐敗と「いんちき」にまみれた「ろくでなし集団」として批判を浴びてきた。

こうした観点からは、原子力発電を行う電力会社というのは残り電力セクターから明確に区別される。原子力にかかわらない残りの電力セクター関係者にしても、原子力企業よりましだということはない。彼等の唯一の関心ごとは、ちょっとした幸せを広めること、といった次第だ ― 石炭、石油、ガス、原子力、風力、太陽光、といった、電力会社にとっての全ての投資先組織は、政治家たちをあやつり、監視機関に圧力をかけ、世論を丸め込むのである(注4)。これら企業が持つ過度の権力は、多くの被害をひきおこしている。原子力に対する損害は、その一つだ。しかしながら、原子力を支持する議論は手堅い。


「福島原発事故が証明した『最も安全な科学技術』原子力」

安全性についての話から始めよう。原子力発電所の安全性と耐久力は、福島原発事故で一目瞭然となった。メルトダウンや爆発が起きた福島第一原発の方ではない。その隣にある第二原発(注5)のことである。「福島第二原発」なんて、一度も聞いたことがない、だって?説明しよう。こちらの原発も「福島第一」と同様、怠慢な会社が運営している。同じ地震、同じ津波に遭った。でもこちらは良好に維持されている。大波に襲われた他の全ての原発同様、「福島第二」は自動的に停止され冷却された(注6)。核ミサイルによる攻撃と同様、想定される全てのテストの中で最も厳しいテストに耐えたのである。

「福島第一」と「福島第二」の違いは、1970年代に作られた安全装置と1980年代に作られた装置の違いを如実に表している。「福島第一」の最も古い原子炉は、1971年に稼働を始めた。「福島第二」の原子炉は1982年である。そして現在の科学技術は「福島第二」に使われているもの以上に安全だ。21世紀に作られた原発を非難するために40年前に建設された原発の問題を糾弾するのは、現代の飛行機による交通システムを批判するのに、「ヒンデンブルクの悲劇」(35人の死者を出した1937年の旧式飛行機事故)の事例を用いるようなものだ(注7)。

ところで、国際原子力機関(IAEA)によれば、福島第一原発で起きた原子炉のメルトダウンは健康への影響は一切無いということだ(注8)。今回の事故は心に傷を残し混乱を招くものであったにせよ、事故の発生以来放出された「放射能にさらされた人たちについては今のところいかなる健康被害も確認されていない」と記載されている。

(その2に続く)


(注1)ジョージ・モンビオ「私が福島原発事故の後で原子力を愛するようになった訳」ガーディアン紙 3月21日(英文)
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/mar/21/pro-nuclear-japan-fukushima


(注2)「ジョージは原発ロビーに迎合するために、科学データを読むのをやめたらしい」環境専門家のポール・モブスがジョージ・モンビオによる原発記事で使用されている科学データの誤りを詳細に指摘(英文)。
http://www.energybulletin.net/stories/2011-03-31/new-report-picks-apart-george-monbiots-support-nuclear-power-and-finds-factual-an


(注3)IAEAによる報告書は、東京電力の主張に沿って「想定外の地震や津波の被害を受けて福島原発事故が起きた」、との点を強調する内容となっており、全電源喪失の原因となった設備の不備や、原発の管理体制、そして後に述べられる放射能による健康への影響については指摘がなされていない。IAEAと同時期に日本で調査を行い報告書を出したフランスの独立研究所CRIIRADによる分析とは対照的な内容となっている(CRIIRADによる報告書については「注8」を参照)。

IAEAによる報告書(和訳、東京茶とら猫さん訳、ex-skfさん掲載。)
http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/iaea.html 

<参考>フランスねこ 報告書の一部解説
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/iaea52461617-e6.html


(注4)日本を含む世界各国で強い政治的影響力を誇る原発ロビーの力は広く知られている。少数の独占電力企業が、原発以外の電力源の開発を後回しにして原発を推進する現状では、「風力ロビー」、「太陽光ロビー」などが原発ロビーと同等の影響力で存在している、とは言いがたい。同じ企業が、一方で原発を推進しながら他方で太陽光のロビーとして動くということは考えにくいからである。


(注5)震災前に福島第二原発で発生していた事故

・1989年1月、3号機の原子炉の心臓部にあたる再循環ポンプの内部で異常が起き、異常振動の警報が発せられたにもかかわらず、運転員が警報を無視したためにポンプの内側が大破した。大破の際にポンプの羽根の破片やケースが削られたことによる金属片・金属粉が大量に炉心に入り、その一部はほとんど回収不能となった。ポンプの破損が外側に及んでいたら、一時冷却水が漏れだし空焚き事故やメルトダウンにつながる危険もあった。その後、発電所は長期にわたって停止されるに至った。

・2008年1月、3・4号廃棄物処理建屋(RW/B)の海水ポンプA(以後RWSWポンプ)の吸い込み側配管及び電動機と羽根車をつなぐシャフトが折損するトラブルが発生。これを受け3号RWSWポンプBを緊急点検、東京電力、東電環境、東電工業等が点検を実施する事となった。

・2008年2月、サイドバンカーにて2号の使用済み核燃料を積載したキャスクをクレーンで吊り上げ作業中にクレーンがトリップするという事象が起きた。
(ウィキペディア http://ja.wikipedia.org/wiki/福島第二原子力発電所、高木仁三郎「食卓にあがった放射能」p107-108)


(注6)東日本大震災発生時の福島第二原発における事故対応(朝日新聞、8月10日)

「東京電力は(8月)10日、東日本大震災で被災した福島第二原発(福島県楢葉町、富岡町)の事故直後の対応状況を発表した。福島第一原発のような炉心溶融や爆発は避けられたものの、冷却装置が津波で損傷し、水温が100度以下で安定する冷温停止になるまで最も遅かった4号機で4日近くかかった。」「津波による故障で3号機以外は海水ポンプを使った冷却ができなくなり、地震や津波で外部電源や非常用ディーゼル発電機も一部失われた。」
http://www.asahi.com/national/update/0810/TKY201108100522.html


(注7)事故が起きた福島第一原発の第一号機(米ゼネラル・エレクトロニック社製)と同型・同年代の原子炉はアメリカでも広く使用され、現在も稼働している。チェルノブイリ事故の原因となった第四号機と同型の原子炉についても、いまだロシア国内で広く稼働している。従って、古い科学技術が今は使用されていない過去のものだと言うことは難しい。

また、最新式の「第三世代原子炉」と目されるフランスの「欧州加圧水型軽水炉(EPR)」についても、電源喪失の可能性があることが指摘されている。
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/epr725-7cc1.html

EPRを設置予定の「夢の原発」フラマンビル原発竣工に関連した問題の数々
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/15722-f523.html


(注8)IAEAと同時期に日本および福島で福島原発事故について調査を行ったCRIIRADは、事故が与える健康への影響について強く警告している。

CRIIRADによる報告書(パート1〜3)
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/criirad20115246.html 
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/criirad201152-1.html
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/criirad201152-2.html 


(George Monbiot, « Les antinucléaires se trompent ! » Courrier international n°1082, 2011.07.28)

« 「線量計は子どもたちを守りません。世界で初めて線量計をつけて通学する福島の子どもたち、そして責任ある日本の大人たちへ」アレックス(6月15日) | トップページ | フランスねこからのお知らせ (更新がすこ〜しスローダウンします) »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 「線量計は子どもたちを守りません。世界で初めて線量計をつけて通学する福島の子どもたち、そして責任ある日本の大人たちへ」アレックス(6月15日) | トップページ | フランスねこからのお知らせ (更新がすこ〜しスローダウンします) »