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2011年8月19日 (金)

原発礼賛の論理を読み解く:「環境活動家」(?)ジョージ・モンビオは、科学データを読むのをやめたのか?(その2)/ガーディアン&クーリエ・アンテルナショナル(7月28日)

「その1」掲載から少し時間がたってしまいましたが、福島原発事故の後に原発礼賛派に転向した英ガーディアン紙の環境コラムニスト、ジョージ・モンビオによる記事の続きをお送りします。

 

環境分野に詳しい原発礼賛派の活動家がどのような論理で原発擁護を語るのかを知ることは、「御用学者」対策同様に私たちが情報を見分け自らを守るための参考になるでしょう。モンビオによる議論の特徴は、地球温暖化や環境に関する部分的に正しい情報や政府・電力会社批判とともに、原発推進を正当化する非科学的な情報が混ぜて提示され、原発推進に信憑性があるような印象を与える点です。

 

少し復習しておきましょう。

前回取り上げたモンビオの主張の要点(と対応する現状)は、以下のとおりでした。

(「その1」はこちらhttp://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/1728-94b4.html

 

 電力業界は政府と癒着することによって原発を安全と見せかけ、適切な安全対策を怠っている。福島原発事故でも明らかになった通り、これが原因で事故が発生する。しかしこのような癒着・腐敗は自然エネルギーや火力・水力発電においても同じことである。

 

(現状:原発推進ロビーの巨大な政治力、財力、ネットワークは日本・フランスでもよく知られている。太陽光や風力発電についての状況は同じではない。安全対策を怠ることによる被害も、原子力は他の発電方法と比較できない程深刻である。)

 

 原子力の技術は日々進化しており、現在の技術は安全である。福島第一原発は1970年代に作られた古い原子炉だったために故障したが、1980年代に作られた福島第二原発については停止・冷却とも問題無かった。従って、原発は安全である。

 

(現状:福島第二原発は過去にも深刻なパイプ破損事故を起こしており、震災の際も原子炉をすぐに停止させることができなかった。モンビオの記事は、事実に反している。)

 

 国際原子力機関(IAEA)によれば、福島原発事故による健康被害は現在のところ確認されていない。

 

(現状:福島原発事故以来、子どもの甲状腺被曝を初め多数の急性被曝症状が公的機関によって確認されている。チェルノブイリ事故の教訓から、今後は癌を初めとする多数の晩発性症状の発生が見込まれる。)

 

それでは続きをどうぞ。

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国際原子力機関(IAEA)によれば、福島第一原発で起きた原子炉の溶解による健康への影響は、一切無いらしい。今回の事故は人びとの心に傷を残し混乱を招くものであったにせよ、事故の発生以来放出された放射能にさらされた人たちについては、「今のところいかなる健康被害も確認されていない」(IAEAによる報告書を引用)。

 

この状況を毎年10万人もの死者を出している石炭による火力発電が引き起こす環境汚染と比較すれば、あなたは原発がスケープゴートにされていることに気づくだろう。更には、原発の安全性を気候変動による被害や死者数にも比較してみてほしい。私たちが原発に対して示す反応が、気ちがいじみているさえ言えるくらいオーバーなものであることが分かるだろう。

 

原発を選ぶか否かの選択の結果は、単純だ。ドイツは原子力を一切やめると決めたが、これは4000万トンもの二酸化炭素を毎年排出することを意味する。この6月、アンゲラ・メルケル首相は今後10年間で石炭とガスによる火力発電所の発電可能量を倍増させるべく発電所の建設を行うと宣言したのだ。現状での発電量が下がるのを補うために、ドイツはすでに最もひどい汚染をひきおこすとされる褐炭燃料を使用している。

 

原発の問題について、原発に反対する者たちは4つの議論を展開している。まず第一に、「電力の使用量を減らさなければならない」というものだ。これはどんな科学技術が可能になろうとも必要なことだ。しかしたとえ世界の電力需要が大きく減少したとしても、交通機関や暖房機器から放出される二酸化炭素の削減は、電力供給の増加なしにはあり得ない。イギリスでは代替技術研究所(Centre for Alternative Technology)が、我が国の二酸化炭素の排出量削減を目指し2030年までに電力使用量を55%削減する、というとても楽観的なプロジェクトを行っている。しかし、同センターは同じ期間中に電力への需要が倍増することを見込んでいるのである。

 

反原発を唱える関係者が挙げる第二の議論は、新しい原発を建設するのは10年から15年の歳月を要し、これは長過ぎる、というものだ。しかし再生可能エネルギーのための事業を立ち上げるのにだって、10年から15年の歳月が必要になるはずだ。

 

3つ目の議論は、ウランの貯蔵庫が空っぽにな(り原発の燃料が不足す)るかもしれない、というものだ。その通りだ。我が国の気候変動委員会ですら、ウラン鉱山の埋蔵量は50年で底をつくと予想している。しかし私たちはその前に、今ある原発から出される放射性廃棄物で稼働する原発の利用を含めた「第四世代の原子力技術」へと移行しなければならない(注:現状では、核廃棄物の再利用によるMox燃料を用いた原子力発電は世界で多くの技術的問題を証明している。我が国の「もんじゅ」高速増殖炉がその一例である)。

 

原発反対の議論で挙げられる4つ目の理由は、核廃棄物を安全に処理することができない、というものだ。たとえ核廃棄物を貴重な燃料として利用するという考えを脇に置いて、廃棄物を捨てたいという考えから出発するとしても、核分裂性物質を地下に埋めることが危険だという考えは、支離滅裂だ。そもそも、核分裂性物質は地下の土の中から来たんじゃなかったっけ?なぜ鉛の箱に閉じ込めコンクリートにはめ込んだウランを、さらにその上からコンクリートで覆った形で地下何千メートルの場所に埋めるのが危険なのだろう?自然界では地球のあちこちの表面に近い部分にウランが埋まっているというのに?将来そんな奥まったところに埋められた廃棄物を取り出す技術が開発されて、核廃棄物の有毒性に気づかぬまま取り出ししまう、なんてことが起きるとでも言うのだろうか?

 

これらの議論は全て、電力業界が情報を操作し政府と共謀したことで醸成された不信感から来るものだ。しかし、電力業界の陰謀を批判しながらも原子力を支持することは可能だ。新しい原発の建設はこれまでにない監視と透明性を確保した形で実施されなければならない(注:福島第二原発での事故は、作業員が警報を無視したために大事故につながった。原子力の危険性は、「監視と透明性の確保」で解決するレベルのものだろうか。)―他のどんな電力源による発電の場合と同じように。大きな電力業界に権力を任せておけだって?ノーサンキュー。

 

(George Monbiot, « Les antinucléaires se trompent ! » Courrier international n°1082, 2011.07.28)

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