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2011年8月 3日 (水)

「5月14日、福島原発における請負作業員の死がドイツ人に与えた衝撃/Jungle World &クーリエ・アンテルナショナル(7月28日)

5月14日に亡くなった一人の原発作業員のことを覚えているだろうか。機材運搬中に倒れ意識不明のまま死亡した60代の作業員男性の死は、国内では「被曝が原因ではなかった」との報道とともに忘れられようとしている。しかし福島原発で亡くなった最初の作業員が厳しい労働環境におかれる「請負労働者」であった事実は、日本の外に大きな波紋を広げた。

現在、フランスの全原子力関係者が浴びる放射線量の80%を、出稼ぎの請負作業員が浴びている。それなのに、20年働いても給料は月15万4千円にしかならない(レートは8月3日現在)。原子炉の検査時期に合わせヨーロッパ中から集まる「原子力の流浪の民」の被曝量を規制する法律は無い。原子力発電所のまわりにキャンプを張り、どんどん短くなる「作業工程」の中で原子炉緊急停止用の制御棒までを取り替える。ドイツの週刊誌「ジャングル・ワールド」が描く「フランスやドイツにも存在する『福島原発』の実態」がここにある。(原文は独語、クーリエ・アンテルナショナルが仏訳し転載。)

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1. 原発で働く請負作業員の現状 〜福島からフランスへ〜

5月14日に福島原発で起きた請負作業員の死は(注1・注2)、ドイツ国内に論争を巻き起こした。私たちは突如として、これまでも大した秘密ですらなかった事実に気がついたのである―原子力発電所では、最も困難で最も危険な仕事を、ろくな給料も払われず、社会保障もほとんど受けられず、原発の停止時期に合わせて原発から原発へと渡り歩くしかない、そんな請負作業員たちにやらせている、という事実を、である。

これは、日本だけの問題ではない。たとえばフランスには3万人以上の「原子力の流浪民」がいる。エリザベス・フィロルは「発電所」という題名でこうした請負の原発作業員たちの話を集めた小説を福島原発事故の前に出版していた(Elisabeth Filhol, « La Centrale »)。

ドイツ人ジャーナリストのハンス・ヴォレーはフランスの原発で働く請負作業員の状況をドイツ国営放送のために取材した。それによると、燃料棒を入れ替えるため原子炉を停止させる度に、フランス中から何百人という請負作業員たちがやってきて、何週間もしくは何ヶ月もの間、原発の近くにキャンピングカーをとめてキャンプをする。もしくは自分の車の中で眠る者すらいるのである。

ハンス・ヴォレーによれば、彼等は年に4万から7万キロの距離を移動するが、月に手取りで1400ユーロ(約15万4千円)も稼ぐことはない。20年の経験があっても、である。これらの作業員たちは以前よりますます厳しいプレッシャーの中で働かされている。以前は燃料棒をとりかえるのに原子炉を2ヶ月停止させた。現在は同じ作業に原子炉を1ヶ月以上止めることはない。原発の流浪民は常に危険と背中合わせだ。労働法によって決められている「年間20ミリシーベルト」という被曝許容量の上限を超えないよう、びくびくせざるを得ない。この上限被曝量に達した作業員は、仕事を失うのである。


2. ドイツにも存在する「被曝を強制される最底辺労働者」

フランスでは、公営の大グループであるフランス電力公社(EDF)が原子力産業の運営を行っている。しかし、労働者が働く業務環境には何の良い影響も見られない。原発の維持管理のために原子炉を停止する期間中、最も危険な業務は請負作業員たちによってなされる。4月14日付けの「週刊フォーカス」が報じたところでは、国立健康・医療研究所(Inserm)はフランスにある原発で働く関係者全体が受ける放射線量の80%までを請負作業員たちが浴びていると述べている。2年前、請負作業員たちを正式雇用に切り替えるようEDFに求めるストライキがフランス原子力産業に対して起こされたが、むなしい結果に終わった。

ドイツの原発でも同じことが起きているのだろうか?

恐ろしいほどの類似点が存在する。原発で働く関係者のうち、その大多数を外部企業の雇用者が占めている。実際、6月6日にドイツ政府が発表したところでは、一時的に停止されているものを含む全国12基の原発と17基の原子炉において、24,346人の請負作業員が働いているが、これに対し正社員の数は5,298人にすぎない。こうした不安定な契約で雇われた「請負」たちが、燃料棒を取り替え、高い放射線区域で管を修理し、燃料棒保管用プールの洗浄を行っている。

シーメンス社によれば、非常時に原発を停止させるための制御棒の交換もまた、こうした非正規社員によってなされている。ドイツでも、原発を稼働させているのは基本的に低い賃金しか払われていない労働者たちなのである。

外部からやってくる作業員たちが作業を行うのは年一回、原発を止めて検査を行う時である。エーオン、アール・ヴェー・エー 、EnBW(全てヨーロッパ有数のドイツ電力企業)といった原発運営企業が専門技術を持つ労働者のみならず技術レベルの低い作業員についても集合の号令をかける。部品を製造したメーカーより派遣された技術者を除き、これらの労働者の大多数が人材派遣会社から送られてきている。フランス同様ドイツでも、原発の検査期間は過去数年間のうちにどんどん短縮されている。これには原発の停止期間を最小限にとどめ、コストを下げる狙いがある。

たとえばネックカルヴェストハイムにある原発ではこの5年のうちに検査に要する期間が33日から17日に短縮された。検査はますます形骸化しており、事故の危険を高めている。「週刊金曜日」によれば、ドイツでも被曝量の高い作業を請負に出している。1980年以来、一時雇用の作業員たちが浴びる放射線の量は増え続けており、原発がますます最底辺の労働者に危険な仕事をまかせていると推定せざるを得ない。こうした請負作業員たちは生活を維持するために何度も出稼ぎを重ねざるを得ない。しかし働けば働くほど、より多くの放射能にさらされるのである。


3. 「コスト削減」により減らされる正規雇用技術者、増え続ける非正規雇用労働者

こうした請負労働者たちは全ヨーロッパで働いている。おそらくは、ある国で被曝量の上限に至った労働者の一部は別の国で(被曝を隠して)働いていると思われる。ヨーロッパ全域における統一した放射線防御のための規則が存在しないために、原子力の流浪民たちは致死量の放射線を浴びる可能性もある。

2022年までに原子力発電をやめる、というドイツ政府の決定を受け、(ドイツ国内で現在)原子力にかかわっている企業群は、今後残された11年間のうちに最大限の利益を現在ある原発から引き出そうとするだろう。ヘンリック・パウリッツは原子力戦争を防ぐ医師協会(IPPNW)のドイツ支部に属しているが、こうした見方に同調している。6月7日付の雑誌「グリーンピース」に掲載されたインタビュー記事によれば、パウリッツは次のように述べている。

「経験ある人材は既に非正規雇用の作業員に取って代わられたようだ。方向性も無いままにどんどん強められてゆくコスト低減の圧力によって、こうした政策に歯止めがかからない。これはつまり、将来さらなる手抜かりが起きることを意味している。」

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注(1)「福島原発の作業員死亡 前日働き始めたばかり…体調不良訴え」
スポニチ、2011年5月14日

 東京電力は14日、福島第1原発の集中廃棄物処理施設で機材を運搬していた60代の男性作業員が体調不良を訴えて意識不明となり、病院に運ばれたが死亡したと発表した。けがなどはなく、死因や詳しい状況を調べている。事故の収束作業中に死者が出たのは初めて。男性は東電の協力企業の下請け作業員で、被ばく線量は0・17ミリシーベルト。放射性物質の付着はなかった。
 東電によると、男性は13日から原発で作業に従事。14日午前6時から別の1人と機材を運び、6時50分ごろ体調不良になった。7時すぎに敷地内の免震重要棟の医務室に運び込まれたが既に意識や呼吸はなく、救急車で福島県いわき市内の病院に搬送され、9時33分に死亡が確認された。別の1人に異常はない。

 
 男性は作業衣の上に防護服と全面マスク、手袋などを着用。防護服は水分補給やトイレに不便があるほか、ストレスを抱える人も多く、改善の必要性が指摘されている。

 東電の改善策は、レトルト食品が中心だった食事を弁当中心に変え、シャワーを設置して産業医を常駐させるなどの内容。第1、第2原発の作業員がベッドで寝泊まりできるプレハブの仮設寮の建設も決まっている。
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/05/14/kiji/K20110514000817580.html


注(2)「福島第一原発:東芝協力企業の作業員死亡 労災申請へ」毎日新聞、7月12日
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/nuclear/news/20110712k0000m040148000c.html 

(Lutz Getzschmann, « Courageux « nomades de l’atome » », Jungle World, In Courrier International, n°1082, 2011.07.28 原題『勇気ある「原子力の漂流者たち」』)

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コメント

これ、読んだよというときに ポチッとクリックするような
機能ないんですかねえ
読んでます スゴイですよ
このブログやめないでくださいね

songyaitarさん
ご愛読いただきありがとうございます。このブログにはそいういう機能は無いようですが(でもメカ音痴で知らないだけかもしれません。。)、ランキングなどに興味がないので。。すみません。頻繁には更新できませんが、マイペースで良い記事をご紹介できればと思っています。これからもご意見や感想などございましたらお寄せいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

はじめまして。
たまに読ませて頂いてます。
今回の記事見てドキュメンタリー『RAS nucléaire, rien à signaler 』異常なし原子力、異常なし
監督Alain De Halleux さんが2009年に制作された物知ってるかもしれませんが参考になるのではと思ってコメントさせて頂きました。
http://www.youtube.com/watch?v=TnQG-DJW7lk&feature=player_embedded

はじめまして。
何時もニュース凄く上手くまとめて訳されて感心しています。
この記事見て『RAS nucléaire, rien à signaler 』監督Alain De Halleux さんが2009年に制作された物参考になるのではと思いコメントさせて頂きました。
youtubeのサイトにフランス語で入ってます。
労働者20ミリシーベルトの年間の規定で最近のOMC(世界貿易機関)癌のリスク10%から12%起こると語られてます。

ユキさん、キキさん、
ご連絡ありがとうございます。また、ドキュメンタリーに関する貴重な情報をありがとうございました。早速チェックしてみたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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