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2011年9月 4日 (日)

今、改めて食品汚染を考える(その1)/『食卓にあがった放射能』高木仁三郎

このところ毎日のように、日本のあちこちで放射能による汚染食品(主に牛肉)の報道がなされています。朝刊の地方版ページで、近所のスーパーやデパートで汚染牛肉が販売されていたことを知った方も多いのではないでしょうか。また、福島での原発事故発生直後の汚染食品への緊急警戒体制から、日常的に汚染を避ける体制へとシフトしていらっしゃる方も多いことでしょう。

それでも、全ての食品について放射線量が表示されている訳ではない現状、時に一部の食品については産地までが偽装される現状では、「この食品は大丈夫?」と迷う場面に遭遇されることもあることと思います(ところで東京大学アイソトープ総合センター長の児玉教授は先日国会で食品の放射能汚染に関する検査を最新の機器を用いてどんどん実施すべき、と提言していたはずですが、除染への対応はともかく、汚染食品への対策は忘れ去られてしまったのでしょうか)。

そんな時、せめて過去の具体的な事例やデータに照らして考え判断することができれば、より安心だと思います。「知識は力なり」です。間違った情報にも惑わされずにすみます。

既にお読みになった方も多いことと思いますが、名著『食卓にあがった放射能』(高木仁三郎&渡辺美記子著、七つ森書館、1400円+税)http://pen.co.jp/index.php?id=596 
は、チェルノブイリ原発事故の際に起きた食品汚染の状況を具体的なデータを示しつつ分かりやすく解説した良書です。もちろん、チェルノブイリと福島での状況には異なる部分も多々あり、全てをそのまま日本の状況に当てはめることはできません。しかし、どのようなメカニズムでどんな食品にどのような形で汚染が発生したのか、注意すべき点は何か、など参考になる点は多くあります。

という訳で、ここで本書の要点を一部簡単に御紹介したいと思います。ただし、きちんと全体を理解するために、御自分で本を買って(もしくは図書館で借りて)じっくり読まれることを強くお勧めします。

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1. 原発事故の後の1年間で食品から平均6.4mSvの内部被曝

日本で原発事故が起きた際にそれまでと同様の食生活を継続した場合、食品からのセシウム摂取量は年42万ベクレル、想定される被曝量の平均は1年間に6.4ミリシーベルトにまでのぼると推定される。この数値は一般人の年間の線量限度の6倍以上に相当し、日本全体でも10万人に近い癌患者をもたらす可能性がある。しかしこの計算は、事故後の10日間は汚染食品をいっさい遠ざけることができると仮定し、特に汚染の強いものについては政府の規制により出回らない、という仮定をした上での計算である(詳しくはp.126−129)。汚染の強い食品が市場に出回っている場合には、数値は更に高くなると予想される。

ちなみに、ここで述べられている6.4mSvという数字には外部被曝は含まれていない。食品による内部被曝は被曝量全体の80%程なので、これに更に20%相当の外部被曝分が追加されることになる。


2. 汚染食品に気をつけた人、気をつけなかった人の体内に現れる汚染度の差

汚染食品に気をつける人と気をつけない人では、体内への放射性物質の蓄積量、ひいては内部被曝の度合いに差が出る。西ドイツのハンブルクで1987年に報告されたデータによると、チェルノブイリ原発事故の後で汚染された食品に気をつけた人と気をつけなかった人では、事故発生後1年以上にわたって体内に蓄積されたセシウム(134+137)の量に常に250ベクレル以上の違いが見られた(p.47、図2−6)。

住んでいる場所によって、やはりセシウムの蓄積量には差が出てくる。チェルノブイリ事故から約8ヶ月(250日)後、ウィーンに住む人の体内には3000ベクレル近いセシウム137が蓄積されていたが、イタリアのボローニャでは2000を下回り、ベルリンでは1000を下回った(p.60)。


3. 牛肉汚染:時間の経過ではなく、飼料の質で汚染が決まる

西ベルリン市における測定では、チェルノブイリでの事故の後も牛肉の汚染は数年にわたって続き、汚染度の低い餌が不足した1987年の冬(事故の約半年後)には一旦減っていた汚染度が増加している。時間の経過ではなく、牛の飼料によって大きく左右されているのがわかる(p.55)。

他方、チェルノブイリ事故の後、ヨーロッパから日本に輸入された飼料用の脱脂粉乳に汚染が見られ、生産国に送り返されたものもあった(p.140)。当時、汚染レベルの高い脱脂粉乳が廃棄されずに世界的に安売りされ、輸入されて家畜の飼料にまわったと考えられる。汚染された飼料を食べた牛の肉は、当然ながら汚染されてしまう。

ちなみに、当時の西ドイツには商品の放射線量を表示して販売し、1キロ70ベクレルを超えた肉は産地に送り返すことで安全な肉だけを販売するペータ—・ヤコブさんと言う方の肉屋があったそうです。


4. 牛乳と乳製品に含まれる放射能

牛乳に含まれるストロンチウム、セシウム、ヨウ素をそれぞれ100とすると、ヨーグルトの上澄み液(酸性乳しょう、乳清、ホエーとも呼ばれる)にはストロンチウムが86.2%、セシウムが82.9%、ヨウ素が80%移行する(ヨーグルトを食べる時には、ホエーを水切りして取り除いてから頂いた方がよさそうです。p.56)。乳製品でも、多くの放射性物質が移行するものとそうでないものがある(詳しくは本文参照)。


5. 最も放射能に汚染された「動物」、淡水魚

チェルノブイリ事故の後、スウェーデンにおいて最も汚染された植物はキノコ類だった。では動物では?意外にも、湖の淡水魚である。これは、湖が雨によって運ばれるセシウムの「吹きだまり」となり、激しい汚染が起きたため。チェルノブイリ事故が起きた年、スズキ科の淡水魚パーチからは、最高でも1キロあたり4800ベクレルのセシウムが検出されていた。2年後の1988年夏には、なんと最高8万2000ベクレルもの汚染が検出されている(p.57)。

(後半では、「手を変え品を変えて」流通する汚染食品について取り上げる予定です)。

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コメント

貴重な情報、ありがとうございます ! やはり、食べ物には、気をつけるに越したことはないのですね。

カルメンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
もし可能でしたら、ぜひ本の方を読まれることをお勧めします。大事な情報がたくさん詰まった本だと思います。本を読んで少しでも危険を避けることができるのであれば、安いものです。

下記はYukariさんがご自分のブログで紹介してくださっているジャーナリスト上杉隆さんの記事ですが、福島の農家ですら自分の家で作った農作物を一切食べていない方がいらっしゃるそうです。ご参考まで。

http://afternoon-tea-club.blog.ocn.ne.jp/blog/2011/09/post_0c7c.html 

「福島県内ですら以前の汚染に注意しない生活習慣に戻ってしまった人が多く」・・・まさにその通りです。早速購入しました。有難うございます。

写真工房さん

こんばんは。コメントありがとうございます。お返事が遅くなって申し訳ありませんでした。
食品汚染は大事なテーマなのですが、ブログではなかなか全てをお伝えすることができません。良書ですのでぜひお読み頂ければと思います。問題の全容が分かると、椎茸の原木が汚染されていたり栗が汚染されていたり、というニュースの記事が個々バラバラに頭に入るのではなく全体の中で理解できるので、少しは対策もたてやすいのではないかと思います。いろいろ大変ですが、気長に行きましょう。

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