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2011年9月11日 (日)

チェルノブイリ原発事故によるフランス国内での被曝責任者ぺルラン教授、免訴―「国の責任放棄」「原発ロビーの圧力」高まる甲状腺がん被害者の怒り/ルモンド紙(9月7日)

パリ控訴院(日本の高等裁判所に相当)は9月7日、1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故の直後、フランスを通過した放射能雲による被曝の危険性についての警告を怠ったとして「悪性の詐欺罪」に問われていた当時の保健省 放射線防護中央局(SCPRI)の局長ピエール・ペルラン教授(87歳、注1 http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/41-cc0e.html)について、甲状腺がんを発症した患者の訴えを退け「免訴」の判決を行った。

被告側は、教授を詐欺罪に問うにはあらかじめ国民と教授の間に契約関係が設立している必要があったと主張していた。これでペルラン教授に関する審理は実施されないこととなり、本件は事実上棚上げとなる。

ペルラン教授は、「チェルノブイリの放射能雲はフランスの国境で止まる」「チェルノブイリ原発事故による放射性降下物による健康被害は無い」などと述べて、フランス国民に体する葉もの野菜や牛乳などの汚染食品の摂取を控えるための呼びかけを行わず、予めヨウ素剤の配布も行っていなかった。フランスでは、当時の被曝により大量の甲状腺およびその他のがん患者が発生した。

(参考:当時の被害の状況(ブログ記事)
http://linked222.free.fr/lien/tchernobyl_france/tchernobyl_france.html )


この判決について、環境運動家および甲状腺がん患者たちは各地で強い非難の声を挙げている。

「チェルノブイリ事故から25年たっても、裁判所は国の責任を認めようとしない。このような『免訴』は、数多くの甲状腺患者をはじめとした(放射能による)健康被害者が裁判を受ける権利を否定するものだ。欧州連合における大統領選ではこのような災害による健康被害に対応するための新たな立法案を提案する。」(ヨーロッパ環境・緑の党、 欧州議会議員&欧州連合大統領候補、エヴァ・ジョリー)


「今回の『免訴』は司法裁判への権利の否定であり、我が国における原発ロビーによる圧力を証明するものだ。」(ヨーロッパ環境・緑の党、ノエル・マメール)


「『免訴』だなんて、私たちを馬鹿にしている。被害が出ていたことは国の最上位レベルにまで把握されていたんですよ。」(デニス・フォコニエー医師)


尚、今回の判決は、日本国内で8月25日に高裁判決が言い渡された石綿訴訟(大阪南部で石綿による肺がんなどの健康被害を被ったとして労働者と工場周辺住民が国を訴えている裁判。大阪高裁、三浦潤裁判長)において労働者・住民側原告が敗訴したのに続き、公害による環境汚染で健康被害を被った国民に対し、事実上国の責任放棄を認める判決例となった。

大阪南部の石綿訴訟「石綿訴訟:国の責任認めず原告側逆転敗訴」毎日新聞8月25日
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110826k0000m040084000c.html 


これらの判決については、今後、福島原発事故による被曝被害にかかる訴訟が起こされる可能性が予想される中、これを意識した判決であったという見方もできる。石綿裁判は広島や長崎における被爆者認定訴訟や水俣病と同様、国の救済を求める公害の健康被害者の大多数が、長期の裁判の後にその権利を棄却されるという同様の構造を持った裁判と言える。


<石綿訴訟に関する毎日新聞記事からの引用>
「とにかく いきがくるしいです こんな体になるとは思いもしませんでした 私がいきている間にかいけつして下さい 其(そ)の日をまっています」。
 大阪・泉南アスベスト訴訟の控訴審判決当日の25日早朝、裁判長に早期解決を願う手紙を出していた原告の原田モツさん(80)が入院先で亡くなった。長女の武村絹代さん(54)は亡母に代わって法廷に駆けつけたが、予想すらしなかった逆転敗訴。「母ちゃん、闘うよ」。娘は母の無念をかみしめた。
 原田さんは70年から約13年間、大阪府岸和田市内の石綿紡織製品製造工場に勤務し、石綿が舞う職場で働いた。5人の子どもを育てるためだった。やがて、せきがひどくなるなどの症状が表れ、石綿肺などを患った。 
 原田さんは今年4月、心情をつづった手紙を裁判長に提出したが、その後は危篤状態に陥るなど深刻な状態が続いていた。


ルモンド紙出典記事

(Hervé Morin, « Nouage de Tchernobyl : non-lieu pour le Pr Pellerin », 2011.09.08)
http://www.lemonde.fr/cgi-bin/ACHATS/acheter.cgi?offre=ARCHIVES&type_item=ART_ARCH_30J&objet_id=1167232

(« Nouage de Tchernobyl : non-lieu général », 2011.09.08)
http://www.lemonde.fr/web/recherche_breve/1,13-0,37-1167198,0.html

(Le Monde.fr & AFP « Tchernobyl: Joly dénonce un Etat “au-dessus des lois », 2011.09.07 )
http://www.lemonde.fr/planete/article/2011/09/07/tchernobyl-joly-denonce-un-etat-au-dessus-des-lois_1569052_3244.html

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