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2012年3月18日 (日)

「僕たちは、そんなに騙しやすい国民でしょうか。」パリ・ブックフェアー特別招待作家・大江健三郎へのインタビュー(2)/ルモンド紙(3月16日)

(1)からの続きです。

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● 日本人は世界で初めて被ばくを経験した国民です。それなのに、なぜこんなにたやすく原子力エネルギーが安全だと言う言葉を信じたのでしょうか。

広島と長崎に原爆が落とされた時、僕は10歳でした。終戦の後、安心した気持になったのを覚えています。戦争が終わったからこれで学校に行ける、と。でも年齢を重ねる過程で私は、日本が戦争を放棄する憲法を持っているにもかかわらず、沖縄をアメリカに渡してしまったことに気づきました。こうして(米軍の)核兵器を沖縄に設置し、「原子力の平和利用」に向け突き進んで行ったのです。私は当時、こうした流れを批判すべく、『広島ノート』と『沖縄ノート』を書きました。1947年にできた憲法のもう一つの重要な柱である「民主主義」は、福島での大惨事の発生によって明らかに揺らぎました。私は、市民社会が目を覚まして代替エネルギーの開発を求め、地震学者たちの警告に耳を傾けるよう求めることを望んでいます。

福島で事故が起きて以来、何事も良心に照らして考えなければならなくなりました。原子力エネルギーを単なる経済生産性の観点からのみ評価することはできなくなったのです。原爆による被ばく者たち自身が、この原爆投下を道徳的な観点から批判し、もう二度と誰も同じ苦しみを味わうことが無いように、と声をあげて来ました。政治家たちは彼等の声を無視したのです。裏切りは、1956年に「平和のための」原子力利用についての法律が成立したときに遡ります。あの時、私たちは後に福島原発事故の元になる果実を木の枝からもぎとって自分のものにしたのです。


● ヒューマニズムが破壊されてゆく中で、文学はどのような役割を果たすのでしょうか。

私が(『群像』に執筆中の)『晩年のスタイル』の中でずっと心に留めているミラン・クンデラの言葉にこんなものがあります。

「小説家というものは皆、自分から行動を始める時、一番大切な物以外は全て切り捨てなければなりません。自分自身と自分以外の人に対して、根本的なモラルの重要性を強く説かなければなりません。」

日本人の作家としての私の役割は、原発をなくすためにたたかうことです。日本の市民社会が(原発をなくすという)この「大仕事」を完成することに成功する日、私の仕事にはやっと意味が与えられるのです。これは国民の意志が、おそらく歴史上初めて勝利するということに他なりません。「大惨事」という言葉には、私にとって二つの隠れた意味があります。一つは、今日日本が経験している(原発事故による)大惨事。そしてもう一つは、人生の黄昏時にさしかかった全ての作家が経験する大惨事(注)です。

(注)個人としてやがて来る死を目前にしながら、揺らぐ民主主義という「惨事」の渦中にいる危機感をさしていると解釈できる。

(抜粋、一部編集)

(Philippe Pons, « Kenzaburô ôe, « Sommes-nous un peuple aussi facile à berner ? », Le Monde, 2012.03.17)
http://www.lemonde.fr/livres/article/2012/03/15/kenzaburo-oe-sommes-nous-un-peuple-aussi-facile-a-berner_1669357_3260.html

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コメント

記事ありがとうございます。

かまど猫さん

メッセージをありがとうございました。こちらこそ、読んでくださってありがとうございます。
引き続きどうぞよろしくお願い致します。

よみながら涙が出ました。過去のつらい教訓を現在や未来に生かせていないことを実感するのは、つらくせつなくやるせない。確かに国民として騙されてきた。しかし、敗戦後の日本しか知らない私たちには見えようがなかったのだろうか。いや、うすうす感づいていたのではなかったか。
記事を翻訳していただき、ありがとうございます。胸の奥にぎゅっと響きました。

はちきん猿さん

メッセージをありがとうございました。
大江健三郎さん自身の言葉とともに、インタビューを行ったフィリップ・ポンス記者の「言葉を引き出す力」が表れている記事だと思います。福島から被災の状況と自身の気持ちを詩で発信し続けた和合さんを含め、これらの作家を招いて日本の声に耳を傾ける機会を作ってくれたブック・フェアーの人たちに対しても大変ありがたく感じています。引き続きどうぞよろしくお願い致します。

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