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2012年7月 4日 (水)

王と原発/ルモンド紙(7月1日)

福島原発事故の発生からちょうど1年が過ぎた今年の3月11日、福島県選出の国会議員である玄葉外務大臣は、中東の国ヨルダンに降り立ちました。「アラブの春」の流れの中で王国から議会制民主主義への移行を望む声が高まるヨルダン。玄葉大臣を迎えるはずだった外務大臣は突如国王に罷免され、首都アンマンは混乱に包まれていました。

日本が原発の売り込みをはかるこの国では、下院議員の8割が原子力に反対していると言われています。

<参考>
「ヨルダン国会議員に聞く 難問山積『原発いらぬ』 下院議員は8割が反対」東京新聞(1月14日)/Various Topicsより
http://afternoon-tea-club.blog.ocn.ne.jp/blog/2012/01/post_a95b.html

「ヨルダン議会、原発事業一時停止を議決 安全性など懸念」朝日新聞 5月31日
http://www.asahi.com/international/update/0531/TKY201205310119.html 

揺れる砂漠の国での議論の一端を御紹介します。

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●王の願い、そして大地の揺れ

4月の末、ヨルダン・ハシェミット王国(以下、ヨルダン、注1)の首都アンマンで、ヨルダン原子力委員会のハレド・トウカン委員長は勝ち誇った風に私たちの目の前に「ヨルダンの地震地図」を広げた。カラフルな王国の地図。ヨルダンの国土に沿って伸びるシリア・アフリカ断層から伸びた部分が赤く塗られている。それは、全ての危険が潜む地域だ。そこからずっと東に行ったところ、茶色と緑の部分の間に、「ゾーン2A」と書かれ黄色に塗られた部分がある。トゥカン委員長は、そこがまさに将来新しい原発が建設される場所だ、と説明した。

「リフト地域の東に120キロ行ったところになります。つまり、地震が起きる危険が非常に少ない地域だということです。」

委員長はこう言い添えた。

それから14日後の5月11日午後9時50分、大地は揺れに見舞われた。マグニチュード5.5の揺れは確かに「中程度の揺れ」だったが、イスラエルの首都エルサレムからヨルダンの首都アンマンに至る地域の人々全てが揺れを体感したのである。

「何て事はありません。」

ハレド・トウカン委員長は動じない。そしてヨルダンの環境保護主義者たちが

「科学技術が高度に発達した日本ですらひどくやられたのです。ヨルダンのような田舎の国が、地震で原発事故が起きたりしたらそれに立ち向かえるのでしょうか?」

という風にヨルダンとフクシマと並べて比較するのに反論する。

「『自称専門家』による初歩的な批判だ!」

そしてこう続ける。

「日本の原発は地震には完璧に対応しました。問題は津波です。それで、ここでは津波なんて(ありませんから)。」

このように、トゥカン委員長はアブダラ二世国王の意志を忠実に通訳してみせる。国王閣下は自分の原発が欲しいのだ。たとえ隣国のイスラエルや米国が原発の建設をやめさせたがっていると思ってはいても。両国ともそんな「邪悪な意図」を持っていることは否定しているが、真実はいつも灰色でどっちつかずだ。


●電力への渇望

ヨルダンは石油以外の電力源を必要としているだろうか。これについては疑い無い。国土の92%が砂漠で世界で4番目に水源が貧しいこの国では、(海水から飲料水を作るための淡水化に必要な電力も含めて)電力の96%が輸入に頼っており、そのうちの80%は隣国のエジプトからガスの形で輸入されている。最終的には、「輸入されていた」と言うべきかもしれないが。。 昨年の2月以来、ヨルダンとイスラエルにガスを供給するガス田は遊牧民のベドウィン達によって14回も止められた。新しいエジプト大統領はイスラエルにガスを送るのをやめるかもしれない。そしてエジプトの政権についたムスリム同胞団を排除しているヨルダン王家は有利な立場には無い。

2011年、ヨルダン政府の電力料金は45億ドル(約4500億円)にのぼった。生活費の上昇はこの一年ヨルダンで起きている社会や政治面での衝突に油を注ぐことになる。手始めに2020年頃までに1000メガワットの電力を発電できれば、国内で必要とされる電力の30%をまかなうことができる。良いことだが、これは高くつく。50〜70億ドル(約4000億〜5600億円、現在レート)もかかるのだ。


●反対の声

原子力委員会は新しい原発の立地を紅海の脇にあるアカバの側に移した後、シリアとの国境からそう遠くないマフラク(注2、首都アンマンより80キロ地点)に移した。2013年の初めには、フランスのアレバ社と日本の三菱社の合弁会社がこの原発建設を落札したのか、それともロシアのアトムストロイエクスポート社が落札したのかを我々は知ることになるだろう。それまでに、国王とトウカン原子力委員会委員長は(原発の危険性を指摘する)「フクシマ症候群」に勝たねばならない。

環境保護主義者たちは、原発が環境や健康に及ぼす危険を強調している。100億ドル(約8000億円、現在レート)以上にもなると思われるとんでもない費用についても警笛を鳴らしている。そして、こうした議論は支持を得ている。「イスラム行動戦線」(ムスリム同胞団の政治支部)の政策チーフをつとめるザキ・バニ・エルシェッドは、党の(原子力の安全に関する)評価チームが

「原子力の害はそのメリットを上回る」

と結論した、と述べる。

しかしトウカン委員長はこうした注意深い態度を排除する。

「環境保護主義者たちの心配事は、空想のプロパガンダだ。そしてイスラム主義者たちは問題を理解していない。」

イスラエルは実際のところ、ヨルダンの原子力発電に反対していない。むしろ、発電がなされれば電気を買ってもよいとすら言っている。

「でも最終的には、一番シンプルなのはこういうことじゃないでしょうか?」

イスラエルの諜報・原子力大臣であるダン・メリドールは親切そうに提案する。

「ヨルダンはアラブ首長国連邦が米国との間で結んだ合意のモデルに従うのです。つまり、使用済み核燃料の再処理をやめることに決めるのです。」

使用済み核燃料による核兵器開発の危険性を懸念する隣人もまた、王の決定に否定できない影響を与えている。

(抜粋、一部編集)

(注1)ヨルダン・ハシェミット王国は中東に位置する人口630万人のイスラム教国(本文では「ヨルダン王国」と省略)。国民一人当たりの国内総生産は5300ドル(約5万3千円)の中進国。リン鉱石、天然ガス、ウランなどを産出する。パレスチナ暫定自治区と国境を接しており、世襲制の国王が統治する立憲君主制国家。しかし「アラブの春」以来、議院内閣制への移行を求める声が高まってきている。首都はアンマン。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%B3 

(注2)マフラク市は、首都アンマンから北に80キロの距離に位置する人口5万6千人の町。中東戦争の際、イスラエルの政治捕虜が収監されていたことで知られる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mafraq

(« Le roi, le nucléaire, les Frères et les voisins... », Le Monde, 2012.07.01)

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コメント

フランスねこさんへ
原発と言っても裏を返せば=核兵器製造と思います。
何故 そうまでして核拡散に躍起になるのでしょうか……
核兵器を使うか使わないかはしょせん人間の判断ですから 非常に危険ではないでしょうかね。
地球上を見て国のトップリーダーは総てまともな人間とは言えませんからね。
日本政府を見てもいつ気が狂った行動を取るかも知れないだけに危惧しております。
一旦 暴走すれば人類の戒めのSF映画[猿の惑星]のように地球上から人類が消えてしまうのではと……
ふと 脳裏を過りました。
福島原発4号機の燃料プール処理を間違えれば北半球に甚大な被害を及ぼす事の認識と更に大飯原発ならびに美浜原発、浜岡原発、青森原発の下に活断層が指摘されるなかで、日本政府は甘く見ているのか それとも考える能力が欠落しているのか.国民として不安な日々を過ごしています。
海洋汚染の甚大さも政府は未だに避けていますしね。
私の居住地でも最近、新聞に載っている 空間の放射能線量が過去の最高平均値を越えそうな値になってきており.そのうち数十年すれば日本列島が放射能汚染列島になるのではと心配しています。

奥田さん

コメントをありがとうございます。
「平和利用」という言葉の矛盾は、昨年以来私たちが気づいたことの一つだと思います。

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