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2012年8月13日 (月)

パリ‐広島 仏記者がペダルで結ぶ「傷跡の記憶」1万6千キロの旅/ルモンド紙(8月11日)

彼は旅立って行った。
たった一人で、自分の自転車に乗って。忘れられた戦争を訪ねる旅へと。

若い記者は、東へ東へと頑固なまでに国道36号線をたどっていった。そしてボスニア・ヘルツェゴビナのスレブレニツァ(注1)から広島までの距離を、まっすぐに漕いで行った。ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルダビア、ウクライナ、グルジア、アゼルバイジャン、中国の新疆ウイグル自治区、韓国、そして日本。全長1万6千キロにわたる旅をなし終えるには、およそ1年の時間がかかった。

「ばかげた賭けだ」、と人は言うかもしれない。ラファエル・ボグラン記者がこの冒険をやりとげられるかどうかを疑った者もいただろう。しかし記者が持ち帰った写真や映像の数々―ずばぬけて質の高い画像の数々―がその結果を示している。

人はどのように喪失を受け入れるのだろうか。
どのように別離や故郷からの追放を受け入れるのか。
どのように暮らしを建て直すに至るのか。

30歳の報道記者は、これらの問いへの答えを見つけるために旅立ったのだった。その成果は、誰でも見ることができるようにインターネット上に掲載されている。


■ラファエル・ボグラン記者による旅の紹介(短編、動画)
ル・ポワン誌「自転車で訪ねる戦争の語り部たち」より(仏語ですが、原爆を含めた様々な形での暴力や家族の死に傷ついた各地の人びとの声に耳を傾けながら、自転車で走り続けるボグラン記者の姿が印象的です。御興味ある方は是非御覧下さい。)
http://www.lepoint.fr/monde/paroles-de-conflits-la-guerre-a-velo-07-06-2012-1470533_24.php

■本編「争いの言葉」国際フランス・ラジオ放送より(仏語です。)
http://telechargement.rfi.fr.edgesuite.net/WebDocu/paroles_de_conflits/index.html


●広島へ

広島はボグラン記者にとって象徴的な場所となった。1945年8月6日、命は途絶えたのだ。

「あまりに多くの死体を目の前にすると、人は何も感じなくなってしまうのです。そういう意味で、人間であることは悲しいことです。」

原爆投下から生き残った池田誠子はこのように過去に思いをはせる。被ばく者の息子は、子どもを持っても良いのだろうか、と自問した。

「この地面の下には、原爆犠牲者の心だけがあるのです。5千度の炎に包まれた町は、人の体を塵に変えました。広島の人間は、自分が先祖の体の上を歩いていることを、知らないでいるのです。」

映画作家の田辺雅章(注2)は嘆く。

ラファエル・ボグランが集めた証言は苦しみを語るが、「生」を語ってもいる。私たちは彼らの声に耳を傾け、彼らに質問をする者記者の声にも耳を傾ける。こんな風に、この作品は人間であることについて教えてくれている。

(抜粋、一部編集)


(注1)1995年、ボスニア・ヘルツェゴビナのスレブレニツァでは、8千人のボシュニャク人が当時の政府による民族浄化で虐殺の犠牲となった。

スレブレニツァの虐殺
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%8B%E3%83%84%E3%82%A1%E3%81%AE%E8%99%90%E6%AE%BA 

(注2)田辺雅章氏は広島出身の映画会社社長。原爆投下の当時実家は原爆ドームの隣にあり、両親と弟を失った。被ばく者の証言テープを起こす取り組みも行なっている。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter/article.php?story=2012022013322854_ja 

田辺さんの著作 『原爆が消した廣島』(文藝春秋、2010年、1890円)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784163732008 

●元の記事 「スレブレニッツァから広島まで: 自転車で訪ねる1万6千キロの記憶」/ルモンド紙(8月11日)
(Florence Beaugé, « De Srebrenica à Hiroshima 16 000 km de vélo-mémoire », Le Monde, 2012.08.11)

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