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2014年10月26日 (日)

政治と金に揺れるWHO:エボラ熱はなぜ暴走したのか/BBC(10月22日)

福島原発事故が起きた2011年、IAEAと日本政府への配慮から重度汚染地域における被ばくや汚染食品の危険性を早期に否定したWHOは、西アフリカで発生したエボラ熱への対応でも、現地政府が主張する「風評被害」への政治的配慮を優先し、アフリカから欧州・米国をまたぐ前代未聞の感染被害を招きました。今回は原発事故についての記事ではありませんが、福島原発事故への対応との類似点を検証する観点からWHOという国際機関が持つ構造的問題をBBCの記事を通じて御紹介します。

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エボラ熱による感染者は現在、1万人以上、死者は約5千人。1970年代以降に起きた過去の総被害者数を上回りとどまるところを知らない。アフリカから欧州・米国をまたぐ前代未聞の大感染はなぜ起きているのか。

NGO「国境無き医師団」は今年3月、西アフリカ地域におけるこの死に至る病の急激な広がりを把握し、WHOに緊急対策を求めた。しかしWHOは「特定地域に散発的に発生している限定的な感染」と公式に発表、実質的な対策を行わなかった。「国境無き医師団」はその後ジュネーブのWHO本部に出向いて状況の緊急性を繰り返し訴えたが結果は同じだった。

「現地政府はエボラ熱の被害を実際より小さく見せようとしていました。WHOもこれらの政府への政治的配慮から被害を小さく見せようとしたのです。」

WHOが緊急事態宣言を出したのは約5ヶ月後の8月だった。それも、6月に世界300以上の感染症対策専門組織が作る技術委員会の専門家らから強い抗議を受けた末のことだった。WHOがより素早い対応を取っていれば、今の事態は防げたと見られている。

実はWHOは「国境無き医師団」からの警告を受けた後、西アフリカの現地に専門家を派遣、現地報告と対策の提言を受けていた。提言の内容は、エボラ熱にかかったと見られる患者への治療として食塩とブドウ糖を混ぜた経口補水液を率先して与えること、貧しい家庭に配慮し消毒薬だけではなくバケツを合わせて配布すること、エボラ熱の発熱を急激に悪化させる作用を持つ特定の解熱剤を使用しないよう周知することなど、すぐに実行に移せる簡易な内容でありながら詳細に渡っていた。しかし提言が実行されることは無かった。WHOの幹部は政治的に任命されている。WHOアフリカ地域事務所は「風評」を恐れ感染被害の現状を小さく見せようとする西アフリカ諸国政府への配慮と技術力の欠如から動くことができなかった。そしてWHO本部はそんなアフリカ事務所を動かすことができなかった。

もう一つ大きな問題がある。エボラ熱対策を所管するWHOの広域流行性感染症対策局は最近250億円規模の予算カットに遭い、職員の流出を招いていた。関係者の証言によれば、とてもエボラ熱への対策を十分に行える体制では無い。近年、各国政府によるWHOへの拠出金は低下の一途にあり、ビルゲイツ財団などの大企業主からの寄付に頼らざるを得ない状況が生じている(注:ビル・ゲイツ氏は中国での原発建設にも投資を行っている)。そして利益を産むワクチンや新薬の開発プロジェクトに比べ、貧しい国々の人々のみが苦しむ疾病への対策費もまた削減の対象になっている。WHOは再び世界を「全ての人における健康への権利の達成」とは別の方向に導いた。「国境無き医師団」の専門家らによれば、エボラ出血熱の沈静化は早くとも2015年末、場合によっては2016年の初頭まで見込めないと見られている。

(抜粋、一部編集及び説明を追記)

●元の記事:「エボラ出血熱はなぜ暴走したのか」/BBC(10月22日)
BBC Documentary « Ebola : What went Wrong », BBC, 2014.10.22
http://www.bbc.co.uk/programmes/p028t0q9


【訂正と追記のお知らせ】 10月27日、翻訳の一部に誤りがありましたので以下の訂正を行いました。大変申し訳ありませんでした。また、より分かりやすい記載となるよう、元の記事より一部の情報を追加しました。御確認ください。

「毎年6月に開かれるWHO総会で世界各国の専門家から強い抗議」→「6月に世界300以上の感染症対策専門組織が作る技術委員会の専門家らから強い抗議」

「提言の内容は、貧しい家庭に配慮した薬剤と必要器具の迅速な配布やエボラ熱に類似するマラリア等の症状を区別するための薬剤投与の際の留意事項など、詳細に渡っていた。」→「提言の内容は、エボラ熱にかかったと見られる患者への治療として食塩とブドウ糖を混ぜた経口補水液を率先して与えること、貧しい家庭に配慮し消毒薬だけではなくバケツを合わせて配布すること、エボラ熱の発熱を急激に悪化させる作用を持つ特定の解熱剤を使用しないよう周知することなど、すぐに実行に移せる簡易な内容でありながら詳細に渡っていた。」

「200億円規模の予算カット」→「250億円規模の予算カット」
「感染症対策局」→「広域流行性感染症対策局」

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