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経済への影響

2011年7月29日 (金)

「福島原発の大惨事を受け、世界の原子力市場は衰退へ〜仏アレバ社、事故発生以来214億円分の商談が破棄に」ルモンド紙(7月28日)

世界の原子力業界を率いるフランスのアレバ社は7月28日、原子力の国際市場の成長は日本で起きた福島原発事故の影響を被り鈍化する、との見通しを発表。合わせて、福島原発事故以来、1.9億ユーロ(約214億円)分の顧客契約が破棄されたことを認めた。

新たに社長に就任したアレバ社のルーク・ウルスル氏はこの日、福島原発事故の後における国際原子力市場の成長に関するシナリオを発表。2009年には「2030年までに659ギガワット分の発電施設が設置される」との予想を行っていたのに対し、今回は「2030年までに584ギガワットを達成し年2%の成長を達成」と事実上の下方修正を行った。

株式市場で株の公開を行っているもののフランス政府の指導下に置かれているアレバ社は、7月27日に福島原発事故発生後初めての四半期売り上げを発表、既に1.9億ユーロ(約214億円)分の契約が破棄となったことを公式に認めた。アレバ・グループへの原子力発電施設の注文は、過去6ヶ月で10億ユーロ(1,130億円)低下して430億ユーロとなった。

(Le Monde & AFP, « Ralentissement du marché mondial du nucléaire » Le Monde, 2011.07.28)
http://www.lemonde.fr/asie-pacifique/article/2011/07/28/l-alerte-sanitaire-sur-les-b-ufs-japonais-s-etend-a-une-deuxieme-region_1553621_3216.html

2011年6月29日 (水)

IAEA「事実確認のための専門家調査団」による福島原発事故についての報告書(6月17日)

国際原子力機関(IAEA)は6月17日、5月24日から6月1日にかけて福島原発事故を検証するために来日した「事実確認のための専門家調査団」による調査結果を、報告書(英文)の形で加盟国に配布した。

同報告書は福島原発における地震・津波への対策が不十分であったことを指摘しつつも、これらの災害および福島原発事故が「想定外」であったことを強調、今後IAEAを中心とした国際的な安全対策の枠組み強化の必要性を述べている。

以下、報告書の一部を紹介します。今回の原発事故が原発作業員や事故現場周辺の住民の健康に与える被害を小さく見積もる一方で、原発が停止したことによる経済への影響を強調、原子力発電の重要性を暗示する内容にも読めます。

●原発作業員の被曝について(40ページ~41ページ)
「100~250ミリシーベルトという被曝量は、浴びることによって(。。。)後に何らかの健康影響を及ぼす可能性が少し高まるものの、直ちには身体的な影響を及ぼさない。」

●周辺住民の健康と経済への影響について(43ページ)

「放射能による健康被害については未だほとんど見られない一方で、何万人もの人々が原子力発電所の周囲から退避したこと、食品や飲料水について規制がもうけられたこと、海が汚染されたことにより、事故が社会や環境に与える影響は甚大かつ広い地域にわたっている。加えて日本国内外では事故で放出された放射能の健康その他への影響について不安が高まっている。最後に、原発の停止は経済に大きな影響を与えている。」

IAEAによる報告書(全文)
http://www-pub.iaea.org/MTCD/Meetings/PDFplus/2011/cn200/documentation/cn200_Final-Fukushima-Mission_Report.pdf 

IAEAによる報告書(要約)
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/pdf/rapport_aiea_bilan.pdf

<参考>関連報道(朝日新聞)
http://www.asahi.com/international/update/0618/TKY201106180184.html

2011年6月18日 (土)

「フランスが語る『原子力の真実』」(後編) 「原子力発電は『安い』か?フランス原子力業界とフランス国家が直面する財政破綻の危機」ル・ヌーベル・オプセルヴァテール(6月2日)

ドイツとスイスに続くイタリアの「脱原子力」方針決定、アレバ社の社長交代。
6月10日に「フランスが語る『原子力の真実』」の前編、「フクシマ」後に再燃する「国策」原子力への恐怖」を掲載してから既にいろいろなことが起きました。少し遅くなりましたが、後編をお送りします。(少し長めです。ゆっくりお読みください。)

(前編を読んでいない方はこちらからどうぞ。この記事の元になる本を書いた著者の紹介などを含め掲載しています。)
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/62-dba6.html

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「フランスが語る『原子力の真実』」(後編)

1.フランス電気公社(EDF)の経営破綻:利益1兆円、借金4兆円

フランス電気公社(EDF)は野心的な事業に資金をつぎ込んだために経営困難に陥り、深刻な事態に直面している。

2010年1月1日、同社の粗利益(税金等を差し引く前の利益額)175億ユーロ(約2兆円)に対し、負債は425億ユーロ(約5兆円)、粗利益の2.4倍にまで膨らんだ。イギリスの配電線網事業(約67億ユーロ、約7700億円)を手放したにも関わらず借金は大きく減らず、2010年末の時点でもまだ344億ユーロ(約4兆円)の負債が残っている。


●2010年末時点での 粗利益:約1.1兆円 vs 負債:約4兆円


更に、フランス電気公社グループ全体の利益は2009年の39億ユーロ(約4.5兆円)から2010年の10億ユーロ(約1.1兆円)にまで落ち込み、1年で73.9%減少した。背景には、9.1億ユーロを投資した米国コンステラション・エネルギー社との関係解消がある。又、2010年末にドイツの電力会社EnBW社に保有していた同社の45%にのぼる株を買い戻されたことでも辛酸を舐めた。

イタリアでは更に困難な事態に陥った。フランス電気公社はイタリアで現地の子会社を通じ4基の原子炉建設を計画したが、政府による1年間の原子力利用停止の決定により身動きが取れなくなった(そして、この記事が書かれた後、同国での原子力利用の廃止決定により、この計画は断念に追い込まれている)。
これはまだ「フクシマ」が勃発する前の話である。

フランス電気公社へのフィッチ社による格付けは、同社が抱える多額の負債によりA+からAA-に下降した。株式市場は同社の財政状況が今後改善するとは見ていない。2011年1月1日から4月8日までの間に同社の株価は10%下落、過去3年間では53%の下落を記録している。

2.原子力発電の真実のコスト:原子力による電気料金、40%値上げ

フランス電気公社が2011年2月に発表した電気の売却価格は、メガワット(MWh)1時間当たり42ユーロ(約4800円)である。原子力発電が自然エネルギーを初めとする他の発電方法よりコストが低いことを演出するため、原子力発電にかかるコストはこの数年間、徹底して実際よりも低く見積もられて来た。

しかしこのコストの過少評価は今日、フランス電気公社の経営にはね返る結果となっている。したがって他の電気会社がフランス電気公社から電気を買い取る価格を設定するにあたり、同社は原子力発電所の更新料を上乗せし、電気価格は MWh当たり42 ユーロ(約4800円)から55ユーロ(約6300円)以上にまで上昇することとなった。

福島での原発事故の後、全ての原子力発電コストは従来より更に高くなっており(注)、実際には55ユーロ(約6300円)ではなく60ユーロ(約6900円)に近い数字になることが見込まれている。


●これまでの電気料金:4800円/MW→原発関連コストを含めた今後の「本当の」電気料金:6900円/MWh(40%以上の値上げに相等)

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2011年5月 1日 (日)

「復興優先」の言葉で原発問題は消えない―福島が示した「非民主主義国家、日本」ル・モンド紙(4月28日)

ル・モンド紙は428日、群馬大学教授でフランス近現代史の教鞭をとる松沼美穂助教授の寄稿文を掲載した。

松沼助教授はその中で、政府や東電を批判する日本のマスコミが、福島原発事故の前夜まで多額の広告費と引き換えに原子力発電所の安全性を宣伝していたことを批判。財界も政府も「経済の復興を」「仕事に戻ろう」と経済のみ優先し、現在50以上ある稼働中の原発を今後どうするのかという問題に向き合っていないと指摘している。また、今後も新たな地震の発生が予想されること、政府の原子力関係者が技術面でも信用の面でも十分でないことから、福島で起きたのと同様の事故が繰り返される可能性があると述べている。

フランスでは東北大震災以来、泣きもせず愚痴も言わずに坦々と仕事に戻って行く日本人の「品位」を評価する動きが広がっている。しかしこの「品位」は、福島での原発事故を「自然災害だから」受け入れなければ仕方がない、という態度に基づく「品位」だ。また、どこまでも経済成長のみを追求する日本のシステムは、(福島周辺の住民や原発作業員を初めとする)人々の権利を尊重せず、(福島原発事故の責任を取らないことによって)世界中の人々をも馬鹿にしている。(日本の)権力は、無能で無責任な嘘つきたちの手の中にある。これが、65年間続いてきた「日本の民主主義」の結果である。

日本は自ら変わることができない。福島原発の事故以来、海外機関が発表した情報と日本発の情報の食い違いの度合いには、大きな衝撃を覚えるばかりだ。今回福島での事故との関連で明るみになった多くの人為的なミスは、許すべからざるものである。フランスを初めとする各国政府の政治家や世界の財界関係者は、原子力業界と強く結び付いている。だからこれらの人々が原発を支持し、日本人の「品位」に感嘆するのも無理はない。世界中の市民は、この恥ずべき事故から教訓を引き出さねばならない。

http://www.lemonde.fr/idees/article/2011/04/27/attention-un-deuxieme-fukushima-n-est-pas-exclu_1513460_3232.html

 

Miho Matsunuma, « Attention, un deuxième Fukushima n’est pas exclu », Le Monde, 2011.04.28

2011年4月22日 (金)

「『長期汚染』の現実否定、『普通の生活』回帰と内部被曝。汚染を生きる私達の心理と行動を予測する」ル・モンド紙(4月19日)

ル・モンド紙は419日、チェルノブイリ原発事故の後にウクライナやベラルーシの汚染地域で長く調査を行ってきた社会学者フレデリック・ルマルシャン助教授(カン大学)の寄稿文を掲載し、福島におけるチェルノブイリ体験の再来を指摘。チェルノブイリ事故の後に汚染地域に住み続けざるを得なかった住民達が取った「現実逃避」の行動と心理、そしてその結果起きた内部被曝の増長に言及しながら、福島原発事故の後、深刻な放射能汚染に直面する日本人にも同じ問題が起きることを予測している。

ルマルシャン助教授の専門分野は「原子力やバイオテクノロジー産業が環境や健康もたらす危険」。主要著書に「チェルノブイリの沈黙」(2006年)などがある。 (以下、ポイントのみ要約)

確かに、チェルノブイリの原発事故と福島原発事故の間には幾つかの相違点がある。福島では今も800万人もの人が、今後何百年にもわたって汚染され続けるであろう土地に住み続けている。しかし福島で繰り広げられているのは、新しい歴史などではない。チェルノブイリの歴史が繰り返されているだけだ。

チェルノブイリ事故からの生存者が私に教えてくれたことが二つあった。一つ目は、原子力による大規模な汚染が一度起きた後は、「普通の状態に戻る」ということは決してありえない、ということだ。

どこにも逃げられないとしたら、避難する場所が他にないとしたら、どうすればいいのか?

チェルノブイリから学んだ二つ目の教訓は、日本国内で将来汚染され続けるであろう地域に居住する住民達が学ばなければならない点だ。

今後長期にわたって汚染が続く地域に生活し続けるしかない人が、ある程度落ち着いた気持ちで将来に立ち向かうためには、現実を否定するしかない。ベラルーシの物理学者ワシリ・ネステレンコ氏は、チェルノブイリ事故の後10年の間、本来であれば時間の経過とともに自然に低下するはずの汚染地域の住民の被曝量が、増加してゆくのを目にした。

住民達は「突発的な事故」(として原発事故をとらえる)段階でのストレスを何とか乗り越えた後、もう普通の生活に戻れるだろうという希望を抱く。しかしこれに反して、汚染が長期間続くという受け入れることが非常に難しい現実に直面させられる。そして、(汚染の現実をわざと無視することによって)事故が起こる前の生活習慣を再び取り戻してしまう。

これは、福島でも同じことが起きるだろうと思われる。

チェルノブイリと福島での事故はかつて人間が経験したことのない新しい形の災害となった。人間の生物学的、社会的、精神的生活だけでなく、まだ生まれて来ていない未来の世代、将来の存在までが、「核エネルギー」によって既に征服されてしまっている。


チェルノブイリと福島では、農地、水資源、そしてもっと悪いことには、人々が密集する都市部までもが汚染されてしまった。こうした地域は今後あらゆる形での利用が禁止され、完全に失われた土地となる。このような足かせは、社会主義経済にとっても自由主義社会にとっても(経済的な観点からは)到底受け入れがたいものだ。こうした理由から、福島県の汚染地域における長期の退避は行われないことになると予想している。

(Frédérick Lemarchand, « Fukushima, l’autre Tchernobyl », Le Monde, 2011.04.19)

日本語の要約(フランス・メディアネットワーク)

http://www.francemedianews.com/article-72051157.html 

2011年4月 3日 (日)

「汚染された野菜・果物を売り続ける被災地の農民」ル・モンド紙(4月1日)

3月30日、栃木県庁で被災した農牧畜業関係者を支援するための野菜と果物の即売会が行われ、盛況を収めた。栃木では3月23日に基準の48倍もの放射能汚染が見つかりホウレンソウやブロッコリーなどの野菜が出荷禁止になっている。

政府スポークスマンである枝野官房長官は、「野菜については短期間の消費であればすぐには健康への被害はない」と発言しているが、その後に「でも、残念ながらこの事態は長く続きそうだ」と述べている。野菜の安全性への心配から、生鮮食品の価格は下がるばかりだ。

首相府が管轄する食品安全委員会は、現在年間5ミリシーベルトに定められている放射性物質の上限濃度が「厳しすぎる」として、その緩和を検討している。1984年、国際放射線防護委員会は上限を5ミリシーベルトに定め、原発事故の次の年については50ミリシーベルトを上限としていた。1992にはこれを10ミリシーベルトにまで引き上げている。これは水1リットル当たりに含まれるセシウムの上限400ベクレル、食品については1キロ当たりに含まれるセシウムの上限1000ベクレルに相当し、日本がこれを採用する可能性がある。

多くの関係者は、今回の基準緩和を地元の国会議員に支えられた農業関係者への要望にこたえる措置であると見ている。しかし、消費者の食の安全を十分確保することが必要である。

(Philippe Mesmer, Le Monde, 2011.04.01)